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21「MとRの物語(Aルート)」第一章 17節 快楽の蛇

難解な第一章を読み続けた人たちへのご褒美、それはこの世の快楽を超えるエロス。というわけで、公共良俗に触れないギリギリのソフトなエロを提示したのちに、Aルートは休憩のため、パーキングエリアに立ち寄ります。ほっと一息、かな?

(目次はこちら)

「MとRの物語(Aルート)」第一章 17節 快楽の蛇

 蛇がのたくっている。蛇が暴れている。蛇は私のふくよかな肉に噛みつき、ひきちぎり、それを砕き、舌で舐めまわしている。快感のとりこになった私は、そんな蛇の蹂躙を、ただただ受け入れている。

 ああ、蛇が。蛇が! あああ!!! ああああ!!

私はMさんの上で、身体をぐったりさせていた。止められない快楽、永遠の、終わることのない快楽が、私を責め続けていた。もう駄目だ、このまま死んでしまうかもしれない。でもその前に、あまりの快感に狂ってしまうだろう。Mさん、Mさん聞こえる? 私が間違えてました。どうかこれを、止めてください。そうしないと、もうすぐ私は、狂ってしまいそうです。

「あははwwww あはははは!!」

え、これ、私の声?
ああ、もう、駄目かもしれない……。
ごめんね、Mさん。私はもう、正気じゃないみたい。

その瞬間……。急に全身の快楽が、止まった。

 あれ? 死んだ?

私はかすむ目で、周囲を確認しようとした。首がぐらつく。目の前に誰かがいる。Mさんじゃない。髪の長い女性だ。きれい……。唇が赤くてなまめかしい。これはもしかして……、さっきMさんが話をしていた、女神? だとしたら、私はやっぱり、死んじゃったのかな?

「Rちゃん? こんなにエッチなRちゃん、私はあんまり、好きじゃないわよ?」

「だ……、れ……?」

「私はあなたの大ファン。そしてあなたは私のペット、あなたは私だけのもの! だめでしょ、こんなにヨダレを垂らして! ダメでしょこんなにびっしょりおもらししちゃって!!」

女性は私に顔を近づけて、キスをした。その瞬間、かすんでいた目がはっきり見えるようになって、力が入らなかった身体にも、感覚が戻り始めた。

「ん! ん!!」

抵抗しようとして気づいた。私は、目の前の女性に胸元をつかまれて、宙吊りにされていたんだ。暴れると首がしまりそうになって、私は息を詰まらせた。

「そう、Mが言ってた女神というのは、私のことよ。MがRちゃんの身体に入っちゃってから、私は心配で心配で、こいつが何かしでかさないかと、ずっと見張っていたの」

女神? は、ぐったりと横たわっているMさんを、にらみつけた。

「なんで私が、あなたのペットなの?」

女神は私の方を、じろっとにらんだ。

「ん? もちろん私が、あなたをペットとして作ったからよ。辛さに耐えて、けなげに生きているあなたを観察するのが、私の何よりの楽しみなの、わかる?」

「わ……、わからない」

わかるわけがない。なんで神様が、ペットなんて必要とするの? なんで人間がペットなの? なんでそれが、この私なの? なんでMさんじゃないの? なんで?!

女神は、あわれむような目で私を見て、言った。

「ペットが飼い主の気持ちなんて、わかるわけないでしょう? おほほほwww」

女神は私の胸元をつかんでいた手を開いた。私は床に、尻もちをついた。

「痛!」

「Rちゃん? あなた、Mに伝えておいてくれる? Rちゃんに手を出したら、私が許さない。あなたがRちゃんをたらしこむ前に、私がRちゃんを快楽のとりこにして、食い殺すからねって」

 シャアアアアア!!

その乾いた音に驚いて、女神の方を見上げると、女神の姿に、巨大なヘビのイメージが、重なっていた。その目は金色に光っていた。蛇は私とMさんを交互に見ながら、獣の形相で威嚇した。私は怖くなって、尻もちをついたまま、ガタガタと震えた。

 あ……、あなたが…。あなたがあの蛇だったのね!

 ウフフ、そうよ。気持ちよかった?
 さびしくなったら、またいつでも呼んでね。おほほほほほ!!

美しい顔が蛇と同化して、おぞましい姿となった女神は、笑いながらゆっくりと消えていった。最後に女神の声が、私の心に届いた。

 これでゲームを続けられる。Rちゃん? よかったらあなたもMさんと一緒に、楽しんでね。おほほほほほwww

<つづく>

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