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100かいだてのいえ

図書館の一角で、ウサギはじっと大きな絵本を見つめていた。それは特に目を引く、縦が116センチもある長い一冊だった。

「この『100かいだてのいえ』、大きなサイズで読むと迫力がすごいの」彼女は両手に力を込めて、その本を持ち上げた。

そのとき、カメが偶然近くを通りかかった。 「その100かいだての世界に行ってみない?」カメは微笑みながら彼女に声をかけた。

ウサギが頷くと、二人は図書館を後にして駅へ向かった。恵比寿駅で電車を降り、そのまま東京都写真美術館へ足を向けた。

「見て!本当に階段が続いて見えるわ」
ウサギは展示物に駆け寄り、声を弾ませた。「覗き込んでいると落ちてしまいそうね」

「これは、100かいだてシリーズの原画ね。どの絵本も上の階が気になって、途中でやめるなんてできないのよね」

100かいだてのいえシリーズ

「作者の岩井さんって、ただの絵本作家じゃないんだね。日本を代表するメディアアーティストだとは知らなかったよ」映像のコーナーを歩きながら、カメは静かに言った。

立体ゾートロープ

「こうして見ていると、映像って面白いわ。これを回転させると、アニメみたいに動いて見えるのよ」ウサギは驚いてカメの方を振り向いた。

回転させると走り出す

「これもなんだか不思議だわ。トラックボールを転がして画面にドットを打ち込むと、それがカラフルな光に変わって、ピアノの音が響くの」ウサギは思わず声を弾ませた。

「映像装置としてのピアノ」

「これは今のテクノロジーだね。スクリーンとピアノが連動しているんだ」カメは不思議そうにピアノとスクリーンを交互に見つめた。

「でも、僕がいちばん驚いたのはこれかな」と、カメが一冊のノートを指さした。

「岩井さんは小学四年生の頃から、このノートに自分のアイデアを細かく書いているんだ。仕組みの図面や材料までね」

「情熱を注ぎ続けた結果が、いろんな作品につながったのね。私たちも頑張らなきゃ」ウサギはふっと息をついて微笑んだ。

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