孫と祖父
あるところに、自他ともに認める、と〜ってもコミュ力の高い、宝くじ販売員がいました。
名前はタマミーヌ。いつもニコニコしている販売員。だが、彼女の本性は…とても気分屋で、腹黒い女だったのです…
(今日の私はご機嫌!気分爽快!ってほどではないけれど、どんなお客さんが来ても大丈夫よ〜)
この日のタマミーヌは、無駄にテンションも高く、嬉々としていて、気味が悪いくらいに上機嫌なのでした。
(ご機嫌な理由?人に言うと、幸せが逃げちゃうんですって〜!だからナイショ。笑)
『ジャンボやってるの?へぇぇ。買ってもねぇ、、どうせ当たらないんだから、買わないわよ〜』そんなことをいちいち言いに来る暇な人がたまにいるのです。
不機嫌な日のタマミーヌなら(わざわざ言いに来〜るな!あっかんべー!)と、声には出さずに毒づくところでしたが、(はいはい。そーですね。お好きにどーぞ。今日の私はへっちゃらだもんね〜)
わざわざ言いに来たオババにも、ニコッと口角を上げて、笑を返します。
『昔、200万当たったことがあるんだけどさぁ…』から始まった長話にも、笑顔を絶やさず談笑し、お話し相手を務めました。
(私、今なら、どんな変な人が来ても大丈夫だわ)
口元を綻ばせ、ヘラヘラしている気色悪いタマミーヌ。
子どもたちがまだ夏休みだったある日。小学生、高学年くらいの男の子が1人で来ました。500円玉を置くと
『スクラッチください!』
『ごめんなさいね、子どもには売れないものなのよ〜』
男の子は黙ってどこかに行ってしまいました。しばらくすると、男の子はおじいさんとやって来たのです。おじいさんはいきなり、
『なんで子どもには売れねーんだよ!』と言ってきたので、宝くじはギャンブルであること、未成年には売れないということを、優しく丁寧に説明したタマミーヌ。
すると、ジジイは、孫に言いました。
『おまえ、こんなもん買うなよ!ギャンブルってのはなぁ、胴元が儲かるようにできてんだぞ!見てみろ!だから、この人らはニコニコしながら売ってんだよ』
な〜んて不躾なジジイなんでしょう。
(おい!ジジイ。あんたの孫の顔を見てごらん!)
ご機嫌ちゃんなタマミーヌは、しょんぼり困り顔の孫を気遣って、微苦笑を崩さないままでいてあげました。
不躾なジジイは孫に向かってさらに、
『おまえなぁ、こんなもん買いたがるなよ、さっさと削っちゃえ』と言っています。
孫が小さく叫びました。『あっ!!』
『ジージ!千円当たった!』
『えっ?ホントか?よかったじゃねーか!』
ジジイの態度が急に緩みました。
(ジジイ、胴元からお金が取れてよかったね〜。それと、キミ!!キミがスクラッチなんか欲しがるから、キミのジジイに私は不快な気持ちにさせられました!
ジジイなしで買える大人になってから買いましょうね〜)
心の声は、子供に対しても容赦のないタマミーヌなのでした。
最近、こんな人もいました。
タマミーヌよりお姉さんだとおもわれるその女性は、のっけから
『今売ってるのどれ?』『あっそ。それいくら?』タマミーヌの説明に対しては『うん。で?だから?わかった。』『カードで!早くして!』ずっとこんな調子でした。
(はいはい。横柄ちゃん。左様でございますね〜)ニコニコタマミーヌのまま対応していますと、お姉さんは帰り際、表情を崩すこともなく、こんなことを言ったのです。
『あんた、その笑顔いいよ、接客向いてんじゃん、がんばりな!』
(ちょっと、姐さん!あんた、なに様?ふざけん……
いけない、いけない。今日の私はご機嫌ちゃんだったっけ。)
『ありがとうございます。恐れ入ります。』
いっときの、ムカッ!をすぐに消して、タマミーヌは平静に戻りました。
(なんだぁ、いい人じゃない。あの人、あんな話し方しかできないのかな?もったいないな)
この仕事をとっても気に入ってるタマミーヌ。
でもね〜、人相手の接客って、出ちゃうのよ。愚痴や文句。私、、出ちゃうのよね〜〜(笑)