バッティングセンターで人生を打つ。 【エッセイ】
ガタン。重厚な機械音が小さく響くと、少しして壁の穴から白い球が放り出された。ヘルメットを被った男の子は、振ったバットの重さに耐えられずに身体が回転してしまう。「がんばれ!」ネットの後ろから母親らしき女性が応援している。カキン。男の子は甲高い金属音を鳴らしたあと、顔に力を入れて手をぶらぶらさせた。
ベンチから腰を上げると、男は打席へと踏み出した。心臓の鼓動が男の耳を強く叩いている。この瞬間を待っていたんだ。男はネットをひらりと避けて打席に入った。バットを持って、百円玉を3