築地本願寺で50年に1度行われる“大きなお祭り”、知ってますか?―築地本願寺鼎談―
4月26日(金)から、4日間に渡って築地本願寺で開催される親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要。そこで今回、築地本願寺総代・中村弘奉讃会会長、圓正寺住職の倉澤豊明慶讃法要委員会委員長、築地本願寺の中尾史峰宗務長の3人による鼎談を実施。本法要にかける想いを伺いました。
50年に1度の慶讃法要。その魅力とは?
――4月26日から築地本願寺では親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要が行われます。まずは、みなさんが考える同法要の魅力について教えてください。
倉澤 今回の慶讃法要のひとつの魅力は、50年ぶりに行われることです。そんな半世紀に一度の親鸞聖人のお誕生日と浄土真宗の始まりを祝う大切な法要で、委員長という重責を担わせていただくのは、私自身もとてもありがたいことですね。
中尾 50年に一度というのは、本当に大変なめぐりあわせですよね。慶讃法要は人によっては人生で1回しか経験できない可能性もあります。1975(昭和50)年5月に行われた前回の御誕生800年・立教開宗750年慶讃法要の時は、私はまだ得度していなかったので、法要自体には参加していません。そんな私が、今回の法要を築地本願寺の職員としてお迎えできるのは、この上ない喜びだと思います。ぜひ、このご縁を多くの方々に感じてもらえたらうれしいですね。
中村 魅力といえば、その華やかさも楽しみです。私が築地本願寺の総代として大きな法要に参加するのは、2013(平成25)年に行われた親鸞聖人750回大遠忌法要以来なのですが、慶讃法要は相当に華やかなものになると聞いています。
倉澤 はい、かなり荘厳な法要になると思いますね。あと、第25代の御門主様と第24代の前門様がおでましになるのも、築地本願寺の慶讃法要ならではといえますね。
中村 ご門主様は、築地本願寺で副住職をされていたので、地元・築地ではとても親しまれています。今回、お二方が築地本願寺の慶讃法要にいらっしゃるとのことで、楽しみにしている人も多いですよ。
中尾 それはありがたいことです。中村総代をはじめ、地元の方々から親しみを持っていただいてこそ、お寺は成り立つものですから。
倉澤 地元とお寺の結びつきも、本当に大切だと思います。私も先輩方から、「昔、築地本願寺の法要では、佃島の人たちが大漁旗を持ってお参りに来ていた」と聞いたこともあります。こうしたエピソードを聞くと、築地という土地と本願寺が昔からとても近い存在だったということがわかります。
中尾 近年は、お寺と地域のつながりが薄れつつあるからこそ、今回の法要が地元の方々と交流するよい機会になればとも思います。
地元の協力があふれる、「手作り感」が魅力
――京都・西本願寺では、昨年慶讃法要が行われていました。築地本願寺で今回行われる法要とは、どのような違いがありますか。
中村 京都よりも、築地で行われる法要の方が身近な気がしますね。
倉澤 それは、きっと手作り感の違いでしょうか。今回の築地の法要では、SNSやYouTube配信、境内の舞台や階段を使った催しなど、委員会や築地の職員はもちろん、いろいろな人々が知恵を絞って生まれたアイデアが並びます。その結果、若い人たちも本願寺にお参りをしたくなる企画がたくさん生まれているので、ぜひ期待してほしいです。
中尾 あとは、地元の方々のご協力がとても心強いですね。
倉澤 本当にそうですね。築地は食の街ですが、地元の飲食関係者の方々が今回の法要でも出品してくださいます。ただ食べ物を参拝者の方に提供するならば、業者さんのキッチンカーにお願いするという手もありますが、それでは意味がありません。地元の方々が楽しんで協力してくださることに、意味があると思います。
親鸞聖人を知ることで、より浄土真宗が身近になる
中村 あと、個人的には、この法要を通じて、「親鸞聖人とはどんな人なのか」に興味を持つ人が増えてほしいです。先日、『親鸞聖人の一生 親鸞聖人御誕生八百五十年・立教開宗八百年慶讃』(著:今井雅晴)という御本を読ませていただきました。あれを読むと、聖人がどんな布教をしてきた方なのかが頭の中に入ってくるし、浄土真宗の理念や成り立ちが身近になります。
あの本を読みながら、私が思い出したのが、自身の幼少期についてです。まだ小さい頃、祖母から「今日はお説教があるから一緒に行くよ」と言われて、新潟県のお寺へ連れていかれたことがあるんです。そこで、住職さんが親鸞聖人の話をしてくださって、ぐっと親しみを抱きました。この法要は、親鸞聖人について知らない人へ、その存在を伝えるよい機会になると感じています。
――たしかに親鸞聖人をよく知らない方からすれば、「親鸞聖人のお誕生日を祝う、大きな法要がある」と言われても、よくわからない可能性もありますね。
中村 そうなんです。いくら「親鸞聖人の850回目のお誕生日を祝う、すごい法要が行われるんだよ」と言われても、ピンとこない人も多い。だから、地元の人にこの法要について伝えるときは、あえて「親鸞聖人のお誕生日がありますよ」とは伝えず、「4月の法要はにぎやかで楽しいみたいだから、行ってみようよ」と声をかけるようにしています。
倉澤 おっしゃる通りですね。楽しい場でなければ、わざわざみんな来てくれませんから。来る理由はなんであれ、関心を持ってもらうことや体験してもらうことが一番大切なのかなと感じます。法要中の様子を配信で見てもらうのもいいけれども、見るだけでは一過性で終わってしまう。「本願寺でお焼香した」「大きな法要に参加した」というリアルな経験が心に残るからこそ、そのご縁がその後もつながるのかなとも思いますね。
知らない人にこそ「なぜ祝うのか」を伝えたい
――築地の地元の方にお会いすると、「小さい頃、築地本願寺の境内でよく野球をした」「鳩小屋があったので、よく見に行っていた」などという思い出を嬉しそうに語る方が少なくありません。こうしたリアルな経験がベースとなって、お寺とのつながりを意識してくださる方も多いように思います。
倉澤 法要に来る理由については、深く考えすぎず「楽しそうだから」で構わないと思うんです。一方で、いらした際は、「なぜこれほど盛大にお誕生日を祝うのか」を考えてみてほしいとも思います。この世の中に、生まれてから850年も経過しているのに、いまだ誕生日を祝ってもらえる人って、なかなかいないと思うので。
中村 法要を通じて、「なぜ長年にわたって、親鸞聖人のお誕生日が祝われているのか」を伝えられたら、うれしいですね。
中尾 もし、それを契機に親鸞聖人や仏教への関心を抱いたなら、ぜひお寺に来てほしいです。そして、親鸞聖人のみ教えに触れることが、多くの方々にとって「今後、自分はどうやって生きていくのか」を考えるきっかけになってほしいと思います。
(司会進行/小野唯奈、撮影/谷口隆英)
中村 弘
1934(昭和9)年生まれ。鉄道車両部品などを扱う株式会社ナジコ( 旧・株式会社中村自工)相談役。築地本願寺責任役員・総代・奉讃会会長。築地生まれ、築地育ち。
倉澤 豊明
1957(昭和32)年生まれ。浄土真宗本願寺派・圓正寺住職。親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年築地本願寺慶讃法要委員会委員長。首都圏宗務特別開教区協議会委員長。
中尾 史峰
1951(昭和26)年生まれ。1976年龍谷大学文学部仏教学科真宗学専攻卒業。 1977年宗務所入所。本願寺執行を経て、2022年に 築地寺本願寺宗務長に就任。
詳細は、下記特設サイトよりご確認ください。