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気候変動が日本の朝食にもたらす影響は海のルートからも
しょうゆや味噌、納豆や豆腐など、朝の食卓の定番になっている食材の原料として、また、飼料や工業用途などにも欠かせない大豆。日本ではその大半を海外から輸入しています。
ですが今、大豆の輸入に問題が起きているのだとか。本日はこの問題について学んでみたいと思います。
生産量・輸出量ともに米州が圧倒的
世界の大豆市場を見ると、生産量では全体の8割をブラジル、米国、アルゼンチンでの生産が占め、輸出量ではブラジル、アメリカが総輸出量の約9割を占めています。
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日本の大豆需要はアメリカが支えている
日本では今、大豆の国産化を推進してはいるものの、現状では必要な大豆の9割以上を輸入しています。
輸入相手国はアメリカが約7割と圧倒的であり、以下、ブラジル、カナダ、中国と続きます。
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パナマ運河の水位低下で米国→アジアの穀物輸送に制限
アメリカから日本への大豆輸出は、通常であればパナマ運河経由で太平洋を通って運ばれます。そのほうが近いからです。
ですが今、パナマ運河の水位低下で米国からアジアに向かう穀物輸送船の通航が制限された結果、大西洋を通り、スエズ運河や喜望峰を経由する長距離航路へと迂回を余儀なくされているそうです。
パナマ運河が通りにくくなるなか、中東のスエズ運河やアフリカ南端の喜望峰を回る長距離輸送へ進路を変える船が急増している。米農務省(USDA)によると、10月15〜28日にパナマ運河を通航し東アジアへ向かった穀物船は前年同期の34隻から5隻に激減する一方、スエズ運河の通航は前年の7隻から33隻へ4.7倍に急増した。
商船三井ドライバルクの担当者は「各社ごと通航枠の制限があるので、日々調整している。パナマ運河を通すよう努めつつ、滞船や枠の問題により通航見通しが立たない場合は、スエズ運河経由など遠回りさせる判断をする必要がある」と話す。ACPが過去の通航量などをもとに定める予約の優先順位が低い海運会社は通航が難しく、遠回りせざるを得なくなっている。
気候変動がパナマ運河利用制限を常態化?
今回のパナマ運河の水位低下は、南米・ペルー沖の赤道付近の海面水温が平年より高くなるエルニーニョ現象にともなう記録的干ばつが原因です。
しかし「記録的」なのは今年だけではなく、「運河史上最悪の干ばつ」は過去10年超の間に何度も起こっているのです。
パナマで数十年も研究を続けている米国地質研究所の水文(すいもん)学者ロバート・F・スタラード(パナマに本部がある米スミソニアン熱帯研究所にも所属)は、とくにこの10年は、これまでで最大級の暴風雨に4回も見舞われ、運河史上最悪の干ばつのいくつかもこの期間に集中していると注意を促す。「将来の異常気象に備えて、対策を練っておく必要がある」
「地球温暖化が左右するかもしれない、パナマ運河の命運」
問題は干ばつだけではありません。上述の記事によれば、「2010年12月の豪雨では、湖があふれて洪水が発生し、運河は丸一日閉鎖された」こともあったそうです。
今後、気候変動の影響で干ばつや洪水の発生が増えていけば、パナマ運河を利用できない日数が増え、米州から日本への食料品等輸入にとっては大きな問題となります。
スエズ航路の安全性問題も気候変動が根底に
パナマ運河が使えない場合、次善の策となるのはスエズ運河を経由するルートです。ですが、このルートには別な問題があります。
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それは、安全性の問題です。現在、紅海ではイエメンの親イラン武装組織フーシ派による商船への攻撃が相次いでいます。フーシ派による活動はイスラエル・ハマス戦争による同地域での暴力激化の一環とみられているほか、このルートではソマリア沖の海賊活動が長く問題となっています。
ソマリアを含む「アフリカの角(Horn of Africa)」の地域では、政情不安定に加えて干ばつなどの気象要因から膨大な数の人々が貧困や飢餓に苦しみ、難民も増加しています。海賊がなくならない背景にはこのような状況があります。(出典:外務省ホームページ)
そしてイエメンは、国内紛争と水不足、極端な気象条件に苦しむ国々のひとつです。
中央アメリカの「ドライ・コリドー(乾燥回廊)」地域やハイチから、サヘル地域、中央アフリカ共和国、南スーダンを抜け、東へ向かってアフリカの角、シリア、イエメン、そこからアフガニスタンにいたる地域では、紛争や気候危機が、何百万人もの人びとを餓死の瀬戸際に追いやっています。
日頃は食料品を買う時に値段しかみない自分ですが(反省しています)、せめて年末年始のひとときはこうした世界の問題に思いをめぐらせ、サステナビリティ課題に取り組み続ける原動力にしたいと思います。
以上、サステナビリティ分野のnote更新1000日連続への挑戦・81日目(Day81) でした。それではまた明日。