「何かを学ぶというのは、考えるということです」
■感想文『東大教授が教える独学勉強法』/著者・柳川範之さん
本のタイトルの通り、独学で勉強する、勉強のやり方についてが、書かれています。
著者は東大経済学部の教授です。親の仕事の都合で、ブラジルやシンガポールへ行くことになり、中学卒業後は高校へほとんど通わず、自分で参考書を選び、独学で勉強してきたそうです。この体験がふんだんに書き込まれています。大学教授となった今、自分のゼミで学生へ指導している勉強法についても、少し書かれています。
本は約170ページ、5つの章に分かれています。
1つの章が7〜17項目くらいで、1項目2〜4ページ前後です。速い人なら1時間で読めてしまうかも。受験の必勝法や、学生が勉強するためのコツが書かれているわけではありません。あくまで「何かを学ぶというのは、考えるということです」という概念から、独学という勉強法について書かれています。逆かな? 何かを深く考えられる人間になるための、勉強法と言い換えられるかもしれません。
この本で言うところの勉強とは、とても広い範囲です。学生の勉強も社会人の勉強も資格試験のための勉強も。しかし繰り返しますが、いずれも「何かを学ぶというのは、考えるということです」という概念が、根底にあります。なので、実際にこの本を読めば独学で勉強ができるようになるかという問いに対しては非常に懐疑的。
自分ひとりで(学校や何かの資格の)勉強を進めること”はできても、著者の言うところの「正解のない問題にぶつかったときに、自分なりに答えを出そうとして考えていくこと」ができるようになるかは、人を選ぶような気がするからです。
社会問題や政治などの正解のない問題に「難しいですね」とすぐに答えてしまう人には、この本はあまり向かないような気がしました。深く考える習慣がない人にとっては、そもそも期待はずれになると思います。
逆に、物事を深く考えられる人にとっては、場合によってはですが、背中を押されているような安心感が得られるかもしれません。
ああ、こういう本の読み方って身になるんだ。嬉しいな
とかです。個人的には、本の読み方で、いくつか面白いのがあったので、
ランダムですが最後にいくつか抜粋します。
「まずはとっかかりの入門書を3冊買う」
「買った本のうち3割使えればいいかという感覚」
ということなので、3冊のうち1冊の当たりがあるという感覚で読書しているのは面白いなあと思いました。ほかにも、
「本を選ぶときに私が重視するのは、当たり前のことですが誰が書いているかです」
「テキストより先に問題集を見るという勉強の仕方をしていました」
では、独学という学び方に先生という存在がいないことで、初めて読む参考書のポイントを理解するための、著者なりのテクニックが書かれていました。
「入門書だからだからと言って、隅から隅まで理解しようと思わないことです」
「1回目に読んだ際に、いきなり線を引かない」
「本は少なくとも2回読む必要があります」
「勉強や学びのプロセスとは、実は、いったん押し返してみることです」
↑このあたりも面白かったです。読書の箸休めという感じですかね。個人的に目新しさに若干かけたことと、読書好きの人でもさらに読者を選ぶような気はしました。しかし平易な言葉で説明されているので、文字にルビはないですが中学生でも読めるのでは、と感じたり。高校生や大学生にも参考になる点はとても多いと思ったりしました。読書習慣のない大人にも、おすすめはできます。