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知的な遅れってなあに?
特別支援学級を担当していると、様々な資料や書類に「知的障がい・知的な遅れ・精神遅滞」と、なんだか色々な表現があって『ちがいはなんだ?』になりました。
自分の頭の整理をするためにも、このテーマで書いていきます。
①知的障がい
WISCや田中ビネー等の知能検査の結果や生活全般での困難さに基づき、医師が診断をする障がい名です。
②知的な遅れ
同じくWISCや田中ビネー等の知能検査の結果や生活全般での困難さに基づき、発達相談支援センター等の心理士による見立てです。
③精神遅滞
知的障がいと同義語です。知的障がいは福祉用語であるのに対し、精神遅滞は医学用語です。個別の支援計画等には『精神遅滞11歳程度』など、記載がある場合も。
知的な遅れってなに?
いわゆるIQは、前述した知能検査を用いて算出されます。
一般的に70以下は知的な遅れを示唆します。ただし、IQだけではなく、身辺の自立や言動の特性も加味しながら、総合的に判定されます。
知的な発達は、言語学習や感情のコントロール、適応力等、様々な力の基盤といえます。故に『知的な発達に遅れ=勉強ができない』という単純な構図ではなく、生活の様々な場面で困難さが生じます。
勤務校の保護者の話によると、2歳児または3歳児検診の際に、保健師から発達の遅れを指摘され、発達相談支援センターを紹介されることが多いようです。また、指定難病等の場合は、生後まもなく医師から発達の遅れを伴う可能性を示唆されることもあります。
福祉や医療とも関係深い特別支援教育
ぜひ知っておきたい用語とその定義についてお話しましたが、IQや診断名にとらわれず、目の前の子どもをよく観察し、実態を把握することが大切です。
私が担当した生徒で、入学時は着替えに40分かかっている子がいました。先生が手伝えばもっと早く着替えることはできます。しかし、本人の自立を促すため、じっと堪えて見守ることも必要です。今では10分で着替えられるようになりました!
自立は特別支援教育における重要なキーワードの一つです。手を貸すのは一瞬。しかし、発達がゆっくりな子どもも、じっくり時間をかければ、成長します。時として、手を貸すことが成長の妨げになることも。
石の上にも三年。中学校も三年。焦らずとも、のんびりと。独特のゆっくりとした時間の流れも特別支援教育の魅力です。
心配性な私は、生来せっかちな人間でした。しかし、特別支援学級に関わるようになってから、今まで見えていなかった世界に気付くようになりました。特別支援教育をとおして、子どもたちだけではなく、自分自身も成長させてもらっていると感じます。とても素敵で貴重な経験ができ、子どもたちや同僚への感謝の日々です。
- 覚えておきたいポイント -
①知能検査は発達相談支援センターや医療機関で受けることができる。
②障がいの診断は医師にしかできない。
③知的な遅れ・知的障がい・精神遅滞は、IQだけで決まるものではない。
④自立のためには、見守ることも大切。
⑤特別支援教育は楽しい!
どこかの誰かの何かの足しになりますように。