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NHK炎上をきっかけに、メディアのダイバーシティを考える

メディアがダイバーシティ・レポートの時代

米紙ニューヨーク・タイムズは先月、自社の「ダイバーシティ度」に関するレポートを出しました。

なぜ、メディアがダイバーシティに関する報告を出すのでしょうか。タイムズは、その効果について次のように記しています。

 The diversity of our staff makes our report deeper and richer, and better able to address the needs and experiences of our growing, global audience

「多様なスタッフを雇用したことで、私たちはより深くより豊かな取材リポートを出せるようになり、社会で求められているニーズを訴えられるようになった結果、読者を増やすことができた」

その内情は

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NYT内でも、依然として、全体の中に占める白人の割合は多いですが、有色人種の割合が少しずつ増えています。

センサスを見ると、人口に占める白人の割合は76.5%、黒人・アフリカ系は13.4%、ネイティブ・アメリカンは1.3%などとなっています。人口比と比較すると、高い割合の黒人を採用しているとも言えるのではないでしょうか。

メディアに求められるダイバーシティ

個人的な考えですが、テレビや新聞を中心とした「マスメディア」から「デジタル」へと舞台を変えるにつれ、メディアの立ち位置も変わってきたのではないでしょうか。

マスメディアの隆盛期は、大衆に向けて情報を発信できるのは、大手マスコミのみでした。NHKにしろ、民放にしろ、より多くの人に見てもらう必要があるため、「より多くの人が関心」を持っている話題を扱います。

しかし、デジタル時代になり、ソーシャルメディアが成長したことで、様々な関心が問題意識を持った人たちが、それぞれにコネクトできるようになりました。

Pew Research Centerの報告では、ニュースルーム(いわゆる、記者や編集者がいる空間)のダイバーシティは、社会一般のダイバーシティよりも、少ないと指摘されています。

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メディアは差別を助長してきた存在

なぜメディアの「ダイバーシティ不足」が問題なのか。ハーバード大学のジャーナリズムスクールが出している「Predictions for Journalism 2019」の中では、このようなことが指摘されています。

More news organizations should reckon with their historic role in perpetuating racism. In 2019, they will do the work and come to the understanding that racism is a structural problem baked into systems and perpetuated by the way we report and edit stories.

「ニュース組織は、メディアが歴史的に差別を根付かせる役割を担ってきたことを考慮に入れなければならない。2019年は、私たち自身のこれまでの報道や編集によって焼き込まれ、根付かされてきた構造的な問題だと認識するでしょう」

くしくも、NHKの「世界のいま」がこうした歴史的な要素に配慮をできず、誤解を招くような誤った内容を出してしまったのは2020年ですが、こうした問題はNHKだけでなく、他のメディアにも起こりうることだと思います。

じゃあ、そうすれば防ぐことができた(できる)のでしょうか。それは差別されてきた側の気持ちが分かる人が社内にいれば、こうはならなかったのではないでしょうか。

多くの黒人の記者がいるNYTが、同じような過ちを犯すとは思えません。だって、自分たちの仲間に、同じ気持ちを持った人たちがいるのですから。これは人種差別に限らず、ジェンダーバランスをめぐる問題でも同じだと思います。

まずはジェンダーバランスから

しかし、組織のダイバーシティは一朝一夕で作り上げることはできません。ならば日本では、どこから取り組むのが良いかというと、ジェンダーバランスではないでしょうか。

オックスフォード大学にあるロイター・ジャーナリズムスクールの報告書では、日本のメディアではトップエディターの役割にある女性の数は、ゼロとなっています。

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これでは、終身雇用の年功序列制度で、その当時の採用状況や、女性が職場を去利がちだったなどの社会状況を踏まえても、改善に取り組んでいるとは言えないと思います。

6月20日の朝日新聞の記事では、こうしたことが指摘されています。

「ものを知らない」という役割を女性に与える企画は、朝日新聞を含むマスメディアでよく行われてきた。「美術館女子には、大手メディアが抱える共通の問題が表れている」とエッセイストの小島慶子さんは言う。

女性が編集長を担っていたら、編集プロセスに女性が関わってきていたら、このような指摘を受けることになるでしょうか。

メディアは、ラテン語でいう「Medium」、「仲介する」や「間に入る」という意味です。媒介者と社会との感覚のズレをどう修正するのかが、今後のメディアの鍵になり、より深い報道への繋がっていくのかもしれません。






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