『お詫びにコンニチハ』 410文字 ショートショート +創作メモ (無料)
一歳の息子は春から保育園に通う。彼が園で友達とうまくやっていけるか。心配になった私は、挨拶の言葉だけでもと必要最小限の四つ――
「こんにちは」「ありがとう」「ごめんね」「バイバイ」を教えることに。
だけど一歳には難しかった。仕事に行くママに「ごねんね」と手を振ったり、ばあばがプレゼントを買ってくれるや「バイバイ」して悲しませたり。飼ってる子犬のコンちゃんにも「あいがと」と言って話しかける始末。
どうやら使う場面を間違って覚えたよう。
ある日、犬の散歩に出かける際、息子の作ったブロックの家にしっぽがぶつかって壊してしまった。不機嫌になる息子。「ごめんね」と言っても許してくれない。感情スイッチが入り、コンちゃんにまで怒りをぶつけてくる。
「コンはチワワ。言っても分からないの」
そう諭すと一転、ニコッとして頷いた。私はハッとして、あらためて
「壊して、コンニチハ」と息子に頭を下げた。
「プログラムも間違ってしまって……」
(405文字)
※以下は「ショートショートの書き方(作り方)」として、
本文に至るまでの頭の中のプロセスをメモに記しました。
ご興味のある方だけどうぞ。
【タイトル・イメージ・構想】
最初のランダムお題=「お詫びの印にこんにちは」
つまりそれってどういうこと?
⇒ 常識的には「ごめんね」と謝る状況だけれども、訳あって「こんにちは」がまかり通る世界の話。
それはどうして?
⇒ 謝っているのは、言葉を覚えたばかりの子供だから。挨拶の「こんにちは」の使い方を間違って覚えてしまった。
それでどんなことが起こる?
⇒ 家族とおかしな会話が生まれて、皆が笑顔に(or 悲しく)なる。
最後はどうなる?
・あるとき、逆にパパが子供を泣かせて(怒らせて)しまう事件が起きて、そのときに……どうするかがオチ?
【初稿を書いてみる】
一歳の息子が初めて「パパ」と言ってくれた。
妻は「あーあー」と言っただけというが、私には呼んでくれたように聞こえた。ほら現に今もこっちを見て、「パパ」と言ってるよ。
私は嬉しくなって次なる言葉を教えてあげた。人と人との会話で必要な言葉。最初は「こんにちは」。何かしてもらったら「ありがとう」。悪い事したら「ごめんね」。おしまいは「さようなら」。
だけどどうやら息子にはまだ難しかったみたい。混同して覚えてしまって、パパにごっつんこしたのに「こんにちは」と言ってケタケタ笑ってる。この分だと、他の言葉も怪しそうだぞ。
そうこうしてると、私が不意に息子の作ったブロックに当たって壊してしまった。泣いて怒る息子。「ごめんね」と言っても聞く耳を持たない。困り果てて、「こんにちは」と言ったらすぐに許してくれた。 (347文字)
【感想・推敲(■)と新たなアイデア(◇)】
■ 全体に、もう少し盛り込める要素がある。途中、クスっと笑えるエピソードとか具体例がもっと欲しい。
■ 段落①は本当に一歳の「パパと言ってくれた」エピソードでいいのか。もう少し本編の発端になるような切り出し方はないか。
■ 段落②の教える言葉は四つでいいのか。四つである意味はあるのか。四つ入れるからにはそれぞれエピソードも入れたい。
■ 段落③で、いったんタイトルを回収するのは悪くない。
ただ、謝る言葉としての「こんにちは」をここでもう使ってしまっていいのか。まだ別の言葉にして匂わす程度の方がいいのではないか。
■ 段落④のオチの「こんにちは」の切り出し方に工夫が欲しい。もう少しひねって鮮やかに着地できないか……。
◇ 「こんにちは」の聞き間違いでも、納得したら面白いかも。
◇ ならもう人間じゃなくてAIロボットにしたら? ← やりすぎかも。
――そして改訂稿へ。単語の変更や叙述の部分修正、最後noteに上げる際、見た目の体裁を整え一回音読して、本文となりました。
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