ストレッチ誘発性痛覚低下
📖 文献情報 と 抄録和訳
ストレッチの強度が痛みの感度に及ぼす影響:健康な成人を対象とした無作為化交差試験
[背景・目的] ストレッチングの運動は、局所および広範囲の痛覚感度に影響を及ぼす。 鎮痛効果とストレッチングの強度との間には用量反応関係が存在する可能性があり、ストレッチングの強度が高いほど鎮痛反応の減少が大きくなる可能性があるが、これはまだ研究されていない。 本研究では、ストレッチングの強度と鎮痛効果との間の用量反応関係を調査することを目的とした。
[方法] ストレッチングによる痛みの発生点までの効果と、ストレッチングによるストレッチ感(不快感)の発生点までの効果を調べるため、無作為反復測定クロスオーバー試験を実施した。主要評価項目は局所および遠隔部の圧痛閾値とした。
[結果] 31人の被験者(女性24人)が分析に使用可能であった。
■ ストレッチ誘発性痛覚低下①:局所部位
・「痛みの限界まで」:圧痛閾値が20.0%増加
・「ストレッチ感覚の限界まで」:圧痛閾値が22.2%増加
・ストレッチ強度による違いはなし
■ ストレッチ誘発性痛覚低下②:遠隔部位
・「痛みの限界まで」:圧痛閾値が15.1%増加
・「ストレッチ感覚の限界まで」:圧痛閾値が15%増加
・ストレッチ強度による違いはなし
[結論] 結果から、急性のストレッチングでは、ストレッチングの強度に関係なく、局所および広範囲の痛覚が低下することが示された。 ストレッチングの限界まで行うストレッチングと、痛みが最初に生じるまで行うストレッチングとの間には、痛覚に違いは見られなかった。 したがって、結果から、ストレッチングの強度と鎮痛効果との間に用量反応関係があるという証拠は示されなかった。意義この研究では、ストレッチの強度に関係なく、ストレッチ運動に急性の鎮痛効果が認めらた。これは、筋骨格系および痛覚変調性の痛みを抱える患者にとって、臨床的に適切な意味を持つ可能性がある。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
これまで、 “運動誘発性痛覚低下” については、たくさんの勉強をしてきた。
運動そのものによって、その直後の痛覚が低下するという効果だ。
これは、リハビリテーションに従事する者にとっては見逃せない効果だと感じていた。
そして今回、ストレッチにもその効果があるということを、抄読研究が教えてくれた。
ハムストリングスのストレッチによって、同側の下腿前面という近い場所と、対側の三角筋という遠い場所の両方に痛覚低下の効果が現れたのだ。
これは、言うなればストレッチは即時的な痛みに対する麻酔効果を有する、ということを意味している。
つまり、動作練習前にしっかりとストレッチをすることによって、動作練習中の疼痛が軽減され、より効果的な練習が可能になるかもしれない。
しかも、疼痛が生じている局所的な場所ではなく、例えば対側のストレッチでも効果が見込めるのだから実用的だ。
さらに、この効果は「マジック」的な効果も期待できると思う。
例えば、右膝が痛い患者さんに対して、対側のハムスト、下腿三頭筋をストレッチした後、立位や歩行練習をすると「ん?、いつもより痛くないですね。どうしてですか?、不思議」という患者さんにとって仕組みの分からない効果。
これは、患者さんに信頼してもらう、という観点から使える技術の1つになるかもしれない。
何にせよ、臨床現場において、その効果の実際感を確かめてみたいと思う。
ストレッチ後の痛覚閾値の変化・・・、注目していきたい。
⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨
○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓
‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び