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御相伴衆~Escorts 第一章 第104話 暗躍の行方9~仮初の花嫁②

ジェイス「おはようございます。よろしいでしょうか?王子、女美架メミカ姫様」
アカツキ「おはようございます」
王子「おはよう、ジェイス、暁殿」
姫「おはよう、ジェイスさん、暁・・・?目が赤いですね。特に、ジェイスさん」
ジェイス「いえ、ちょっと、調べものに夢中になってしまいまして、申し訳ございません」
姫「暁も、少し、疲れてませんか?」
暁「あ、そんなこと、ございませんよ。・・・今日も、良いお天気のようですね」
ジェイス「ご予定は、そのまま、ランサム礼拝堂のご見学でよろしいでしょうか?」
暁「昨日、ジェイス様にお伺い致しまして、礼拝堂から、王立美術館に直接、移動できるとのことですね」
王子「暁殿もご覧になりたいのではないですか?」
ジェイス「そうだったのですか?良かった。行く前で・・・それでしたら・・・」
暁「あ、いえ、また、明日以降の予定も組まなければなりませんし・・・」

 暁は、ジェイスに、目配せをする。
 滞在は、3日目の朝を迎えていた。

「そうだな、明日は、ゆっくり、王宮内で過ごしてもいいと思われるが・・・ジェイス、なんなら、時間をずらして、暁殿をお連れしたら、どうだ?・・・あの件は、辛殿にお任せして」

 王子の言葉に、ジェイスは、急に赤くなり、王子に耳打ちをした。

「あ、いえ、その、ならば、ご一緒にと・・・」
「馬鹿者、無理なのは、わかるだろう?・・・ジェイス」

 男二人の様子に、姫と暁は、不思議そうな顔で見ているが・・・。

姫「あ、こそこそしてる・・・」
暁「・・・姫様、本日も、王宮内で、待機致しますので、お心遣いありがとうございます。私は、大丈夫です」

王子「下手くそな奴だ」
暁・姫「?」
ジェイス「あああ、そうでした。まだまだ、観て頂きたいスポットは、山程、ございますから、暁殿、ラウラタウンの興業情報を見て、観劇の予定を立てましょう」
暁「あ、はい、承知致しました」
姫「ジェイスさん、焦ってる」
暁「女美架メミカ姫様・・・」

 アーギュ王子は、鼻で笑った。

 ・・・この堅物は、不器用の塊だな。

「では、女美架姫、参りましょう。行ってくる」
ジ・暁「お気をつけて」
「いってきまーす」
ジ・暁「行ってらっしゃいませ」

 ジェイスと暁は、深々と、頭を下げた。

「王子・・・さっきのこそこそは?」
「ああ、行けば、わかりますよ」

⛪🦚🍓

 ランサム礼拝堂に、二人を乗せた車は、到着した。

「こちらは、我が太祖、初代国王のアーギュ・ランサムが、この大陸に辿りつき、立国した記念に建てられたもので、国の平和を願う、初代王の祈りが込められた象徴の施設となっています」
「すごい、大きいのですね。お城もそうですが、スメラギには、大きな建物が少ないので、びっくりします。王子が大きいから、全部、大きいのかな、と思ってしまいます」
「ふふふ、そういうわけではありませんが・・・、そこの広間には、お待ちかねの、天井のフレスコ画『天使の戯れ』がありますよ。慈朗殿にそっくりな、天使の絵とのことですね」

 見上げた先の天井の絵は、写真で見るよりも、高い位置にあると感じる、大きいものだった。女美架は、念願の天使との邂逅を果たす。

「やっぱり、可愛らしい♡ 本当に、慈朗そっくり・・・。慈朗本人にも見せたかったけど、柚葉に、もっと、見せたいです・・・あっ・・・だめっ」

 女美架は、口を抑えた。

 ・・・慈朗の秘密、女美架、約束、破っちゃう・・・。

「何が、ダメなんですか?」
「あああ、えっと、綺麗すぎて、変なこと言ってしまいました。王子、聞かなかったことにしてください」
「何をですか?・・・ああ、柚葉と慈朗殿の関係ですね?」
「え?王子、まさか・・・」
「ええ、存じ上げていますよ」
「えーっ!?」
「声が響いてしまいましたね。礼拝堂中に。いいですけど、貸し切りですからね」
「それ、それ、なんで、王子は、ご存知なの?」
「先日の、若い人の会の時に、ベランダで、柚葉本人から、聞きましたよ」

🦚🔑

「それと、君の方の・・・、第二皇女様だが。素晴らしい成績で、今回の世界選手権では、各種目で、好成績を収めている。妃となった暁には、名実共に、優れたる資質にて、世界が褒め称えることだろう。万事、上手く進んでいるのではないか?」
「ご協力を頂き、誠に恐悦至極に存じます」
「完璧すぎるな」
「完璧なことなど、この世には一つもありませんよ。アーギュ、僕のこと、解ってるでしょ」
「・・・何のことでしょうか?」
「君だって、博愛主義者の癖して」
「悪い癖の話ですね・・・そうか・・・で、今回のターゲットは?」
「君の国の礼拝堂に、そっくりな子がいるじゃない」
「・・・なるほどね・・・奇しくも、彼も芸術家か・・・」
「・・・生きた、具現化した天使ですよ」

🦚🍓

「女美架は、どこから、それを、聞かれましたか?」
「あ・・・慈朗から直接」
「別に、大丈夫でしょう。ここだけのお話とすればよいのですから」
「王子は、そういうの、気にしないんですか?」
「ああ、その性別を超えた愛というやつですね。この天井画のストーリーそのものなのですよ。まあ、余計に、柚葉はこの絵に、既視感を感じているようですね」
「きしかん・・・」
「ああ、自分と慈朗殿のことに、重ね合わせているんですね」
「・・・そうなんですね」
「この天使は、罪作りで、モテモテなんですよ。女性からも、男性からも」
「あああ、慈朗そっくり」
「ふふふ、そうなんですね」
「可愛いですから」
「そうかもしれませんが、今は、どうでもいいことです」
「え?」
「人のことですから、その方たちが、上手くやってくれていれば、いいのですよ。男同士とか、そんなことは、気になりませんよ。要は、お二人が納得して、愛し合っていればよいのですから・・・私と貴女のように」

 女美架は、くすぐったい感じになった。

 本当に、王子は、そういうことを、さらりと言って退けるから・・・。

「ここから、王立博物館になります。ここなのですが、ちょっと、面白い作りになっています」

 広い廊下の真ん中に、壁で囲まれたスペースがあり、ドアが一つある。
 それは、廊下の長さ分ある、細長い部屋のように、見受けられる。

「SPは、外を通って貰います。中へ入れば、理由は解ります。さあ、参りましょう」

 ドアを開けると、カーテンが掛かっており、それをくぐって、中に入ると、丁度、人が二人しか通れないくらいの幅の個室となっている。

「あ・・・」
「この廊下を渡る、個室は、現在、四つあります。様々な愛についての作品が、その部屋に、一つずつ、展示されています」
「・・・」
「うふふ、困ってますね?・・実は、姫のお歳では、このお部屋に入れないんですよ。でも、ご結婚が決まった間柄の二人ならば、年齢関係なく、観ることができるようになっています。これは、ハネムーンルートという通称の設えで、新婚旅行のカップルや、婚約を済まされた方々の、知る人ぞ知るスポットです。予約制で、事前に、年齢の申告の必要があります」
「・・絵で描くの、どうしてですか?」
「そうですね。芸術の何割でしょうか?このような、色っぽいことになぞらえていることがあると思います」
「女美架は、こういうの、秘密がいいです」
「そうなんですよ。秘密なんです。だから、その気持ちが解る、愛し合う二人だけが、これを見ることができるのですよ」
「うーん・・・」
「ご納得、行かれないのでしょうか?」
「女美架は見られたくないです」
「クスクス・・・そのように、捕らえられるのですね。可愛らしい。良い勘をなさっておられますね。姫は」
「だって、こんなの・・・」
「身に覚えですね?偶然にも、僕も、つい最近、覚えがあります」
「・・・王子の意地悪」

 ちょっと、ねた調子で、先を急ぐ。

「お待ちください。ご一緒に行きましょう」

 第一の部屋は、どことなく、アーギュに似た王子が、隣国の姫君に口づけている様子が描かれていた。写実性があり、リアリティのある作風のものだった。初代国王アーギュ・ランサムが、妃となる隣国の姫を、この地に連れ帰った時の図であった。

「お気づきでしょうか?これは、私の先祖のお話です。さて、二つ目のお部屋です」
「・・・んー、もう、こんなの、ダメです」
「このお部屋は、ベンチがありますね。ゆっくり、拝見することもできますよ」
「お風呂がそっくりです。バラの花びらが、浮かんでるのも・・・」
「ですね、何故でしょう?・・・クスクス・・・昨晩は、苺でしたね・・・」
「♡・・・王子も、そっくりだし」
「仕方ないですね。直系のご先祖様ですから。こちらはアーギュ・オーギュスト・ランサムⅡ世と妃の図です」

 第二の部屋では、水浴する王と妃の図で、王宮内の設えが、既に、今の城の内部のものが描かれている。これが響くのは、他ならぬ、王室関係者となるのだが・・・。女美架は、アーギュに促されて、ベンチに腰掛ける。

「あー、わかった」
「どうされましたか?」
「だから、ジェイスさんと暁は、ご一緒できなくて」
「まあ、狭いですよね。四人では。だから、時間をずらして、と言っていたのですよ」
「・・・んー、やっぱり・・・そうなんですね?」
「人のことですから」
「女美架の言った通りでしょう?ジェイスさん、暁がお好きなの」
「はっきり、仰いますね」
「だって、焦ってたもの」
「気になりますか?」
「うん、上手くいってほしいです」
「そうですね、だとしたら、ね・・・この後のお部屋、ご覧になりますか?」
「あ、え?・・・ダメなやつ、なのですか?」
「うふふ・・・、姫の言い方で言うと、そうかもしれませんが、どうされます?と言っても、このお部屋、全部通らないと出られないので、行きましょう」
「王子は、他の方と、このお部屋に入ってるから、全部、知ってるんですね」
「・・・だとしても、終わったことですよ」
「何回も見たのね、モテるから」
「・・・このお部屋で、少し、ストップですね。随分、ごねてくださるので・・・You are the only thing I think about all day.」

「ん・・・また、こんなの狡い・・・」
「皇語訳を」

 ベンチで、膝に女美架を抱くアーギュ。思いっきり、甘い調子で、藍語で囁き、口づける。

「宿題です」
「・・・」
「次に行きますよ、覚悟してください」

 三つ目の部屋では、アーギュ・ベイオネット・ランサムⅢ世と、その妃の寝所での様子が描かれている。

「抱っこしましょうか。ちょっと、大きな絵です。引いて、高い位置から見ると面白いですよ」
「え、あ、・・・これって?」
「これは、近代の先進画家の作品ですね。グッと、創作感が出て、トリッキーなイメージになりますね。遊び心が満載です。はい、抱っこして、右へ、左へ、動いてみましょう」
「あああ・・・もう、ダメです、こんなのばっかり」
「ふふふ、動いているみたいに見えるでしょ?ホログラムを使っていますね。臨場感が満載です。この時代、戦争がありました。Ⅲ世、私のお爺様のミドルネームは、銃剣を示しています。ご先祖様の中では、一番腕っぷしが良く、女性関係も派手で大胆な方だったようです。・・・僕と正反対です」
「下ります、もう、王子ったら、嘘つきです」
「何が、嘘ですか?」
「モテるのは、同じです」

 女美架は、アーギュの手から、降ろされると、ハッと気づく。

「次のお部屋は・・・」
「そうですね。私の両親になりますね」
「もう、嫌です。見ませんー」
「いいえ、一番、ご覧になって頂きたいお部屋ですよ。私の両親の愛の形です」

 四番目の部屋に、恐る恐る入る、女美架。

「あ・・・、これって」
「いかがですか?」
「・・・一番、素敵です」
「そう思って頂けて、嬉しいです」

 今上国王である、王子の父王 アーギュ・エレンツァ・ランサムⅣ世と、母のラウラ王妃の立ち姿の絵。若き頃の二人の姿だった。王妃のお腹は大きく、国王が優しく、王妃を労わるように、身体を支えている。

「王子もここにいるんですね」
「そうですよ」
「素敵です。とても、お幸せそうです」
「父の世代となり、戦争の時代を経て、平和を取り戻し、現在に至ります。さて、次のドアを開けてください」
「・・・えっと、でも、お部屋は、四つまでって」
「見てみましょうか?」

 そこには、増築されたばかりの同様の部屋のドアが設えられていた。

「ドアを開けてみてください」
「・・・いいのですか?」
「ええ」
「あ・・・」

 その部屋には、何も飾られてはいなかった。

「もう、お解りですね?」
「・・・王子・・・」
「もう、目が潤んできましたね。この四つのドアのお話で、お解りだと思いますが、世代が進んでいくと同時に、それぞれのご夫婦の関係性が進んでいくのが、見て取れます。女美架は、ここに、どんな絵を望みますか?」
「・・・」
「幸いなことに、ここに未来に飾られる予定の者として、希望を申し添えることができますから」
「・・・赤ちゃん、赤ちゃんを抱っこした絵がいいです」
「わかりました。では、それを真実にしなければなりませんね」
「王子・・・」

 最後の出口のドアの前、二人は強く抱き合って、深く口づけた。

👓🌄

「あ、お帰りのようです。随分、お早いですね」
「あ、あああ、」
「どうされたのですか?ジェイス様」

 待機していた、ジェイスと暁は、窓から、主の帰宅を確認した。
 玄関に停められている車から、アーギュが女美架を横抱きにして下りてくる様子が見えたのだ。

「あ、カノト殿、携帯電話の番をお願いします」
「あ、はい、解りました・・・?」

「あの、」
「暁殿、急ぎ、寝所の設えを・・・」
「あ、え?」
「まずは、お風呂の設えですね」
「そちらは、常にお使いになられるようにしてございますから、ああ、薔薇の花びらですね」
「あと、冷えたシャンパンと」
「大丈夫ですよ。ベッドメイキングは済ましてありますし」
「はい、では、準備を」
「わかりました・・・それにしても、どうして、展開が判るのですか?」
「まあ、悪い癖です」
「・・・そうなんですね」
「美術館の効能ですね」
「・・・?」
「いえ、何でもありません。急ぎましょう」
「はい」

~暗躍の行方10につづく


御相伴衆~Escorts 第一章 第104話 暗躍の行方9~仮初の花嫁②

 
お読み頂きまして、ありがとうございます。

 私自身、ランサム礼拝堂と王立博物館に行ってみたいです😊✨

 このくだり、覚えておいて頂くと、今後、面白いと思います。
 まだ少し先の、第二章以降で、色々な人がカップルで観に行く形なるとか、ならないとか・・・お楽しみになさってください。

 今回は、アーギュ王子と女美架姫のデートの様子でした。
 甘すぎる感じもありますが、この二人はこれでよし、と思っています。
 
 愉しいデートは良いんですが・・・裏方は爆弾抱えていますからね💦
 どうなることやら、ですね・・・🤔

 次回も、お楽しみになさってくださいね🍀✨

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