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趣味の読書006_FACTFULNESS(ハンス・ロスリングほか)

ちょっと前にだいぶ流行って、書店にもだいぶ平積みされていた印象の本で、図書館で予約件数が少なかったのでさっと借りて読んでみた。奥付を確認して予約件数が少ない理由を理解したが、日本語訳版の出版は2019年。もう5年前かよ。ちなみに、図書館の本は2020年1月のもので、出版1年後で21刷。全世界100万部超らしいし、バカ売れした本なのは間違いないだろう。 筆頭著者であるハンス・ロスリングは、本著の出版の前に亡くなられてしまったのが惜しまれる。 内容についての評価は、色んなところ

    • 趣味の読書005_柔らかい個人主義の誕生(山崎正和)

      もともとは1980年代出版の、ほぼ古典化しているが、2016年時点で16刷まで出版されている名著の、増補新版である。著者は美学芸術がメインの評論家兼劇作家で、もう亡くなっている。40年前の名著とされていたのだが、今まで読んだことがなかった。結論的には、今の時代で読んで良かった、と思った。最初の「おんりい・いえすたでい 70's」だけだけど。 全体の構成で言うと、1983年の時点で1970年代を振り返った「おんりい・いえすたでい 70's」(このタイトル自体に猛烈に時代を感じ

      • 趣味のデータ分析088_出生率減少の原因は何か?⑤_小括

        084から087までの4回で、TFRがどのように推移してきたか、その要因が何かについて、分析してきた。今回は小括として、これまでの議論の整理(+ちょっとだけ追加分析)を行う。 期間TFRの分解期間TFRの長期推移は、大きく4段階に分かれる。戦前まで4.0を超える程度であった期間TFRは、1960年までに2.0まで下落、1974年までほぼ横ばいとなっていた(第1段階)。1975年から、期間TFRは2005年頃まで、2.0から1.26まで30年をかけて、ほぼ一貫した下落を見せる

        • 趣味のデータ分析087_出生率減少の原因は何か?④_コーホートTFRの推移

          前回は、期間TFRを職業別、学歴別に分析し、特に2015年以降、無職女性のTFRが減少していることを確認した。ただ、期間TFRについては、正直これ以上他の角度での分析をするのは、難しいと思われる。 というわけで今回は少し見方を変えて、コーホートTFRの分析を行いたい。コーホートTFRは、ある歳に生まれた女性の出生率を、各歳ごとに足し合わせたもので、「ある世代の女性が何人女性を産んだか」を示す指標である。期間TFRよりも、端的に特定の世代の出生率を表している点では優秀な指標と

        趣味の読書006_FACTFULNESS(ハンス・ロスリングほか)

          趣味の読書004_Science Fictions(スチュアート・リッチー)

          タイトルからはもうちょっとポップな本かと思ったら、相当硬派かつ中身の濃い、「科学」の歪みを暴く本だった。主題はそのままだが、副題は原題のとおり、「科学における詐欺、バイアス、過失、誇張」でも良かったんじゃないかと思う。ともあれ、バチクソに面白い。 https://www.diamond.co.jp/book/9784478113400.html 科学――社会科学はあまりリーチになっておらず、心理学等の認知科学系が主な対象である――の分析から公表に至るプロセスの中に、大衆を

          趣味の読書004_Science Fictions(スチュアート・リッチー)

          趣味のデータ分析086_出生率減少の原因は何か?③_職歴と学歴

          ここ2回で、出生率の現象の原因を確認してきた。そこで、 ・特に1975年~2005年までの出生率の減少は、30歳未満の有配偶率が減少した影響による押し下げの影響が大きい、 ・2005~2015年までの期間TFRの上昇は、有配偶率は横ばいだが有配偶出生率が上昇したため、 ・2015年以降は有配偶率は横ばいだが有配偶出生率が減少し、期間TFRが再度減少し始めた ということが判明した。 そのうえで、特に2015年以降の有配偶出生率の減少が何に起因しているか、またどの層(夫婦)が子

          趣味のデータ分析086_出生率減少の原因は何か?③_職歴と学歴

          趣味のデータ分析085_出生率減少の原因は何か?②_2016年以降の謎

          前回084では、期間TFRの推移と要因分解を行った。結果、期間TFRの1975年以降の変化(減少)の理由は、特に30歳未満の有配偶率が減少した影響が大きいこと、他方有配偶出生率はプラス寄与、つまり「結婚した人が子どもを産む割合」は、1975年以降(概ね)増加していることが判明した。有配偶率出生率のプラスは、有配偶率のマイナスを打ち消すには到底足りないが、それでもプラス寄与している、ということ自体は興味深い。 なお、もう一つ推測できたこととして、上記の傾向は2015年までで打ち

          趣味のデータ分析085_出生率減少の原因は何か?②_2016年以降の謎

          趣味の読書003_あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠(キャシー・オニール)と測りすぎ(ジェリー・Z・ミュラー)

          同じテーマを似たような感じで斬っている本を、2冊連チャンで読んだので、2つ一緒に読書感想文を書いてみよう。前者(以下、Math Destruction)は元の"Weapon of Math Destruction"という名前のほうがカッコいい。日本語訳では「数学破壊兵器」という直訳になっていて、"Mass"のニュアンスが落ちているのが、ちょっと残念。 両方とも主にアメリカの、データ計測が社会にもたらした歪みを、具体例を交えつつ描いている。Math Destructionのほ

          趣味の読書003_あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠(キャシー・オニール)と測りすぎ(ジェリー・Z・ミュラー)

          趣味のデータ分析084_出生率減少の原因は何か?①_期間TFRの要因分解

          ※長くなりそうなのでテーマを分けた。 出産、婚姻、所得の相関関係を見るという名目で、しばらくいくつかのデータをみてきたが、相関関係は「いつから」というのが重要である。仮に若者の所得(の減少)と、出生率や婚姻率の減少≒期間合計特殊出生率(期間TFR)の減少が相関しているなら、それは前者と後者の影響の程度と起点が、ある程度揃っていないといけない。 というわけで、今回は、TFRの減少の要因を確認したい。 前回、子ども3人がほしいなら20代での出産が望ましい可能性があるが、35歳

          趣味のデータ分析084_出生率減少の原因は何か?①_期間TFRの要因分解

          趣味のデータ分析083_金があれば子どもを産むか?④_若い母は子沢山か?

          080~082まで、所得と子ども数の関係について整理してきた。今回は、主に女性側の年齢と子ども数について確認したい。子どもを多く生む女性は、若い頃から出産を経験しているのだろうか?つまり、出生率の向上には、若い女性の出産が重要なのだろうか? 母の年齢と子ども数子どもを多く生むには、特に女性において、第一子を早く産まねばならない。妊娠期間が1年弱あり、産後の肥立ちが軽いわけではない(対他の哺乳類比)人類が、限られた妊娠可能期間中に多くの子どもを出産するには、出産年齢が早い必要

          趣味のデータ分析083_金があれば子どもを産むか?④_若い母は子沢山か?

          趣味のデータ分析082_金があれば子どもを産むか?③_金の問題じゃない(かも)

          081では、夫婦の理想の子供数、予定子供数の推移についてデータを確認した。結果、以下のことがわかった。 ・理想子供数はやや漸減しているが、予定子供数との差は縮小している(理想と予定が合致していっている) ・予定子供数を持てないと感じている女性の割合は不変 ・理想子供数の構成比は、34歳以下は2人~3人で全期間で概ね変わらないが、35歳以上では3人から2人に減少している。 ・予定子供数の構成比は、34歳以下でも35歳以上でも変わらない。 グラフとしては以下のようになっていた(

          趣味のデータ分析082_金があれば子どもを産むか?③_金の問題じゃない(かも)

          趣味の旅行001_アーメダバード(2023年3月)

          写真の供養がてら、旅行のメモでも残しておこうと思う。今回は旅行じゃないけど。実際は、2022年にアーグラに行った際の写真から残っているのだが、この際に行ったフルムーン・タージ・マハルの写真が、ちょうど残っていないので、いまいちパンチがない。まあ、それ自体は結構つまんなかった。タージ・マハルを遠目に見れるところまでは行けるのだが、本当に目の前までは行けなかったし、何より天気が悪かった。一応月とタージ・マハルの合わせ技は見れたし、タージ・マハルが、夜に赤っぽく浮かび上がる雰囲気は

          趣味の旅行001_アーメダバード(2023年3月)

          趣味の読書002_山椒魚戦争(カレル・チャペック)

          チェコのSF作家で、ロボットという言葉を生み出したことで有名な、カレル・チャペックの代表作の一つ、「山椒魚戦争」。原著は第二次大戦直前の1936年で、1978年に現行の日本語訳が出版、私が借りて読んだ本は、1998年出版の早川書房のものと、まあ大概年季が入っている。 すでに早川書房でも絶版なのか、オンラインでちゃっと調べた限りは、早川書房版の前の岩波文庫版、さらに言えば、グーテンベルク21の翻訳版のほうが入手しやすそうだ。グーテンベルク21は、翻訳が更に古いバージョンだし、そ

          趣味の読書002_山椒魚戦争(カレル・チャペック)

          趣味のデータ分析081_金があれば子どもを産むか?②_子どもの予定は変わってない

          080で、婚姻、出産と所得の関係の関係を、既存データで概観してみた。そこでは、既婚者については、子どもの数と所得には明確な関係はない、具体的には、子どもが1人でも3人でも、所得には変わりがないことが分かった。また、未婚者の少なくない割合が、結婚の障害や独身である理由に資金面を挙げていることも分かったが、それは1990年代前後からの継続的な事象であり、足元でそうした理由を挙げる者の割合の増加傾向等は窺われなかった。 今回は引き続き、既婚者が子どもを持つ判断において、資金面がどの

          趣味のデータ分析081_金があれば子どもを産むか?②_子どもの予定は変わってない

          趣味の読書001_百年の孤独(ガルシア・マルケス)

          百年の孤独が文庫化された。正直なんで今更?という感じだが、「文庫化すると世界が滅ぶ」とか言われていたらしい。絶対Xでネタにしていた人がごく少数いただけだと思うけど。 まあ、今更百年の孤独の内容についてくだくだ書くことはない。日本語では、焼酎の名前で検索が非常にやりにくい(ちなみにガルシア・マルケスも、同名のファッションブランドがあって、昔は検索がやりにくかった)という問題はあるのだが、英語でもスペイン語でも解説は腐るほどあるし、日本語でも、下記のようなわかりやすい解説はいく

          趣味の読書001_百年の孤独(ガルシア・マルケス)

          趣味のデータ分析080_金があれば子どもを産むか?①_結婚の障害は金(昔から)

          これまで出生率や子どもを持つこと、結婚することへの考え方など、色々分析してきた。そのなかで、一番の問題意識は「お金と子どもを持つことの関係」であった。例えば041、042、043では、その前段として、結婚と出産の関係について分析したりした。問題意識の詳細についても、042の前段でうだうだと書いている。 まあその後関心の変遷等もあって、「お金と子どもを持つことの関係」についてはあまり取り扱ってこなかったが、そろそろ一度、真面目にデータを揃えてみてみたい。ここ数十年の出生率や婚姻

          趣味のデータ分析080_金があれば子どもを産むか?①_結婚の障害は金(昔から)