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宝石箱の中の夜景
夕暮れ時のわずかな光が残る中、ウサギとカメは中目黒駅に降り立った。街は人々で溢れ、その喧騒がすぐに彼らを包み込んだ。二人はその雑踏を抜け出し、目黒川沿いの静かな道を選んだ。川の流れはゆったりとしており、水面には夕日がきらめいていた。
目黒川に別れを告げ、二人は新茶屋坂通りの坂をゆっくりと登り始めた。連なる街灯の光を頼りに進んでいくと、やがて彼らの前に恵比寿ガーデンプレイスタワーの姿が現れた。タワーは夕焼けに照らされ、一層壮美であり、二人は思わず足を止めて見上げた。
「キラキラ輝く夜景が見たいの」と、ウサギが図書館で口にした時、カメが選んだのはこの場所だった。「どうしてそこなの?」とウサギが疑問を投げかけると、カメは「行ってみればわかるよ」とだけ答えた。
ガーデンプレイスに到着すると、夕映えに染まるエントランスパビリオンが目に飛び込んできた。ディナータイムが始まっているレストランからはジャズの生演奏が漏れ聞こえ、夜の到来を告げていた。
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ウサギはそっとカメを振り返った。「どうしてここを選んだのかわかったわ。展望台に上がる前に、地上で夜景を楽しむことができるのね」その言葉に、隣にいるカメは優しく微笑んだ。
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二人はゆっくりと『SKY TOP of YEBISU』へと続くエレベーターに乗り込んだ。38階で降りレストランフロアを抜けると、スカイラウンジへと一歩一歩足を進めた。まるで空へと続くような階段を上がると、窓の外の夜景が二人をそっと包み込んだ。
窓に走り寄って、息を呑むウサギの横でカメが囁いた。「ここは周りに高い建物がないから、夜景が宝石箱のように見えるんだ」
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そのあとはもう、二人の間に言葉は要らなかった…。