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逞(たくま)しさに惹かれる
夕方、ベランダに出る。
母子の帰る頃だが遅れているらしい。
ふと庭の片隅に雑草を目にした。
チューリップがあった横。
いつの間にか居つき大成長を遂げている。なに怖い。
抜こうとして蕾が目に入った。……花が咲く?
気になりGoogleレンズで検索。
白い綿毛、紫の蕾、トゲの葉……ノアザミか。
野薊……花言葉は「独立」「素直になれない恋」
トゲを持ち誰も寄せ付けず、意思を持って自立して咲いているように見える姿から――
嫌いじゃない、こういうの。
華やかなグループと一線を画して一人詩集を読んでいる女子。
近づきたくても近づけない。学生時代、片思いしていたタイプ。
どうしようかと逡巡していると、母子の声が聞こえてきた。
二人、けんけんぱしながら帰って来ている。
道理で遅いわけだ。
妻は昨日、膝を打ち大きな痣が出来てたけど、大丈夫かな?
痣、あざみ……「アザ」が重なる。
理由をかこつけて、この逞しき薊がどういう花をつけるのか、見届けようと決めた。
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夏薊けんけんぱして帰る母子
(なつあざみけんけんぱしてかえるぼし)
季語(三夏): 夏薊
※帰った五歳息子に見せると「なんだこれ」と蹴ろうとしたので、思わず「止めて」と声をあげてしまった。完全に虜になっている……あざみ。