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独身です。一人で生きる心構えを教えてください【仏教で答える悩み相談41】

人の数だけ、悩みは尽きぬもの。皆さまから寄せられた悩みに、お坊さんや仏教関係者たちが答えます。

今月のお悩み

Q 50代シングルで、結婚の予定もありません。気楽ですが、このまま一人で死んでいくのかと思うと、寂しさや不安も感じます。私のように、家族を持たずに死んでいく人間の心構えについて、アドバイスをお願いします。
(50代・男性)

A1 周囲の〝縁〟を大切にして

 独身で将来が不安とのこと、確かにパートナーがいてくれることは支えになると思いますが、それが永遠に続くことはありません。私は今年65歳になりましたが、52歳の折、妻をがんで見送りました。

 私たちは過去に対する後悔や未来に対する不安を感じるようにできていると思います。過去に対する後悔は言い換えれば反省で、同じ過ちを繰り返さないために大切です。また、未来に対する不安は、将来起こりうる不測の事態に対する備えを促す心の動きです。

 しかし、過去に対する後悔や将来に対する不安に過度に執着することは、決していいことだとは思いません。仏教では今の私を大切にすることを勧めています。私を支えてくれている、目に見えるもの見えないものに手を合わせて感謝していくことが、今の私を大切にすることに繋がるのです。人は一人では生きていけません、多くの人や物と繋がり生きています。そのことを仏教では「縁」と呼んでいます。パートナーがいないことは今のあなたには事実ですが、周囲にあなたを支えてくれている方々がいるはずです。その方々との縁を大切にしていくことが不安を乗り越えていく道だと思います。
(編集委員・酒井淳昭)
 

A2 阿弥陀さまの存在が心を豊かにする


 もし、あなたに家族がいたとして、はたして寂しさや不安を感じずに死んでいけるでしょうか。もしかすると、その家族と別れるという辛さが、逆にあなたを苦しめるかもしれません。命を終えていくときは、家族とも友人とも別れていかねばならないからです。家族に囲まれて幸せそうに亡くなったように見えても、本人からしたら、内心穏やかかどうかは分からないものです。

 浄土真宗では、阿弥陀様という仏様をいただいております。阿弥陀様は私の体の中に満ちて、生きているときも、命終えていくときも、そして命終えたその後も、ずっとご一緒くださり、苦楽を共にしてくださいます。この阿弥陀様という仏様をいただくことで、もしかすると、私たちが命を終えていくときの心の豊かさが変わってくるかもしれません。
(築地本願寺職員・橘 俊了)

A3 この際、死んだ後まで考えましょう


  個人をいえば『仏説無量寿経』に「独去独来」とあるように、人は一人で生まれて一人で死んでいくものです。誰でもそうなので、境遇による差はありません。
 
 周囲の側からいうと、遺骨をどうするか親族が揉めるとか、法事で集まった人たちが思い出話で笑顔になる、という場面に住職としてよく立ち会います。だから死んだだけでは終わらないと感じます。

 死んだ後はどうでもいいという人もいますが、それを無責任と思うなら、死んだ後まで考えていくのはとても前向きだと思います。もしあなたに甥や姪がいるならば、親しく接し、後事を託してはいかがですか。あなたが大切に思っていることを伝えることもできますよね。あるいは親族でなくとも、信頼できる人と関係を築くなど。いずれにしても自分だけでは解決しない以上、何らかのつながりを持ちつつ生きていくことが心構えに通じると思います。
(ゲスト回答者・藤本真教)

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※本記事は『築地本願寺新報』掲載の記事を転載したものです。本誌やバックナンバーをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。

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