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長編文学小説・MとRの物語

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Mというのは、あの、三島由紀夫さんのことです。三島由紀夫さんが現代によみがえり、女子高生とともに小説を書いていく、というお話です。ファンタジーっぽいですが、純文学です。
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2017年7月の記事一覧

11「MとRの物語」第一章 10節 図書室その1

いつもありがとうございます。 少し物語がスムーズに進みそうな気配。 (目次はこちら) 「MとRの物語」第一章 10節 図書室  Mさんと、遅くまでは話をした翌日、私は眠い目を擦りながら、登校した。1日のお休みにも関わらず、誰から声もかからない、どころか、私は誰とも、挨拶すらしない。みんな私を、怖がっていた。そう、私の暗い過去。それが原因で私は、クラスでただ一人、のけ者になっていた。荒れていた中学時代。私にとっての黒歴史。でも、別にそれはいいんだ。それはいつものこと。

12「MとRの物語」第一章 10節 図書室(その2)

今までの小説にはない手法。 うまく書けるかどうかの、あたりもつけながら。 (目次はこちら) 「MとRの物語」第一章 10節 図書室(その2)  退屈な授業に、何度も居眠りしながらも、お昼休みにこぎつけた。母のお手製のお弁当をかきこむように食べて、図書室へ向かった。10台あるPCのうち、あと1台だけ空いている。あわててカードリーダーに、IDカードを通すと、PC借用の手続きをすませた。他の9人のほとんどは、下級生っぽかったが、窓際のひとつの席だけ、見覚えのある男の子が座って

13「MとRの物語」第一章 10節 図書室(その3)

図書室のシーンが続きます。 後ろに座った男子が、いい感じにからんでくる。 この男子には、名前をつけるべきか否か。 つけるとしたらどんな名前にするべきか。悩みは尽きない。 (目次はこちら) 「MとRの物語」第一章 10節 図書室(その3) 「この涙は花粉症によるものです、だから心配しないで」と、 そう告げて、私は小説に集中することにする。  Mさん、私に欠けているものは、私にとって悲しすぎるよ。  欠けてるものが、多すぎるんだよ。    そうでもないかもしれない。  例

14「MとRの物語」第一章 10節 図書室(その4)

図書室のシーンは終了。 あらたな伏線が仕込まれますが、それはMさんとRちゃんにとって、 吉と出るのか凶と出るのか。それは作者である私にも、まだわからない! (目次はこちら) 「MとRの物語」第一章 10節 図書室(その4)  照れて顔を上げられずにいる私に、Mさんがすかさず言った。  大丈夫、これは正真正銘、お前の考えたストーリーだ。  俺はお前に問いかけて、発想を促しただけ。  俺の問いへのお前の反応や、イメージを、  いい感じに文章化しただけだよ。  そう、なの

15「MとRの物語」第一章 11節 「リバティー・リーブス」

(目次はこちら) 「MとRの物語」第一章 11節 「リバティー・リーブス」 タイトル:「リバティー・リーブス」  秋風にゆられ、今にも、一枚の葉っぱが落ちそうです。  葉っぱは考えました。この木を落ちて風に運ばれる葉っぱたちは、みんな森の奥の方に飛んでいく。まるでそれが当然、定められた運命であるかのように。でも、僕は違う。僕は飛びたいんだ、あの、カモメのように。  葉っぱは空を見上げました。1羽のカモメが、風に揺られながら、気持ちよさそうに飛んでいます。カモメが見つ

16「MとRの物語」第一章 12節 予鈴

前話にでてきた小説のタイトル「リバティー」は、Rちゃんの学校の近くにある喫茶店の名前です。今回書く予定だったけど書き切れなかった、どうでもいい設定でした。「喫茶リバティー」は、そのうち別の場面で登場させるかも? (目次はこちら) 「MとRの物語」第一章 12節 予鈴  自分用にも1部印刷して、私はその小説、「リバティー・リーブス」を眺めた。Mさんは、これを簡単に書けるなんて言ったけど、そんなこと言えるのは、天才と言われた、Mさんだからではないのかと、私は思った。でも反面

17「MとRの物語」第一章 13節 白い魔女

ついにRちゃんが、自力で小説を書いていきます。 どんなものになるのか……。楽しみなような、恐ろしいような。 (目次はこちら) 「MとRの物語」第一章 13節 白い魔女  すべての授業が終わって、私は、自転車に乗って帰宅した。暑い……。マンションのドアを開けると、恐ろしいほどの熱気が、私に牙をむいた。平静を装い、中に入って扉をしめ、鍵をかける。靴を脱いで、大股に台所を横切り、壁のリモコンをとってエアコンをオンにした。  ぴっ  排気口の下で、直接冷気を浴びる。母がいた

18「MとRの物語」第一章 14節 「白い魔女の世界」

ちょっと粗削りな、Rちゃんの書いた初小説、という設定。 (目次はこちら) 「MとRの物語」第一章 14節 「白い魔女の世界」  46億年という、長い長い時を、私はひとりで生きてきた。私自身の、深くせつない溜息と冷たい視線だけが、その世界を満たす、全てだった。私は暗い部屋に閉じ込められた、一匹の白い子猫だった。  その世界には、「孤独」という概念はなかった。私が「さみしい」と思うまでは。その瞬間、世界には白いブリザードが吹き荒れ、海は凍り付き、草木はばらばらに分解された

19「MとRの物語(Aルート)」第一章 15節 「動き出す歯車」

だめだ……。どのルートを選べばいいのか。決まらない。決められない……。 と、ここで悩むとまたストップしちゃう。だったら両方書けばいい。 純文をAルート、エンタメをBルートとしよう。 (目次はこちら) 「MとRの物語(Aルート)」第一章 15節 「動き出す歯車」  電話が鳴り続けている。  以前母が、「悪い事、いそがしい事は連続する」と言っていた。そういうことって、あると私は思う。ここ数日も、そういうことが次々と、私の近くに起こった。だとしたら、この電話もその一つを、私

20「MとRの物語(Aルート)」第一章 16節 「痛い、気持ちいい」

これって純文学なの? エロ小説なの? いいえ、大人向けの純文学です(きっぱり)。それにしても、Rちゃんの快楽落ちが激しすぎる。どうなるんだこの先(困惑)。 (目次はこちら) 「MとRの物語(Aルート)」第一章 16節 「痛い、気持ちいい」  Mさんの心が、苦痛に耐えている。私はMさんを強く抱いた手を少し緩めた。その瞬間、Mさんの軽い失望の気持ちが、私に伝わった。あ、Mさんは、苦痛を望んでいるんだ。でもそれは許さない。今度はじらしプレイだ。  私は、Mさんの顔をゆっくり

21「MとRの物語(Aルート)」第一章 17節 快楽の蛇

難解な第一章を読み続けた人たちへのご褒美、それはこの世の快楽を超えるエロス。というわけで、公共良俗に触れないギリギリのソフトなエロを提示したのちに、Aルートは休憩のため、パーキングエリアに立ち寄ります。ほっと一息、かな? (目次はこちら) 「MとRの物語(Aルート)」第一章 17節 快楽の蛇  蛇がのたくっている。蛇が暴れている。蛇は私のふくよかな肉に噛みつき、ひきちぎり、それを砕き、舌で舐めまわしている。快感のとりこになった私は、そんな蛇の蹂躙を、ただただ受け入れてい

22「MとRの物語(Aルート)」第一章 18節 接吻と恋文

今回、「M」の正体が明かされます。 彼の書いた名作、「春の雪」の1フレーズも、引用しておきました。 オマージュであり、リスペクトです。 (目次はこちら) 「MとRの物語(Aルート)」第一章 18節 接吻と恋文  時計を見ると、母が帰ってくるまでには、少し時間があった。私は、仰向けになって目を閉じているMさんに近寄って、恐る恐る、その身体に触れてみた。流れ込んでくるような快感は、もうなかった。  Mさん、Mさん! 私は、心の中でMさんを呼びながら、その身体を揺すった。

23「MとRの物語(Aルート)」第一章 19節 湯船と構想

多少強引だけれど、第一章を終えさせてみる。 ここまで読んでくださったみなさま、おつかれさまでした! 第五巻執筆の話になると、難しくてとたんにRちゃんが寝そうになる。 どうしたものか……。 (目次はこちら) 「MとRの物語(Aルート)」第一章 19節 湯船と構想  かわいいよ、かわいいよMさん、という、Rのはじけるような思念が、俺の心にうるさいほど響いてくる。しかしとがめるのもかわいそうだ。俺は我慢することに決めた。俺に出会ってから、Rの思考はいい方向へと向かっている。俺