運命の石
ダブリンの北西30キロにある小高いタラの丘
羊のフンをふまぬよう、そろそろ登って行く
あたりはなだらかな牧草地で
羊の群れが草を食んでいる
アイルランドに渡ったケルト族は
部族ごとに分かれ小国が争っていたが
王のなかの王ともいうべきタラの王をえらび
その王のもとにゆるやかな連合をつくった
タラの王は
宗教的な役割が色こくシンボル的存在であった
大陸からキリスト教が伝わり全土に広がるにつれ
タラは影をうすめ
10世紀ごろ、タラの王座は消える
が、この丘は
アイリッシュの心のふる里として
今日でも生きつづけている
周囲が一望でき、アイルランドを治める王座に
ふさわしいタラの丘は
古代の遺構を今でもわずかにのこす
丘のいただきに「運命の石」が
ぽつんと直立していた
高さ一メートルほど
王のなかの王の資格ありや否や、石に問う
石が応えると王は戴冠
無反応だと失格となる
この石が陽に映え、力強い
男性のシンボル、と連想してしまった