老いや病気、孤独。これ以上、年を重ねるのが怖い【仏教で答える悩み相談31】
人の数だけ、悩みは尽きぬもの。皆さまから寄せられた悩みに、お坊さんや仏教関係者たちが答えます。
今月のお悩み
Q 新年を迎えて「またひとつ歳を取るなぁ」と、複雑な気持ちになりました。独身で家族もいないので、孤独も怖いし、老化や死も怖い。老いが怖くなくなる方法はありますか?
(40代・女性)
A1
「凡夫」である自分をまずは受け入れよう
お釈迦さまは、老いと死を人間の抱える根本的苦悩とお感じになり、その解決の道を求められました。
門松は 冥途の旅の 一里塚 めでたくもあり めでたくもなし
一休禅師の句です。正月をみなでお祝いする中、一休さんならではの句です。
あなたが不安を感じられるのは当然ですし、大切なことだと思います。人生には己が努力で変えられるものと、変えられないものがあります。老いも死も変えられない自然の摂理です。それをそのまま受け止めることこそ、苦悩から解放される道です。
しかし、普通の人にはやはり受け止めることは困難なことです。変えられない事実を諦観できない者を親鸞聖人は凡夫と受け止め、懺悔されました。その凡夫を今そのままに受け止めて、お浄土に摂め取る阿弥陀如来の働きの中に生きることがお念仏の世界です。
阿弥陀如来のお心を受けて歩む人々を、親鸞聖人は「御同朋」と呼ばれておられます。そこに孤独を超えて行く道が自然と開かれます。
(編集委員・酒井淳昭)
A2
孤独は何とかできる
正直に申し上げて、老化や死を避けるのは不可能です。しかも毎年、1年が過ぎるのを早く感じるようになり、老化のスピードが上がるような気がするのは何とかならないものでしょうか。しかし孤独は何とかできそうですよね。
せっかくここにご相談を寄せていただいたのですから、築地本願寺に近くのお寺を紹介してもらい、そこに行ってみる、というのはいかがですか? 意外かも知れませんが、お寺って、いろんな行事や催しをしています。それらを一緒に作ってくださいませんか。
閉まっているように見えるお寺も多いですが、開いていますので、ぜひピンポンを鳴らしてみてください。将来このことを覚えておいていただいて、孤独を感じても「私に居場所はあるんだ」と安心して過ごしてください。
(本願寺新報記者・星 顕雄)
A3
「人生の楽しみ」に意識をシフトする
老いるということ、当然だと思っていても、なかなか受け入れられないですよね。ましてや死のこととなると余計にそうだと思います。
仏教をお開きくださったお釈迦さまが出家の契機となされたのも、その「生老病死」という苦悩でありました。人として避けて通ることのできない根源的な苦悩です。目を背けたくなる問題ですが、そこに悩まれているということ、悪いことではない気がします。
それだけ「限られた人生」を意識されているということですから。
怖くなくなる方法ではないかもしれませんが、残りの人生をどのように楽しむか、意識をシフトしてみるのはいかがでしょうか。今しかできないことがあるはずです。限られた人生を悔いなく豊かに過ごすことができれば、老いや死も自然と受け入れられるかもしれません。
(築地本願寺職員・北本一樹)
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※本記事は『築地本願寺新報』掲載の記事を転載したものです。本誌やバックナンバーをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。