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山姥と怪童「掌の童話」ダイジェスト 旅の僧

はじめに
山姥と怪童「掌の童話」より、ダイジェストをお送りします。
金太郎は足柄山で熊に跨り相撲の稽古をし、長じては坂田金時として源頼朝に仕え、大江山の酒呑童子を退治した伝説などで知られています。
坂田金時は岡山県北部の勝央町で没したとされ、毎年十月頃には金太郎に因んだ行事が催されています。


盛りは過ぎたとはいえ、まだ熟れたような暑さが続いていた。

蜩が一日の仕事のおわりを告げるように鳴き始めると酒田の村にほっとするような夕暮れが訪れた。

酒田の荘は南を相模湾、北西を足柄山と箱根連山に抱かれた温暖な気候にめぐまれた土地である。

農作業を終えた村人たちは泥にまみれてはいるが、今年の豊作を信じ、牛や馬を連れて女たちの歌声や子どもたちの囃す声に和みつつ家路についた。

遠くから旅の僧が夕陽に炙られながらとぼとぼと歩いてきた。

頬も身体も痩せこけ、衣は埃にまみれぼろ雑巾のようであった。

その僧は村の子どもを呼び止め、
「ここらあたりに怪童がいるという噂を聞いたが心当たりはないか」と、訊いた。

子どもは、
「怪童はおらぬが、あちらに見える足柄山には山姥と鬼の子が住んでいるぞ」と、吐き捨てるように答え駆けて行った。

破れ笠を傾いで振り仰ぐと山は夕陽に赤々と照らされていた。

僧は、その晩は村の農家の軒先で夜を明かし、翌朝まだ陽が昇りきらないうちに山路を登り始めた。

健脚の僧の足でも、歩いても歩いても緑は尽きない。

ふと疑念が湧いた。

・・・・・・道に迷ったのか、やはり山姥の住む山であるのか・・・・・・

とそのとき、僧は我が目を疑った。

<続く>

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