子の前歯ぐらつき出した木の芽時
「少し穴が開いてきてますね」
六歳息子の歯の定期検診。
虫歯への予兆を指摘され頭を下げる、「すみません」。
生活習慣を指摘された気になるからだろうか。
自分の虫歯以上に居たたまれない気持ち。
仕上げ磨きって、皆何歳位までやってあげるんだろう。
小さい時ならまだしも、六歳はなかなか言うこと聞かないよ。
「下の前歯がぐらついてきてます。ここからですね」
一転、抜ける乳歯を指摘され明るい気分に。
同時に「奥歯のさらに奥から、六歳臼歯が出かかっています」
大人の歯の登場に、思わず「わあ」と快哉を上げた。
「嫌だ嫌だ」と治療ベッドに上らなかった日を思い出す。
今や自分から寝転がって口を開けるまでに。
……大人になったな。
花粉症で眼科に行っていた妻と合流、報告。
妻も虫歯に落胆。「ごめんね」と息子に謝った。
「二人とも気にしないで」
当の本人がけろりと言ってのける。
いやいや気にするよ。気にさせてよ。
永久歯が生え終えるまで、もう少し頑張ろう。
(このまえばぐらつきだしたこのめどき)
※俳句には有名な句があって
万緑の中や吾子の歯生え初むる (中村草田男)
草木に緑が生い茂る初夏の候に、子供の歯が生えはじめた喜び。
私も二~三か月後、こんな気持ちになっているのかな。