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運命の石

ダブリンの北西30キロにある小高いタラの丘
羊のフンをふまぬよう、そろそろ登って行く
あたりはなだらかな牧草地で
羊の群れが草を食んでいる

アイルランドに渡ったケルト族は
部族ごとに分かれ小国が争っていたが
王のなかの王ともいうべきタラの王をえらび

アイルランド   ケルトの遺構                     1998

その王のもとにゆるやかな連合をつくった

タラの王は
宗教的な役割が色こくシンボル的存在であった

大陸からキリスト教が伝わり全土に広がるにつれ
タラは影をうすめ
10世紀ごろ、タラの王座は消える

が、この丘は
アイリッシュの心のふる里として
今日でも生きつづけている

周囲が一望でき、アイルランドを治める王座に
ふさわしいタラの丘は

古代の遺構を今でもわずかにのこす

丘のいただきに「運命の石」が
ぽつんと直立していた

運命の石                      1988

高さ一メートルほど
王のなかの王の資格ありや否や、石に問う
石が応えると王は戴冠
無反応だと失格となる

この石が陽に映え、力強い
男性のシンボル、と連想してしまった

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