年々ひどくなる猛暑による夏バテ~東洋医学的に解説します
今年の夏の暑さはひどいですね。
年々夏がしんどくなっていて、これからずっとこんな夏が続くなんて、ほんとうにうんざりします。
暑さが身体に与える影響を東洋医学的には4つに分類する
今回は、暑さが私達の身体に与える影響、つまり夏バテについて。
夏バテとひと言で言っても、その原因とメカニズムはさまざま。東洋医学の視点から4つに分類して考えてみました。
①抜け毛が増えることもある⁈血虚陰虚タイプ
暑いと汗をかきますね。
東洋医学では、汗は血から出来ている、と考えます。
そのため、汗をかけばかくほど、血虚(貧血)となってしまう。
そうすると口や眼が乾くなどはもちろんのこと、夏になって抜け毛が増えた、などという症状を訴える方もいらっしゃいます。
東洋医学的には髪は血から出来ていると考えるので、夏の抜け毛は汗のかきすぎによる血虚が原因、と言う側面があるわけです。
血虚陰虚になりやすいのは、もともと身体が弱っている人や、体力があっても、熱がこもってそのせいで血を消耗していた人、そして私のように更年期以降で身体が乾燥傾向にある年代の女性に多いといわれています。
②気が足りない気虚タイプ
暑さは東洋医学的には「暑邪」とされます。
これは、邪気の一種で、気を消耗するとされていて、そのため気が足りなくなって「気虚」となるわけです。
これは、前述の血虚とも関連してきます。血は気の乗り物とされ、血がなくなると、乗り物が無くなった気も居場所がなくなり気虚となる。
血虚と気虚は影響を与えあい、同時に起こるのです。
暑邪そのものが気を消耗し、また汗をかくことで血が消耗し、それによってさらに気を消耗していく。
気虚の症状としては、だるさや無気力、消化機能の衰えや息切れ動悸などがあります。もともと身体が弱っていた方がなりやすい症状です。
③元気な方に多い熱による症状
前述の「血虚」と「気虚」がエネルギーが衰えてしまった病理なのに対し、エネルギーがある方に出やすい症状というのもあります。それが、熱がこもって症状が起こる「実」の病理です。
どちらかというと、体力があり、元気な人がなりやすい状態です。
また、もともと熱がこもっている方の場合、暑い夏はさらに熱がこもり、このような状態になってしまっている方が多い印象です。
症状としては、睡眠障害やブレインフォグのような頭がボーッとする症状、イライラや気分の落ち込み、めまいなど。
また胃腸症状が起こることもあります。
これは、熱は上に向かう性質があるため、気も上に突き上げます。一方、食べ物は食道を通って肛門へと下に向かっていきます。双方のベクトルが逆のため、上昇する熱のベクトルが食べ物を消化する下方へのベクトルを遮ってしまうのです。結果として、食欲がない、胃がもたれやすい、便秘などの症状が起こります。
また、炎症性の症状も起こりやすく、胃腸炎や皮膚の炎症、アトピーの悪化などもよく見られます。
④冷房による「寒邪」も
4つ目は、暑さではなく、冷房が原因となる不調について。
西洋医学的には、冷房による急激な気温の変化が自律神経を失調させる、と説明しています。
一方、東洋医学的には症状や原因別に以下のように3つ程度に分けて考えます。
・体表が冷気によって蓋をされて逆に熱がこもってしまい、③の熱による症状が強く出てしまう。
・寒さ、つまり「寒邪」は気滞の原因となります。もともと気滞がある人は冷房の冷えにより気滞が酷くなり、肩こりや頭痛、生理痛なども出て来てしまいます。
・②の気虚、つまり暑さで気が不足している場合、冷房で冷やしすぎると、今度は陽虚に進んでしまう場合も。そうなると、気虚の症状に加え、下痢や食欲不振が酷くなったり、頻尿、または浮腫、身体の冷えや寒気なども出て来てしまうでしょう。
4つの複合型夏バテのケースも
上記の4つが複合的に重なって夏バテになっている人も多いです。
胃は冷えているのに熱がこもって胸がざわざわする。熱で火照るし皮膚も痒いのにお小水が出なくてどんどん浮腫んでくる、など。
▼「冷え」や「寒邪」についての解説はこちら▼
補ってバランスをとる施術が有用
以上、暑さが身体に与える影響、つまり夏バテを4分類に分類してみました。
以上のような夏バテに対して鍼灸院でできるのは、必要な臓腑を補う施術をしながら、熱や緊張を取っていくこと。かんたんに言うと、全身の流れを整えて、バランスが取れるように調整します。
養生法は運動と睡眠!
施術後、よく聞かれるのは「夏バテにならない養生法は何ですか?」という質問です。
答えは、運動と睡眠。これにつきます。
夏だけでなく、運動を習慣化して体力をつけること。運動を習慣的にすることで、筋肉が付きます。筋肉は、西洋医学的には水(血)をため込みますから、①の血虚陰虚にもなりにくくなります。
また運動は気のめぐりをよくするため、熱もこもりにくくなります。これが③も予防してくれます。
そして、ちゃんと睡眠をとること。これは①②気虚と血虚両方を予防してくれます。
安眠のために冷房を上手く使うことも重要です。温暖化を加速していると思われるクーラーに疑問は感じますが、つかわないと命の危険があります。
自分に合う設定温度を探し、扇風機なども使いながら、しっかり寝ましょう。タイマーを設定して暑くなって目が覚めたらまた付ける、という使い方をしている人も多いのですが、付けっぱなしにして中途覚醒を少なくした方が、身体には良いと思います。
鍼灸師の私達が実践している夏の養生法
最後に春宵堂の鍼灸師2人が日々実践している養生法を少しご紹介します。
私は、体力が比較的無く、暑邪により気虚血虚になりやすいため、夏は3ヶ月だけジムに入会し、他の季節は外でジョギングや筋トレをしています。
食べ物はなるべく温かいものを取り入れつつ、冷たいものも食べる。冷たいものだけになると、下痢になったり胃もたれや全身のだるさが出てしまうためです。
もう一人の中村鍼灸師は、かなり体力があるため、夏も昼間からジョギング。そして朝から晩まで冷たい飲み物をごくごく飲みます。
もともと熱体質なので、冷えすぎることが無いのです。冷たい食べ物飲み物で身体の具合が悪くなったことは一度もありません。
夏バテの原因が分からないなら鍼灸院へ
体質によって健康法はさまざま。
夏バテ防止の情報はネットなどにあふれていますが、情報を鵜呑みにせず、自分はどんな体質でどんなことをすれば良いのかは、自分の身体の声に耳を傾けてみるのが一番です。
とはいえ、原因が分からない不調がずっとあるけど、どこに行っても原因が分らず、対策もしようがない、という方もいらっしゃると思います。
そういう場合は、症状の緩和だけでなく、自分の体質を探るために、当院のような東洋医学系の治療院の門を叩いてみるのも一つの方法です。自分の体質を知って何が出来るか学ぶことは、貯筋と同じく生涯の財産になるはずです。一度ぜひ近所の鍼灸治療院を訪れてみてください。調布など京王線沿線の方は、春宵堂治療院へお越しください。
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西洋医学では原因が分からない不調を得意としています。