藤本 柊
とある家族の木曜日の朝を、もっさんもっさんの寝ぐせ頭でおとどけします。ふらりとのぞいてみてください☕️
図書館で、あるいは本屋さんで出会った本たちとの時間をエッセイ風に。ジャンルはさまざま、その時の興味や関心に、素直に手に取り、呼応する自分の声を綴ります。
お互い名前と住所しか知らない、文通相手。 「楠木歩様へ 藤本柊より」 消印は木曜日。
度々の旅行記。
りょうこさん(山川りょうこ 30歳)と、自称「プロのヒモ」かおるくん(岸 薫)との恋のおはなし。 「好きな人」と一緒にいたいだけ。 #LGBT #同性婚 #パートナーシップ宣誓制度 #恋愛小説
《875文字》 FUJIFILMのミラーレスを空に向けて、染まっていくマジックアワーの空を撮る。 ファインダーを覗く私の頬を、生温かな一筋がつたって落ちる。 あの人の好きな色は青色だった。 私の好きな色は赤色だと言うと、あの人は 「混ぜたら綺麗な色になるね、ほら、マジックアワーの空みたいな。」 と、優しいこと言ってくれた。 あの人の言葉が好きだった。 夢中になって撮る写真は、いつの間にか、あの人にも見せたい景色や花や鳥ばかりになって
暮れゆく空に 浮かぶ三日月 舟ゆらり 「寝転んだら気持ちよさそうだね」 そう言って優しさを集めて微笑んだ 一緒に、 とは添えず また
「おはようございます。」 さむっ。モソモソと起きて、まだ外は暗くて。 最近なかなか起きられない次女を起こしに半目で階段をのぼっていくと、三女が起きてきて、猫もケージから出してもらう。 「おーい、遅れるよー」 階下でくつ下を履く。 足もとから冷えてきますからね。 白湯にレモンをちょろんと入れて、一口すすると思わず「っあ〜」と声が出て、胃の中まであったまってくる。卵を二つ、白だしでちゃかちゃかと混ぜる。 近所の同級生のお母さんが送ってくれるというから、三女の今朝は優雅で
「なにしとんねんっ 笑笑」 心地よい関西弁の軽快なツッコミ! キタッ! あのうりもさんのツッコミを、自らにうける夜がとうとう来た。軽快かつ鋭く、でもなぜだかあたたかくまろやかな、あのツッコミを、ついに…。 📻♪ 私がスタエフという音声配信を知ったのは、以前noteで素敵な文章を綴られる方の音声配信にゲスト出演させていただいたときで、短い時間だったけれど、それまで文章でしか知らない方とのおしゃべりがとても楽しくて。それから、仲良くしていただいている
天気の良い日曜日の昼下がりに、三女と近くのドラッグストアへ歩いて買い物へいきました。 ポケットには、スマホと小銭入れとカナビラでつないだコンパクトなマイバック(パーマン*の変身セットみたいに小さくなるやつ)。 手の甲と首に日焼け止めを塗り、三女はUVカットのメガネをかけて、脇の林道をおりていく。 「歩くときさー、こうやって手ぇ振るじゃん、それを“兵隊かっ”てツッコまれる〜」 「こんなん?」 「手と足一緒や!それ、卒業式やん 笑笑」 「カクーンて角まがるやつ 笑笑」
『明け方の若者たち』の著者、カツセマサヒコさんの小説集です。 海の街での、七つのストーリー。小学生や、高校生、女性や男性、親子や親友。彼らの近くには海があり、そして彼らは「海」である。 私は、海無し県に育ち、近くに海のある暮らしというのをしたことがない。けれども、いろんなところへ旅行へ行くと、そこには必ずと言っていいほど海があった。 道路沿いに海が見えてくると、「わぁ!海ー!」と叫んでしまうほどテンションがあがる。キラキラと太陽を反射して、それはそれは大きくて、平らに広
私の上で、胸を反らせ、リズミカルに跳ねる彼女の背中を支えるように手をまわす。 突き出て固くなった片方を口に含み、舌で転がすと、彼女は、自分の手の甲を齧りながら顔を逸らせ、漏れる吐息を抑えようとする。 もっとだ。甘噛み、撫で上げる。 彼女は溢れながら締めつけ、もう片方を自らの手で掴み、いっそう激しく跳ねはじめる。 腰を抱き、突き上げると、とうとう啼いた。 そう、この声。 慌てて私は、赤い録音ボタンを押す。 奏でさせる、自由に、もっとこの啼声を───。
「おはようございます。」 アラームが鳴って、片目を開けて、スヌーズを押した。うっすら覚醒していくうちに 「あ、だめだ、お弁当…」 と起きていく。 洗面所の三女に 「おはよー」 と言いながら、二階にあがって、次女を起こす。 「おーい、遅れるよー?」 もっさんもっさんの寝ぐせ頭で、白湯を入れ、ちょろんとレモンを垂らし、ズズッと啜る。 卵を二つ、白だしをきらしているから、麺つゆをたらし、チャカチャカとまぜているうちに、大荷物の次女がドタバタと起きてくる。 「おはよー」 「
登山にでも行くのか?くらいの重たいリュックを足の間にドスンと置いて、助手席でシートベルトを締める。カチャリ。 真っ黒ではない程度に染めたショートボブな姉は、運転席と助手席の間に仕事用カバンを置き、ハァーっとため息をつきながら発車する。 カーステレオからは、姉の好きな洋楽。メイヤやブリトニースピアーズやカーディガンズやが流れて、英文科卒の彼女はときおき口ずさみながら。 くねくねと山道をおり、大きな国道へ出て、二つ目の信号あたりにひっかかると、姉はカバンをガサゴソとして、マル
貴重な、なんの予定のない休日をまるごと、これといった生産性のない事柄に使う、というのは、結局はこどものころの日曜日みたいな感じで、それってば実は、めちゃくちゃ贅沢で幸せなことかもしれないよね。 ええ、そうです。朝から、着替えだけをすませ、メイクなんかは端折って。仕事でもないのにやりはじめたわけです。 あー。。 TVerでドラマもかけてたし、Netflixでハリーポッターさえかけてしまうほど、一日を費やして。 なんなら、料理のできない夫がまたカレーを作ってくれたりするくら
幻とは。 手に入らぬこと 岐阜飛騨古川の原酒。この時期限定の味、おいしゅうございました。おでん食べたいです🍢
茶色のセーターを出した。 何年か前に、駅前に若い人がセレクトショップみたいにオープンしたお店で買ったもの。店の入口には等身大のベティーちゃんがたっているお店。 茶色が本当に絵の具の茶色で、襟ぐりは前後ろも関係なく着れますよっていうくり方で。袖がまたふっくらたっぷりしていて、生地自体はさほど重くないのに、シルエットがだぼんとなるのがとても気に入っている。 児童書に出てくる天パの少年が着ていそうな、とでも言えば、本の虫の方たちには意外にスルッとイメージわくのかもしれない。長靴
私は金麦を100均で買ったビアジョッキにつぎたして、くぃーっと飲んで。 夫は、えのきとワカメのポン酢和えをつつきながら、 「で、どうだった?草刈りは」 と、今日の団地の秋の草刈りについて問うた。 「もぅ大変だったよ、草っていうよりさー、ツタ?ツル?なんかすごいはりめぐらされてるじゃん、あの広場んとこ。」 「あー。」 「で、木の上とか高いとこはさ、あの中国人の家の、背の高い旦那さん、あの人がやってくれて。」 「あー、加藤さん家の隣の?」 「そー。ってか、加藤さんとこ奥
〜 入り口には「オススメ 本日のランチメニュー」が立てかけた黒板に書いてあって、そこには「特製チーズハンバーグプレート」とあるのを見るともなく見て、これでいいなーと私は即決していたけれど。 久しぶりに女子四人でのランチ。相変わらずオーダー前にあれもいいな、これも食べたいと悩んで決められないのは、ユカちゃんとハルカで。 案外あっさりと、 「私、おろしハンバーグにするー!」となるのはヨウちゃんで、私も、 「オススメのチーズハンバーグにしよっと」 と、やっぱりお店のオススメに従
首元がすーっと寒くて、肩をぐっと上げて、袖に手をしまいこんで、お腹に力を入れて。 「富士山頂で初冠雪が観測されました」 とラジオから聴こえて、どおりで、と思う。 鼻が冷たいもの。 入れ替わり立ち替わり取引先の対応をして、ついていたラジオからは聞き慣れた地名と聞いたことのある声がよそいきみたいな口調で聞こえた。 ん?ヒロさん(仮)? 「…そうなんです、500種類以上はありまして…すべて手作業で…えぇ、ハッハッハ!ありがとうございます、えぇ、コレクターの方もいらして…
歩さん。 会えて嬉しかったです。 そういうつもり、なくても。 本、大切にします。 歩さんと会うための理由など「会いたい」しかないのに、それでは何の説明にもならなくて。歩さんから謎の水を買うとか、そんななら簡単な理由で会えるのに、なんて。馬鹿げてますね。 私は過去にも、人を好きになって、そして今の生活を守るためにやっぱり諦めて、もう恋愛はしないと思っていて。それでも、人への興味を抑えられず、こうして近づいてしまって。きっとこれ以上はやめた方がいいと、踏み止まるならここだと