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日常のゴミ出しという繰り返しがとんだ日-すずころ日和 余白と草と私と子-


ゴミ出しの日。
「もう入れる物ないかな?」との余白を埋めようと探す自分がいる。
家の中には「早くお散歩いこう」とキュンキュンいう黒柴すずと朝のお腹の調子を整えタイムの上の子がまだいる。

庭に目をやり、ああ。と思いついた。

すずにリードをつけ、庭に出す。彼女は脱走防止のためリードを扉に繋ぐ。彼女の良いところは「散歩!」という要求が、別の楽しみと切り替えがきくところだ。
庭に出たことで、土のにおいと草を嗅ぐことにもう夢中だ。

草をひこう。

ゴミ袋の余白を埋める。
草はなくなり庭が綺麗になる。
外にでたのですずの機嫌はよくなる。
待ち時間も有効に使える。
外で待つことで子どももソファではなく素直にでてくる(ハズ)。

我ながら一石何鳥だろうか。

少し湿った庭の草は気持ちよくスッポと抜ける。家の前、横、後ろと最初に比較的大きく伸びたものを先に抜いていくのがポイントだ。
「ぱっと見きれい」
これが大事。細部まで行き届く美を、再現しようとしてはいけない。

家の裏には黄色い花をつけた草が20センチほどいくつか育っていた。
たんぽぽのような緑の葉は、たんぽぽに似ずスポンと抜けた。素直な草は好きだ。

スポンの爽快に気をよくして家の表に戻ると、上の子がいた。
ランドセルを背負って機嫌よくすずと話している姿に正直ホッとする。
「すずちゃんがね、草ひき手伝っていたよ。えらいねえ」
モチャモチャと口を動かしている黒柴すず。

最近草を食べるのだが、お腹の調子もいいのでほっている。先代タローは草は食べなかった。
女子ならではの「ちょっと欲しい」なのだろうか。
なんにせよ、田畑は春夏の準備を農家さんがし始めているので農薬の時期でもある。散歩の時は気をつけなくては。

10分ほどの草ひき。
ぱっと見きれいな庭となり、ゴミ袋の余白はいい感じのボリュームの草で埋まる。
私の「今日も学校は行けないのだろうか」の小さなモヤも一緒にゴミ袋に入った。

まだ口を動かしているすずと子と家をでる。
お腹はちょっとスッキリしないけど〜と言いながら、機嫌よく歩く子。
2人と一匹の朝のお散歩。10分程の時間。

途中交通量の多い交差点までのお見送り。
最後の登校班が200m先ほどにまだ見えた。
「ああ、よかった。じゃあ行ってくるね」
元気に青信号を渡りきる子を見送って、一人と一匹になる散歩。


今週の火曜日。「お腹が痛い」という彼女にイライラしてしまった。
月曜日にぐずぐず言いながらも登校し帰ってくると「楽しかった」と学校での出来事を饒舌に話していたのに。
「行くと学校もいいな、と思うんだよね」そう言っていたのに。

1週間通していけない、2月から続くこのサイクル。先週は3回休んだ。

「あなたがズル休みでないことはお父さんもお母さんもわかっている。心が疲れているんだよね。大丈夫。」
こう彼女に話したことは、嘘ではない。

なのに。
イライラしてしまった、私。

火曜日は、今まで避けていた下の子の前で話をした。
「熱はないけど、いけないほどしんどいの?」
ソファで下を向いてクッションを抱く上の子。制服を着て行く準備ができている下の子はじっとそばで聞いていた。
動かない上の子。「遅刻してはダメだから」と諦めて下の子を車で送る。
夫が熱で休んでおり、彼も「しんどいの?」と話しかけているのが後ろで聞こえた。


火曜日は、初めてほぼ話しをせずに日中過ごした。

「お母さんもあなたの全てを受け止めてあげられるほど、強くない」
そう言おうかと思った。
学校に行く、行かない。それが全てじゃない。元気に生きて欲しい。それが根底で絶対なのに。

自分の中の矛盾と葛藤。
「私の期待と違う行動をする子にイライラするのは、私の問題。この感情は否定しないけれど、それの原因を子にぶつけるのは違う」

彼女は私といつも話してくれる。
心をゆるし、信頼してくれているのに。
今日をきっかけに心を閉ざしたらどうしようか。話してくれなくなったら?
そんなことは望んでいないのに。

なのに。
彼女を直視せず、目を逸らして話しかけない自分がいた。
こんなにもあからさまに話さないという態度を子にとったことはなかった。
ただ、とめられなかった。午後は私が丸くなって寝ていた。


夕方には、少しずついつものような日常がなんとなく戻った。
正直ほっとした。
「話しかけなくてごめんね」言葉にしようと何度か頭をかすめたのに、最後まで言えないまま共に一緒の布団で寝た。

翌日からは、何事もなかったように登校した彼女。今日で今週は終わる。

今週の火曜日のゴミの日。
人生で初めてまとめた生ゴミを出さなかった。
玄関に置いたままだった。
自分の中にないはずの、嫌な行為。

そのゴミも今日、共に捨てた。

意外と匂いがない、と安堵していたけれど、先ほど玄関を掃くとその場所から生ごみ特有の残り香がした。
ゴミをさけて毎日掃いていた玄関。

動かさなかったその場所にだけ、3日分の匂いがそこにとどまっていた。

大きく扉を開き、隅々まで掃いて掃除した。
今日は全てなくなりすっきりとした姿を取り戻した玄関。
明るい日差しを感じる朝。

ゴミをだそう。貯めずにこまめに。
少しずつが溜まる。澱む。
掃いて、家から掃き出して。

そろそろゴミ収集車が来るころだ。
ゴミ出しという日常のリズム。
その音が一つとんだ今週。


今日も回収してくれてありがとうございます。
当たり前に感謝して。

本日も最後までありがとうございました。
よい週末になりますように。

では、また。

皐月









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