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(3) 鯛の眼はポーション?(2024.4改)

平壌で開催されていた北朝鮮4カ国会議の外相協議が終わった。概ね合意となり、次回は3月中旬に各国の首長に加えて、オブザーバーとして日本の首相が加わりそれぞれ首脳会談と調印式が行われる。北朝鮮は、日本も加えた4カ国から経済支援を受ける形となる。
北朝鮮内の領土の経済エリアを3分割し、それぞれのエリアでの経済統治を10年の期間限定で行ない、経済の困窮が常態化している北朝鮮の底上げをすることになった様だ。
38度線以北一帯を韓国と米国が請け負い、ウラジオストクに近い日本海側をロシアが担い、日本がロシアの支援を行う。残りの中国国境から平壌に至る黄海側を北朝鮮と中国が共同で担当する事になった。

北朝鮮は少なくとも国が崩壊しない程度の支援は、無条件で得られるようになった。   
中国の中華日報は「富くじに当たったようなものだ」と社説に書いた。
「国民が生きていけるカネがやっと手に入った。北朝鮮が忌み嫌っていた市場経済のお陰というのも、痛烈な皮肉だ」と、今までコントロール出来なかったロケットマンが君臨していた北朝鮮を揶揄した。
「体制を脅かす市場経済などには用はない!」と暗殺されたロケットマンが生前言及していたらしい。

外相会議の状況を見たロシアが韓国と北朝鮮の反対を退けて、ロシアチームに強引に日本をオブザーバーとして引き入れた。
来月、大統領選を控えている韓国与党は「北との早急な関係回復が必要だ」とロケットマンに提案していた内容を踏襲してアプローチを始めてしまっていた。「2国間で協議を再開しよう」と、会議の成果を独り占めして、選挙を優位に戦おうと企んだのだが、実績が欲しい韓国与党の拙速な行動と、韓国大統領の無責任な発言が問題となり、米国だけでなく全ての国の怒りを買ってしまっていた。文在虎政権の支持率は経済同様に低調な状況で、野党からは「何ら成果を生み出させなかった最悪な政権」と呼ばれ、保守/野党の勢いを助長させていた。野党は「身勝手な動きをするから、米国の指揮下に入らざるを得なかった」と与党を笑い、「ずっとレームダック状態の政権」と揶揄されていた。

2選・続投が許されない韓国大統領が指名した後継者は、子息のコネ入学発覚で、タマネギ法相が辞任。その後に選ばれた候補者は、院政を前提にしなければ成り立たない人物で、保守野党の返り咲き、政権交代が折込済みという状況だ。

ロシアが日本をゴリ押し出来たのも、韓国も北朝鮮も、政治権力的に甚だ弱体化していたからだ。一方の北朝鮮を統治する金世生氏を支える故ロケットマンの側近集団だが、全員が公正な選挙を経たわけでも、公務員試験に合格したわけでもない。党の幹部たちが体制固めに躍起になるのは、それだけ不安を幹部達が感じているとも言える。

「このままでは韓国に吸収されてしまう。そうならぬ様に危機感を持って各国と対峙してゆく」と党の内部が混乱しているのを朝鮮労働党の幹部達は隠そうとしない。もちろん覚悟だけではない。妹の金氏は北朝鮮の党・政府組織を「世界と競える組織」とするよう組織改造の「指示をした」と朝鮮日報の記事になっていた。プランすら考えられない歴代の日本首相と一緒で、部下と組織に丸投げするだけの首長だと、4カ国の外相は「妹」の底の浅さを見抜いていた。

そもそも、北朝鮮・韓国で余生を過ごそう、子どもを朝鮮半島に留学させようと考える人は誰もいない。朝鮮半島で暮らす人々を少しでも増やすために、他国の資本と経済力に頼らざるを得ないのが今の状況だ。
国連制裁により経済援助が遮断された中で、千辛万苦の末に北朝鮮が成し遂げた核武装も、結局、北朝鮮の優越性とやらには貢献せずに終わった。何気ない歳月の変化の中で、ただ北朝鮮当局だけが「対南吸収統一」というむなしい妄想を抱き続けていただけで、国庫は干上がり、大多数の国民は栄養失調状態に陥った。

その種のバカバカしいまでの無意味な対韓国へ抱いていた北の妄想や、永久に叶わぬ幻想を全てブチ壊し、朝鮮半島の新しい時代が始まろうとしている。
また、南北朝鮮半島のドタバタ劇はロングラン公演となり、世界中が腹を抱えて笑い転げているが、その余波が3流コメディアン日本にも影響が及ぼうとしていた。

毎週日曜に投開票が行われている国内の市町村首長選挙で、社会党・共栄党 の推薦者が順当に当選する様になり、既に150人の新首長が誕生した。
12月まで続く、現職首長の落選劇場を目の当たりにした日本のメディアが「社会党・共栄党 包囲網」なる表現を使うようになった。支持率が下がり続けている与党と既存野党にとっても、悲惨な惨殺現場に目を覆い、何も見え無かったかのように頭を勝手に切り替えて「新市場・北朝鮮」を目にした様だ。
ロシアからの申し入れに喜々として飛びつき、与野党議員と経団連企業の代表者でロシア担当エリアを視察し、平壌に大使館を置こうといった、低調な国会論戦の中で唯一盛り上がっている議論となった。

2021年度予算案も北朝鮮新市場を視野に入れている箇所が散見され、反対の立場を取る、前田外相・阪本総務大臣・越山厚労大臣は辞任を首相に申し入れる。

「朝鮮戦争の頃とは状況が全く異なる。特需を期待するのは幻想だ。進出しても中韓企業に敗れて利益を得られなければ、日本企業の凋落を加速するだけだ」
と、閣僚会議で説明しても梨の礫、メディアの前で持論を語っても馬耳東風に終わったので辞任を申し出た、というのが社会党・共栄党、そして首相周辺のシナリオとなっていた。

社会党が推薦した3人の大臣が辞めるのに加えて、国公立大学偏差値問題と大学助成金で揉めている文科大臣と、中小企業支援で立場を失っていた経産大臣が辞めると、5大臣が同時辞任となり、流石に政権が持たない。
そこで北朝鮮市場と言う藁に縋るしかない与野党の議員達は、この後に及んでも北朝鮮頼みのプランを立てた。

「朝鮮半島からの留学生を増やす為、国公立大への助成金積み増しの補正予算」
「中小企業にも北朝鮮市場を開放し、進出の為の支援金を国が用意する」
と言った内容を、文部科学省と経済産業省が慌てて作文し、4月からの来年度予算案に補正予算として強引に盛り込み、文科大臣と経産大臣の延命を図った。

また、社会党が政権から完全に手を引く準備を始めるタイミングに合せるかの様に、寄生虫・孝明党が自滅党に擦り寄り、連立与党の更なる継続と選挙協力を持ち掛ける。
野党第一党を始めとする右派議員は、ドロ船・自滅党へ転属し、与党はゴキブリホイ〇イ状態、クズの集まりの様相を見せていた。

昭和平成の日本政治の集大成「馬と鹿の一つ覚え、寄らば大樹」の再現となろうとしていた。北朝鮮をニューフロンティア、新天地でゴールドラッシュの様に持ち上げて与党も野党も熱く語り、大して議論がされぬまま新年度予算案が粛々と決まり始めていた。

同時に首相が、周囲に辞意を漏らし始める。
4月のインド、オーストラリア、アメリカ、日本のインド洋包括防衛協議での首脳会談後に辞任を表明すると話し出す。
周囲は大騒ぎだ、なんと言っても代わりになる人物が居ない。周囲は首相の説得に忙殺されるようになる。
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韓国と日本だけが揺れている訳ではなかった。
中国も、揺れていた。韓国と日本は政権交代の受け皿が見え出しているのでマシかもしれない。一党独裁状態の中国の内部事情は深刻だった。

中国政府は「中国経済光明論」なるキャンペーンの中に「新市場・北朝鮮」を盛り込んだ。日韓の企業の工業製品には負けないと言った強い自信に満ち溢れていた。
諜報活動と防諜を担当する国家安全部が、「シンガポール企業プルシアンブルー社」を除外した、日韓企業の工業製品との比較資料を持って、北朝鮮内で既に展開中だった。
家電製品やEV/電気自動車等を、大量に平壌に運び始めている。米露からフライングと言われようが突っ走っている背景には、輸出がストップしており、「背に腹」状態となっているからだ。

ーーー

習金々平の国際社会からの評価は悪化する一方だ。今度は輸出の大ブレーキで、3中全会の場で有効な政策を示せないことを分かっていたのか、3中全会の開催日程さえ発表せず、結局、3中全会が開かれないまま終わった。今後のビジョンを全く示さなくなった中国の先行きに不確実性を感じた外資は、中国への投資意欲を失いつつある。

共産主義の独裁者が政策を大転換したことも嘗てはあった。1921年、レーニンは破滅的な戦時共産主義から資本主義寄りの新経済政策に転換した。1958~62年に大飢饉を引き起こした大躍進政策と人民公社化の大失敗を認めた毛沢東は、イデオロギーを後退させ、譲歩してみせた。
共産国の創業者が急激な方針転換をしても、トップで居られたのは、失敗を補えるだけの十分な政治資本を持っていたからだ。創業家で、我儘なワンマン実業家の首を取ろうとする輩は居ない。
相手を殺し続けてトップに居座った2人に歯向かう者は、国民にも居なかった。
ー方「中興の祖」と呼ばれたくて仕方のない習金々平は、地方で平凡な実績を上げただけの小君子に過ぎない。これといった対抗馬が居ないまま消去法で指導者となった人物・・でしかない。

西側と良好な関係を維持して中国経済を繫栄させた前任者達の実績でありながら、美辞麗句を並べて「チャイニーズドリーム」は今も続いていると国民を騙し続けている。
習近々平政権となってから、初めて低調のまま終わった全人代(全国人民代表大会)は、兵器や工業製品輸出が滞っている状況と、国内のみならず海外でもモリが狙った通りとなってしまったが、カンボジアやミャンマー等東南アジアのビルやマンション建設がストップしたままの異常な現状を放置するかの様に、打破する方針を一切打ち出さずに議論もせずに終わってしまった。投資家達が、21年の中国経済予測は極めて厳しいと予想するのも当然だ。

投資家が更に不安を抱いたのが、突如として中国政府が持ち出した「中国経済光明論」だ。
「中国経済の前途は明るい」という眉唾ものの希望的観測を持ち出して、今年の予想経済成長率を5%としたが、国際社会は騙されない。投資家は中国への投資を止め、日本の北陸や東南アジアにシフトし始めている。
全中代で新体制を発表しても何も期待できず、愚かな習近々平には手を緩めて弱さを見せる手段すら失ってしまった。粛清を適時遂行して圧力を加えなければ、いずれ有能な裏切者に追い落とされるだろう。運だけで這い上がってきた、しがない地方役人の実績はゼロに等しいのだから。

問題は習近々平政権が中国史の偉人と呼ばれる野心を縮小させて、権力の掌握範囲内で軽めの政策的譲歩を行なえるかどうかだ。
輸出ストップによるマイナス成長の連続ドラマが予想される中で、強圧的に国民や党内の反発を抑えるのは難しい・・というより、習には不可能だ。

地方役人に過ぎない首長なので、国民の反対運動が盛り上がると直ぐに迎合する。ゼロコロナ政策で抗議デモが国内各地で発生して、慌てて政策を撤廃したのは記憶に新しい。
毛沢東を気取って後ろ盾となる先人達を完全引退に追い込む独裁者ヅラを晒す一方で、抗議デモには怯える粗チン野郎だと露呈してしまった。
先人の業績にあぐらをかいているだけで、何の実績も無い習近々平政権には、軍を投じて天安門の鎮圧をする事は出来ないのだ。
中国史の4千年の歴史の中で「暴君」「愚人」と書かれたくはない単なる愚物、己の評価に怯える小市民なのだ。
結果、長期的な衰退から抜け出せないまま、国を粛々と運営するしかないだろうと国際社会が見做し始めているので、中国向けの投資が縮小していく一方となる。

実は中国には悔い改める為の簡単な手段が幾つもある。数々の悪政を放棄すれば良いだけだ。
具体的には、
・外国企業の従業員をスパイ容疑で逮捕・投獄する。
・フィリピンや台湾を南シナ海で痛ぶって、実効支配を推進している。
・中国は自分たちは発展途上国だと都合の良い話を持ち出し、CO2が出ようが石炭火力発電を続け、需要と供給を無視した電気自動車の製造数を拡大する。
・・等々、凡そ非国際的で、稚拙な中華認識の数々をとっとと撤回すれば、米国に代わる次なる世界のリーダーとして認められるかもしれない。それでも一歩も引き下がらずに我を張り続けるのであれば、西側からの助け舟は中国沿岸部まで全く来ないだろう。
しかし、今の状況は高齢化が進む中国社会で、安定を求めてばかり居る保守的な中国人にとっては好ましい傾向なのかもしれない。

海洋進出を闇雲に推進して周辺国を葬り去るプランを撤回しない中国政府をただ牽制し、調和を探り続けていた西側諸国にとっても、嘗ての中進国時代に勝手に加速後退し続けている習近々平政権の中国は、極めて好ましい存在なのかもしれない。
中国共産党も、日韓の与党の様に勝手に沈んでゆく様相を日に日に高めているらしい。

ーーー

反スパイ法に基づく取締りを担う中国 国家安全部は、習近々平政権下では国家の安全保障を最優先するセクションへと変貌している。
国内を取り巻く経済状況の悪化の原因はプルシアンブルー社であり、モリ親子だと断定して東京と亮磨が滞在しているオーストラリアでも中国大使館員を装った国家安全部の職員が尾行と監視を続けていた。

昨夜は横浜の邸宅に泊まったモリは、大森の金森邸に帰って来て、遅い夕食を屋崎由真と源 玲子と共に食べていた。
玲子以外の女子大生5人と、夕飯にタイのカブト煮とニラづくしを作ってくれた源 翔子は、昨夜のモリの講義「河越城の戦い」の映像を見ながら酒を飲んでいる。
本人の前で見ないで欲しいと思いながら、黙々とタイのアラを箸で突いて口に運んでいた。

魚のアラの眼球付近のゼラチン質や筋肉を食べると、異世界漫画のポーションってこんな感じなんだろうか?と想像していた。女子大生達と暮らして、初めて知った種類の漫画だ。
「口にした瞬間に体が楽になった気分になるのは、コラーゲンなのかな?」
「部位的にビタミンAとか、目に良い成分も含まれているんでしょうね。うん、これは確かに良いものです」
「でしょう〜」と由真と語っていると、

「うーん、よく分かんないな・・」
と玲子が呟く。
「年齢的なものだよ、きっと。歳をとってアラを食べたら、玲ちゃんにも分かるよ」
「そんなものでしょうか・・美味しいから、いいんですけどね」

「鯛のアラ、半身2つで百円しません。
ダシや味付けの手間隙の方がかえって高いかもしれません。ニラも安くなって来ましたし。
先生は安上がりで助かります」
冷酒を飲んで赤い顔をしているのは、この日休日だった、玲子の母の翔子だ。

「姉さんが作っている映像は録画した?」従姉妹の由真が翔子に聞く。
「うん、3分クッキ〇グみたいに喋りながら撮っといたよ」と翔子が応える。
情報共有が徹底しているのが良い時と悪い時がある。この場合は前者だ。

「常磐御前って源家の祖先にあたるんでしょうか?」映像を見終わった大学生がテーブルに集まってくる。蜂須賀 翼が玲子に訊ねる。

何故、河越城の話で常磐御前の話になったかというと、北条の忍び風魔の「くノ一」の話題で脱線して、傾国の美女となり常磐に話が飛んだのだ。

「絶対に関係ないと思う。うちは気仙沼の漁師だよ、源氏って半分貴族だからね」
玲子が否定する。

「皆、盛っちゃったでしょ?襲われた?」
誰もが関心がある事項を敢えて確認するのが樹里の役目だが、ニラを咀嚼しながらスルーする。

「あ、亮磨さんだ。え?ニュージーランド?なんで?」
繋いでいたPCを片付けていた杏がテレビニュースを見て言う。女性首相と会談している映像だ。亮磨の隣にスーツ姿の火垂が居る。恐らく買ったか借りたのだろう・・しかし、何があった?と悩むが、亮磨からアプローチする筈が無い・・NZ側からか・・と推測する。

「今、首相がStudy aviationって言った。火垂くんがターゲットになってるかも」杏が言う。

「航空ライセンスを取れる大学なんてあるのかな? それとも整備士向け?」
蜂須賀 翼がテレビの前に戻ってゆく。

「首都にマッセイ大学の航空学部がある。ライセンスが取れるみたい」サチがタブレットを見ながら言う。   
・・それは羨ましいと率直に思った。そんな大学は聞いたことがない。

「先生、間違いないよ。火垂くん囲われている。首相がね、日本人選手が在籍したクラブチームがあるし、オーストラリアリーグに参加してるNZのクラブチームも有る、って言ってる。
読唇術だけど、間違いない。火垂くんに分かるようにゆっくり丁寧に喋っているから」
杏が意外な能力を発揮した。

「NZなのにオージーリーグって、どういう事?」食事中の背中に、樹里が乳を押し付けてくる。

「オーストラリアはサッカーだけはオセアニアから脱して、アジアに属するようになった。オリンピックもワールドカップの予選もアジア枠で戦ってる。予選で日本代表とオージー戦ってよく見るでしょ? ニュージーランドはオセアニア枠で予選を戦っている。ダントツでトップ通過するんだけど、アフリカや南米の最下位チームに勝ったら本大会出場となる。
昔はオーストラリアがオセアニア枠の常連さんだったけど、居なくなったからNZが本大会に出場するようになったんだ。NZのクラブチームは国内よりも上のレベルで試合したい、強くなりたいって考えたんだろうね・・」

「東京オリンピックにNZもオージーも出るって・・まさか!」
杏が驚いた様な顔をしているが、火消しが必要だ・・
「ありえませーん。相手はプロの有望株ですよ」杏の憶測を否定する。
杏と樹里の姉妹はイタリアと日本の2重国籍者だ。22までにどちらの国籍か選ばねばならない。それ故に可能性だけを杏は取り上げた。22歳以下なら、所属する国のクラブチームの代表としてエントリーされる可能性があるからだ。

ニュージーランドの五輪代表のエントリー選手で怪我人などが出ている可能性もホンのチョットだけ想像する・・そもそも、有り得ない話だ。


・・翔子がさっきから目で誘っている・・これは断れないヤツだ。
ポーションが欲しいと真剣に思った・・

(つづく)


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