14「MとRの物語」第一章 10節 図書室(その4)

図書室のシーンは終了。
あらたな伏線が仕込まれますが、それはMさんとRちゃんにとって、
吉と出るのか凶と出るのか。それは作者である私にも、まだわからない!

(目次はこちら)

「MとRの物語」第一章 10節 図書室(その4)

 照れて顔を上げられずにいる私に、Mさんがすかさず言った。

 大丈夫、これは正真正銘、お前の考えたストーリーだ。
 俺はお前に問いかけて、発想を促しただけ。
 俺の問いへのお前の反応や、イメージを、
 いい感じに文章化しただけだよ。

 そう、なの? その「いい感じ」が難しそうなんだけど……。

「う、うん、私が書いた。今書いた。一人で書いた」

「あ、ああ、わかってるよ。でも俺の質問は、何者かっていうことなんだけどね」

「あ、私はR。3年C組。あなたも3年生よね」
「R? お前がRか。噂は聞いたことあるけど、全然イメージ違ったよ」

ああ、この人も私のことを知っている。私って、どんだけ有名人なんだろう? 中学校の時に不良をやっていて、髪を染めて毎日夜遊びしていて、警察には何度も捕まって母に迷惑をかけていて……。でもそれだけよ……。その前の私は……。思い出そうとしたけど、その前には闇しか見えなかった。

「ごめん、噂なんて関係ないな。俺全然気にしないし。正直言うと、俺も中学の頃荒れてたし」

「そうなんだ。あ、この席っていつも空いているの? 何か知ってる?」

「ああ、だいたい空いてる。ちょっとした怪談があるからな、そこの席には」

「え、怪談?」

「うん。よくある学校の怪談のひとつだと思うよ。俺は他の席が空いてなかったら、気にせず使ってる」

「ふうん……」

「その小説、印刷してもらっていいかな。読ませたい人がいるんだ」

「ええ!? どうしよう……」

 Mさん、どうしよう。

 別に問題はないと思う。
 この作品が、俺のものであると気付く人なんていないだろうし、
 お前にも、一週間もすればこの程度の作品は、書けるようになる。

 わかった。

「いいよ。ちょっと待って」

私が印刷処理をすると、男子は、ゆっくり立ちあがって、プリンターに印刷物を取りにいった。

「ありがとう。俺昼休みはだいたいここにいるから、よかったらまた話そう。じゃあね」

「う、うん」

 ちょっと予想外の展開だったが、まあ、このような時間も必要だ。
 小説の書き方は、だいたいわかってもらえたかな?

 うん、ありがとう、よくわかったよ!
 でも私に書けるかどうかは、やってみないとわからないね。
 それにあんなスピードでは、絶対無理。
 
 そうだな。俺はさっき3分で書いたけど、
 初心者は、1時間、2時間、数日かけたりすると思う。
 まあ、今は感覚さえつかんでもらえればそれでいい。
 さらにいえば、それがお前の自信につながればね。

 うん。

自信……、今まで私とは無縁だと思っていた、その言葉が、少しだけ身近に感じられるようになった、気がした。

<つづく>

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