親子の再会はメタバースで。
「パパのお部屋でマイクラがやりたい」
既に元気な五歳息子の声がする。病院でも「登園ＯＫ」が出ていた。
「うつしたら大変だから今日だけ我慢」
用心深いママの声。
古いタブレットを貸す。
マイクラは重すぎるが気分だけでもと。
それでも健気に遊ぶ声が聞こえた。
妙案を思いつく。
同じネット回線。彼のワールドに遊びに行けないか？
ジャングルの荒野に降り立つパパ。（キャラはママ似）
息子の居場所は分からない。
探し出すのは無理かと思った矢先――
草むらにベットが……息子が置き忘れたもの！
近くにいるはず。
辺りを探すと村に出くわした。
さらに探すと……いたっ！
うつむいて作業をしている。
私は背後の草むらに身を潜めた。
やがて息子がこっちを振り向く。
一瞬素通りしたがすぐに、
「パパ？」
声がした。
画面のキャラを通じて頷く。
「パパだ。ママ！ パパが遊びに来たよ！」
喜びように、私もリアルに声を張り上げる。
――会いたかったよ！
父子、４８時間ぶりの再会であった。
まだ我に気付かぬ子の背寒昴
（まだわれにきづかぬこのせかんすばる）
季語（三冬）： 寒昴、すばる、昴宿、六連星、羽子板星、冬昴