【認知症とタンパク質】軽度認知障害(MCI)における必須アミノ酸の低下
上記のように、必須アミノ酸が認知機能の低下と関係しているのであれば、必須アミノ酸の補充が認知機能に良い影響をもたらす可能性がある。
アルツハイマー型認知症の行動心理症状(BPSD)と認知機能に対する必須アミノ酸補充の効果を検証した研究 (UMIN000027186) (Takada et al., 2022). 対象は65歳以上のアルツハイマー型認知症(NPI-12: Neuropsychiatric Inventory 1点以上,MMSE:Mini-Mental State Examination 15~25, CDR:Clinical Dementia Rating 0.5~1)である。
プラセボ対照二重盲検試験を4週間、9種類の必須アミノ酸配合剤を1日2回摂取する研究デザイン。
次評価項目としてNPI-12 スコア、副次評価項日として、 MMSEとFAB (Frontal Assessment Battery)とTMT-B (Trail Making Test Part B)とCDR が評価された。 両群間に NPI-12 スコアの差は認めなかったが、実薬群で FAB スコアの有意な改善が認められた。
特にFAB の下位項目3で有意な改善効果が認められた(Takada et al, 2022)。
二つ目の研究では、必須アミノ酸補充による認知機能正常の方の認知機能が検討された(Suzuki etal., 2020)。 55歳以上の106人を対象に7種の必須アミノ酸摂取群(3g/日,6g日)とプラセボ群の3群に割り付けられ、12週間の介入期間後に認知機能と心理社会項目が評価されたプラセボに対して6g日摂取群がTMT-Bにおいて有意な改善を示した。
また社会交流や心理状態を反映するスコアも有意に改善した。 これらの結果から、必須アミノ酸は注意機能・認知柔軟性・心理社会性に好ましい効果があることが示唆された。
二つの臨床試験は、アルッハイマー型認知症と健常者と対象者が異なる点は注意が必要であるが、いずれも必須アミノ酸の補充が前頭葉機能に有効性を示した点は興味深い。
Dementia Japan 37: 217-222, 2023 池内健 栄養学的な観点からみた認知症
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奥平智之
日本栄養精神医学研究会 会長
医療法人 山口病院 副院長
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