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どんな時に認知症専門外来を受診したほうが良いのか?

おはようございます。
ドクターから質問が来ていました。

認知症専門外来へ、どういうときに紹介したほうが良いのか?

というご質問でした。
以下は私見を述べます。

治療可能な病気を疑った場合

認知症は、いったん発達した認知機能が徐々に低下する症状です。100種類以上の病気で起こりえます。この100種類以上の病気の中でも治療可能な病気があります。

正常圧水頭症

認知症の人の約1%ぐらいが正常圧水頭症ではないかといわれています。正常圧水頭症は、脳の周りにある髄液という液体の産生と排出のバランスが崩れた状態です。前頭葉の機能低下を含める認知機能の低下、歩行障害、排尿障害(失禁)が見られます。この髄液の流れをよくする手術をしたり、バイパスを作ってほかの経路から流してあげたりすることで、改善することがあります。

血管性認知症

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血が多発して、認知機能低下が起きている状態です。脳梗塞や脳出血の一部の要因には、高血圧や糖尿病、脂質異常症などがありますし、飲酒や喫煙も影響します。ですので適切な生活習慣を指導したり、生活習慣病の治療を行うことで、認知機能低下が止まることもあります。

レビー小体型認知症

これは、パーキンソン病と同じタンパク質(αシヌクレイン)が脳に沈着して起こってくる認知症です。幻視や意識の変動、注意の障害などが起こってきます。コリンエステラーゼ阻害薬というお薬を適切に使うことで、幻視や注意の障害の改善がみられることがあります。また、便秘や起立性低血圧などの治療を適切に行うことで生活が維持できる場合もあります。

前頭側頭葉変性症

前頭側頭型認知症と同義です。前頭葉と側頭葉の萎縮を特徴とする病気です。抑制のきかない行動や、反社会的な行動、常同行動などが注目されがちですが、特徴的な言語障害(失語症)をきたします。多くは65歳未満で起きること、難病指定疾患であることから、専門医を受診されることをお勧めします。

若年性認知症

65歳未満で認知機能低下が疑われる場合は、専門医を受診したほうが良いでしょう。だいたい10万人に50人程度いらっしゃると考えられます。うつ病や統合失調症などが隠れていることもありますし、就労に関すること、経済的な面なども影響が大きい年齢ですので、認知症疾患医療センターなどに相談するとよいでしょう。

精神疾患の合併を疑った時

うつ病

物忘れだけでなく、気持ちの落ち込み、体重減少、死にたい気持ちなどがみられた場合、一度精神科の受診をしていただくこともよいと思います。高齢者のうつ病は、比較的起こりやすい精神症状であると思います。特にパートナーや、親友、兄弟などの死が身近となり、孤立感を深めていたり、経済的な困窮なども起こりやすい状況に置かれている方もいます。

妄想

事実でないことを事実と思い込むことを妄想といいますが、このような症状は、アルツハイマー型認知症などのよく見られる認知症でも起こりますが、背景にもともとある精神疾患がある場合があります。もし以前からの妄想などがある場合は、精神科を受診されてもよいと思います。

運動機能の低下を伴っているとき

パーキンソン症候群の合併

パーキンソン病は、体の動きが悪くなったり、震えが出たり、転びやすくなるなどの症状をきたす病気です。パーキンソン症候群をきたす疾患として、服用している薬剤による影響や、レビー小体型認知症との鑑別、血管性認知症、正常圧水頭症などがあります。神経内科を受診するとよいでしょう。

全身の脱力、筋力の低下をきたしている場合

一部の認知症では、全身の筋力が衰える筋萎縮性側索硬化症を合併する場合があります。生活機能の低下だけでなく、全身機能の低下をきたし、専門的な医療が必要となりますので、相談することが望ましいです。


いかがでしたでしょうか?
今回はドクターからの質問でした。
「図解で分かる認知症の知識と制度・サービス」は、認知症の人、家族、専門職からの相談から生まれた本です。ぜひ参考にしていただけましたら幸いです。



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石原哲郎|脳と心の石原クリニック院長
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