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珈琲に助けられた入院生活

悪性の乳がんと宣告のあと、家族以外で「即」癌のことを話した友人は2人でした。ひとりは、ほぼ私のことを包み隠さず話してる友人。もうひとりは中学の同級生で乳がん手術経験者でした。

この同級生、本人は乳がんのことはあまり周りに言わず、お仕事がんばってるタイプです。乳がんのあと、子宮がんも発症。全摘してますが、知らない人はそんなこと全くわからないほど「やってる人」に見える感じです。

で、この友人が真っ先に私にくれたアドバイスが「チョコレートと珈琲豆を日数分準備しなさい」でした(笑)一杯一袋タイプも考えましたが「自由に飲みたいな」と思って、珈琲セットを持参することにしました。チョコレートは持ち込みNGでした。

ポット

はじめは、湯沸かし電気ケトルまで持って行こうとしてたんですが、約1リットルのステンレスポットを2本準備しました。これが大正解!私、すごくたくさん飲むので、お湯1本ぶんだけだとすぐ足りなくなりました。あと「お湯をもらいに行く」という行為が毎朝の”お出かけ”ルーティンとなって、ちょっぴり楽しみの時間でした(食堂へ行くだけなんですが笑笑)。ちなみに夜寝る前にもお湯をもらいに行くんですが、朝にはちょうどいい白湯になってて、それをマグカップで起き抜けに2杯飲むのもすごく調子よかったです。

ポットに熱いお湯があると、珈琲飲みたくなった時にすぐ淹れられてとにかく便利。コロナで病院から抜け出せもしないし、食べ物持ち込みNGだし(ちゃんと徹底してルールに従いました)クチ寂しくなったらすぐ珈琲淹れました。

ドリッパー

ドリッパーは日頃から使用している「クレバー」を持っていきました。クレバーは長年使ってる優れもの。「浸しておく」系のドリッパーなのでとにかく楽ちん。プラスチック製で持ち運びも特に気にならず。「入院のために準備する」ということをしたくなくて、基本は家で使ってるものを持ち込み。これが不思議と入院中の部屋(個室が空いててありがたかった)も「自分の場所」感がしてとても良かったです。

マグカップ

これも陶器のシンプルなマグを持ち込みました。母が「お父さんが使った蓋付きの割れないカップがあるよ。割れたらよくないし」と勧めてきましたが、なーんか納得できず(笑)。そんなに割る?てか、入院してるからってマグ割る???って。どうせ飲むなら、こういう時こそ美味しく飲みたい、と強く思いました。「病室には看護師さんもドクターもしょっちゅう出入りがあるでしょ?蓋付きが良くない?」と言うんですが、それこそ「ティッシュで良くない?」と、私はティッシュペーパーを乗せるようにしてました。

珈琲豆

豆は、入院直前にやりとりをしていた東京の「TOKINICASA(トキニカサ)」から取り寄せました。私の音楽活動を表に押し出してくれたスタジオのボスが紹介してくれた珈琲屋さんで、それ以後、香りの良さに惚れ込んでしまいました。店主のリサさんに病気のことを伝えたら、こんな風に教えてくれました。「珈琲って、その瞬間、飲みたいか?飲みたくないか?がすぐわかる飲み物だから、飲みたいか?飲みたくないか?で体調がわかる」と。確かに!良くも悪くも珈琲って、味も香りも独特。なるほどなあ。。。そして、入院直前に3種類の豆が送られてきました。

実は入院が思ってたより長引いたのもあって、珈琲豆が足りなくなったんです。どうにか生き延びようと(笑)一度、自動販売機でブラックコーヒーを買ってみました。毎日毎日、淹れて飲んでるせいもあってか、驚くほどクチに合いませんでした。あれれ?市販のブラックコーヒーってこんな味だったっけ。。。?

そこで!お願いしたのが、普段お世話になってる近所(武)にある「& COFFEE(アンドコーヒー)」。「とにかく香りがいいものをお願いします」とオーダーして、持ってきてもらいました。自販機のコーヒーの後の珈琲がたまらなく美味しくて「私、いつからこんなに珈琲好きになったんだ。。。?」と思うほどでした笑

牛乳

ちなみにブラックも飲みましたが、牛乳を入れてカフェオレにして変化を楽しみました。あれ?持ち込みNGでしょ?そうなんです。入院前の説明で、私がロングライフ牛乳を持ち込みたいと言ったら外来の看護師さんに「ダメです」と即答されまして。で、この牛乳は、毎朝の朝食の牛乳を飲まずに、珈琲用にキープしてたもので。朝食の撤収時も最初の頃は「牛乳は珈琲と飲みます」ってお伝えしてキープ。これは大正解でした。

フレイバー珈琲

え?病院でフレイバー珈琲ってどういうこと???
これは次回、書きます。笑

病院食と珈琲のマッチング

これ、おかげさまでワタクシが入院してた病院は食事がとても美味しくて。本当に毎日ありがたかったんです。で、たまあーに、デザートが出たんですよ。その中でも、本当に珈琲とのマッチングが素晴らしかったのが「アーモンドのブラマンジェ」(たぶん)。なんでたぶんか?というと、私、メニュー表見ないようにしてたんですよ。自分の味覚だけで食事日記をつけるようにしてたんです。だから、たぶんアーモンドブラマンジェ笑 でも、これ本当に美味しかったー。地味な見た目とは裏腹に。今食べてみるとどうか?は不明ですが、入院中の私には濃厚(笑)。ひとくち食べた瞬間、珈琲用に取っておこうと思って、食後ゆっくり味わいました。

ルーティンの重要性

この「珈琲を淹れる」という行為にどれだけ助けられたか?と思います。
もちろん、飲むということもですが「飲むために淹れる」ということが、ルーティンになって、入院生活という日々を作っていくようでした。「毎日の楽しみ」ってこういうことなんだよな、と変に実感した「入院」という体験。

窓を開けて、風を取り込み、深呼吸して、ストレッチして、珈琲淹れて、音楽聴いて、珈琲飲みながら変わり映えしない外の景色を眺めて、変わり映えしてないようで変わっていく景色にたまに感動したりして「あー、なんだこれ。楽しいなあ」って。

がんになったこと、手術したことを、瞬間忘れてるような時もあったり。あ、私、入院中なんだな、って。ふと忘れられたのは入院中だからこそ安心しきってたのかもしれないですね。何かあってもナースコールはあるし、夜中に汗でグッショリしても言えば着替え持ってきてくれるし、毎日3食ほっといても食事は提供されるし。「ああ、私は、今、こんなにも助けられてるんだな」。そして外界へ放出された今、もっともっと思うわけです。私は、今この瞬間、何に、助けられているのか?

退院後もずっと変わらず、私は毎日珈琲を淹れていますが。
淹れながら思い出すのは、入院中の安堵感だったりもします。
毎日のルーティンって、凄まじく強いものなんだなあ。

そして今。日常のひとこまで。
ひと粒、クチの中に放り込むチョコレートの至福さ。


次回は入院中のフレーバー珈琲について。

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