見出し画像

「わたしも魔法の手をもてただろうか」ルリユールおじさんを読んで

先日「絵本のコト」というイベントに参加した。

本を一冊持ち寄って紹介し合いっこする小さな集まり。好きな本、おすすめの本、忘れられない本、読むと毎回号泣してしまう本。いろんな本との出会いがあった。

大人にも、いや大人にこそ、絵本は必要だと思う。わたしたちも昔は小さい人だったことを思い出させてくれる。


そのイベントのファシリテイターをしていた絵本専門士のえりこさんが、いせひでこさんの絵が好き!と話していた。

いせひでこさんのことは、あまり知らなかったので、娘と図書館に行ったときに、本を探してみることにした。

そしてふと目があったのがこの本。

石川県の図書館です



木の下を駆けていく女の子の影。
ルリユールってなんだろう?

興味が湧いて本を開こうとしたけれど「ママー!」と娘に呼ばれたので、家でゆっくり読もうと借りていくことにした。

***


フランス語で"Relieur"ルリユールとは、製本・装幀の手仕事をする職人さんのこと。

ヨーロッパで印刷技術が発明され、本の出版が容易になってから発展した実用的な職業で、日本にこの手の文化はないらしい。

出版業と製本業の兼業が、長い間法的に禁じられていたフランス。
そんな環境だからこそ、成長した技術だと、いせひでこさんが後書きに記している。

***

大好きな植物図鑑が壊れてしまったソフィー。

大事な本を直してくれるという、ルリユールおじさんを訪ねて、そこで本を直してもらう一連の出来事が綴られた一冊。

絵は全く詳しくないのだけど、ページをめくるたびに水彩画のやさしさが伝わってきて、穏やかな気持ちになってくる。

「木には大事な知識や物語や人生や歴史がいっぱいつまっている。それらをわすれないように、未来にむかってつたえていくのがルリユールの仕事なんだ」

ソフィーの大事な本は、ルリユールおじさんの手によって生き返る。

ARBRES de SOPHIE 
ソフィーの木たち、と金の文字で刻まれた名前。

大好きなアカシアの絵が表紙に飾られた、ソフィーだけの本。

ルリユールおじさんの魔法の手から送り出された一冊は、二度と壊れることはなかったという。

そしてその本を片手に、アカシアの木の下に佇むソフィー。

大きくなった彼女が選んだ職業は…

気になったらぜひ、本を読んでみてください。

心があったかくなるって、こういうことかなって体感できる一冊です。

いいなと思ったら応援しよう!

CHIHIRO|フィンランド好きの物書き
ありがとうございます! サポートいただけましたら、より良い文章を書くために、書く以外の余白の時間の充実に使わせていただきます◎