見出し画像

【読書感想文】 椿姫

デュマ・フィス著 永田千奈訳
光文社の古典新訳文庫です。

パリの社交界で金持ちの貴族を相手に奔放な日々を送る美貌の高級娼婦マルグリット。彼女はある日、青年アルマンと出会う。初めて真実の愛に目覚めた彼女は、これまでの享楽的な生活を捨て、パリ近郊の別荘で二人は暮らし始め
るのだが、そこへ訪ねてきたのはアルマンの父だった・・・・・・。

本書 うらすじより。

「高級娼婦」として生きるということ。
貧くとも、女性であることで囲われ貢がれ、男性の品位に添うことで生計を委ね、身も心も捧げる職業。そこには金や目くばせや言葉の駆け引きがあり、割り切った大人の立ち居振る舞いがある。

マルグリットには、公爵がおり、N伯爵もおり。
若きアルマンには高級娼婦を囲う財力もなく、けれども、彼には、金や虚栄心や自尊心からではない無垢な愛情があった。

ゆえに、高級娼婦なマルグリットの私生活を思うと、強烈な嫉妬が湧き起こる。24歳の若きアルマンだ。


かつて私が嫉妬に苛まれ、その相手に、じゃああなたはヤキモチや嫉妬はしないの?と問うと、

嫉妬?したくないし、しない。だって辛いもの」

と返されたことがある。
嫉妬は辛い。なにより嫉妬している自分自身を扱うことが難しいのだ。コントロールを失い、嫉妬に苛まれた自分は、普段の自分ではなくなり、こんなにも黒く、こんなにも心が狭く、意地悪な人間だったのかと思うほど、狂う。
私は嫉妬心から、暴言を吐きながら壁を蹴り、その壁についた足跡を数日後に見て、自分の嫉妬心の怖さを知ったことがある。サッカーも空手もキックボクシングもやってこなかった人生なのに。

アルマンがマルグリットを思う姿、そして、なにより「高級娼婦」なマルグリットが本気で人を愛していく様子に、陶然としてしまう。

このまま静かに二人きりつましく…。

わずか半年の夢の暮らし。

情熱的な恋のあと。


人の人生というのは長いようで短くて、本当に心から愛せる人というのは、そうそういないのだと思う。ましてや、その相思相愛が続くのは、ともすると、ほんのひとときなのかもしれない。
生きる理由になるほどの相手。


ただ、生涯でそこまで愛せる人と出会えたことというのは、やっぱり小説にしておくべきだよ。
デュマ・フィス!
実話に基づいているんでしょう?
書いておいてくれてよかった。


長女のフランス文学の授業での課題本だったそうで、「読んでみてー」と置いていってた本。
「嵐が丘」とか「マディソン郡の橋」とか、その辺を読み漁っていた頃を思い出すくらい、ぐわっと読んだ。



白椿を見たら思いだす。

片時も離れたくないと思うほど、
自分よりも大切に思う人のことを。


いいなと思ったら応援しよう!