大人も読める絵本 「僕はここにいるよ」 第3話
あらたは恐る恐る後ろを振り返りました。
すると、今度はケツァルコアトルスの模型がゆっくりと台座から移動をし始めたではありませんか。
「こいつもか!いつの間にこんなすごい場所になったんだここは」
ただ少し様子が変です。
「どうした、なんか探しているのか?」
あらたの言う通り、何やらキョロキョロしています。
スンスンスンスン
「匂いを嗅いでいるのか?」
スンスン!!
ケツァルコアトルスが急に二人のいる方向に顔を向けてきました。
そして、次の瞬間
こちらの方に移動してきます!
「なんでこっちに来るんだ!!」
二人はエリアの出口に急いで向かいます。
「なつみこっちだ!!」
ガチャン
あらたがエリアの扉を閉めたことで、二人は何とか逃げ切ることが出来たようです。
そして、いつの間にか二人はエントランスまで戻ってきていました。
「大丈夫か?なつみ」
「ええ、大丈夫よ」
「?」
「どうした?えっ!!」
二人の足元に巨大な鳥のような影が現れました。
しかも、その影の大きさがだんだんと小さくなっていきます。
「今度は何が来るんだ」
ドーン
館内にものすごい音が響き渡ります。
そして二人の前に姿を現したのは、クリオドラゴン
でした。
「またか、もう3度目だぞ。やめてくれ」
クリオドラゴンは口を大きく開け、二人の方に向かってきます。
「あなた、危ない!」
「こっちに来るな!なつみは俺が守る」
「アハハハハ、大丈夫だよ。食べたりしないから」
驚くべきことにクリオドラゴンが喋り始めました。
「あ~楽しかった!!空を飛ぶの!」
「・・・・・・・・・」
二人はあまりの驚きに言葉が出ません。
「このかっこのままじゃ、怖いよね。今から出るよ」
すると、クリオドラゴンから人の形をした光が出てきました。
そして、
「驚かしてごめんね。パパ、ママ」
「パパ、ママ?もしかして、春?なのか」
「うん、そうだよ」
光は徐々に薄くなっていき、春くんが姿を現します。
「春・・春!!」
「本当に春なんだな・・・なんであんなことに・・・」
二人は春くんに駆け寄ります。
「ごめんね、ママの言うこと聞かないでこんなことに
なっちゃって」
「ううん、私が春についていってれば・・・・
ごめんね」
「ママ、僕は大丈夫」
春くんの体が再び光始めます。
「あ!そろそろ時間だ」
「春、どこに行くの?」
「僕ね、今から恐竜の世界に行くんだ!!」
「だから、僕のことはもう心配いらないよ!
パパ、ママ、今までありがとう。僕ねパパとママの子供に生まれてきてすっごく楽しかったよ」
そして、春くんはたくさんの小さな光の粒となって空へと飛んでいきました。
「今のは・・・・夢でも見てたの・・・・」
「春は、最後に会いに来てくれたんだと思うよ。少し
早い旅に出る前にね」
「なつみ、俺のネクタイどこか知らない?」
「そこの椅子にかけてあるでしょ、まったく」
「今日から私も仕事に復帰するんだから、ちゃんと
してよね」
「ごめん、じゃあ先に行くから。行ってきます」
「行ってらっしゃい!」
「よし、私も準備完了!じゃあ行ってきます!!」
おしまい
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