情報洪水警報です、ただちに避難してください。 【エッセイ】
世の中は情報にあふれている。
テレビをつければ、CMやニュース、バラエティが視覚と聴覚を占領してくる。スマホを見れば、SNSやブラウザがカスタマイズした情報で興味を誘ってくる。デジタルデバイスだけじゃない。お菓子や調味料だって、気づけば活字だらけのパッケージ。生きてるだけで、情報は僕らの脳に侵入してくる。
最近の僕は、なんだか疲れる。身体じゃなくて脳だけが。どうしてだろう。悩んだ僕は、散歩に出かけた。
近所の公園に行く。不思議と気持ちが楽になって、身体の底から活力が湧いてきた。今の僕ならどこへでもいける。
帰り道、大きな道路を通る。チェーン店が立ち並ぶ、見慣れた景色。ファスト風土化とはこのことか。頭にモヤがかかってくる感じがした。ああ、疲れた。家に帰りたい。何もしたくない。
しばらく考えて、僕は一つの結論に辿り着いた。僕らは情報をインプットし過ぎているのではないか。脳が休む時間がないのではないか。
情報化社会とはよく言われる。そして僕らは、それをインターネットに関係するものだと捉えている。もちろん間違いではないのだろうけど、それだけでもない気がする。
現実世界にあるものを0と1で表すことを情報化という。コンピュータが普及してから、あらゆるものを情報化するようになった。その過程で人々は情報を崇め奉ることになる。養老孟司はこの状況を「脳化社会」といった。
脳は積極的に忘れようとするそうだ。そして、寝てる間には情報を整理しようとする。しかし、情報は絶えずやってくる。とても処理しきれない。まさに洪水だ。
現代に生きる僕たちの脳は、もはやキャパシティを超えて、限界になっているのではないだろうか。それを放置していると、当然のように悪化する。それならどうすればいいのだろう。
テレビを消して、スマホを置いて、目を瞑る。静寂に耳を傾けて、暗闇の中をじっと見つめる。それは退屈な時間かもしれない。刺激もなければ興奮もない。何もない世界。そこにいるのは自分だけ。自分の心に注意を向けよう。きっと大量の水が流れ出てくる。やがて情報の洪水は収まり、見晴らしの良い脳が復活することだろう。
情報洪水警報が発表されました。ただちに避難してください。