分け前
等分に取り分けられた苺が、パパと四歳息子の前にある。
同時に食べ始めるも、無類の苺好きの息子は一気に食べきる。
私は一つ目以降全く手をつけない。
息子はパパのお皿が気になる。何度もチラ見する。でもパパは忘れたかのように食べない。しびれを切らし息子は「苺どうぞ」とパパに促す。
ああ、とパパが美味しそうに口に放る。息子はもうたまらない。
「お一ついいですか?」とパパに懇願する。
これが可愛くて私は毎回この意地悪をする。
「どうぞ」と言われた息子は一つを頬張るや残りもまた一目散に食べきってしまう。パパは二個、息子は…? これがいつもの苺の分け前。
満月が朧に浮かぶ昨日。
パパが残り一つに同時に手を出してみた。あっと驚く息子。パパが「どうぞ」と譲る。息子は後ろめたさを隠すようにパッと無言で口に入れた。
――数分後。たまごボーロを摘まんでいた息子がパパに「お一つどうぞ」と分けにきた。
[今日の十七音]
朧夜に疲れを溶かすぼーろかな
(おぼろよにつかれをとかすぼーろかな)
【季語(春): 朧、朧月、朧夜】