Does-dependent Harm。投球イニング数,対戦打者数が多いほど投球障害肩↑
📖 文献情報 と 抄録和訳
プロ野球投手における仕事量とインターナル・インピンジメントは関連するか?休養日数、投球イニング数、被打者数の分析
[背景・目的] インターナル・インピンジメントは、野球投手における肩の痛みや機能障害の一般的な原因である。
●目的/仮説:本研究の目的は、プロ野球投手において、登板間の休養日数、1回の登板イニング数、1回の登板で対戦した打者数が、インターナル・インピンジメントの危険因子であるかどうかを明らかにすることである。仕事量が多ければ多いほど、投手がインターナル・インピンジメントを発症するリスクが有意に高まるという仮説が立てられた。
[方法] 研究デザイン症例対照研究;証拠レベル、3。方法2011年から2017年の間にインターナル・インピンジメントと診断されたプロ野球(メジャーリーグおよびマイナーリーグ)の全投手を、メジャーリーグの健康・傷害追跡システム(Health and Injury Tracking System)を用いて同定した。仕事量を決定するために、別の選手使用データセットを使用した。著者らは、Student t検定またはMann-Whitney U検定を用いて、4つの傷害曝露群(試合後2週間未満、6週間未満、12週間未満、12週間以上経過したインターナル・インピンジメントが記録された投手)と、インターナル・インピンジメントがない投手の対照群との間で、仕事量の変数(休息日数、投球イニング数、1試合当たりの打者数)を比較した。傷害群の投手内ペア分析では、3つの急性期(傷害前2週未満、6週未満、12週未満)の作業負荷変数をベースライン値(傷害前12週以上)と比較した。
[結果] 全体として、調査期間中にインターナル・インピンジメントと診断されたプロ野球投手は624人であった。投手の試合(n = 213,964)と比較すると、4つの傷害曝露群の投手はすべて、1試合あたりの投球イニング数が有意に多く(すべてでP≦0.003)、1試合あたりの打者との対戦数が有意に多かった(すべてでP<0.001)。投球イニングと試合後12週間以上経過した投手のインターナル・インピンジメントとの間に用量反応関係が認められ、7イニング以上投球した投手と1イニング投球した投手とでは、その後インターナル・インピンジメントを発症した投手の割合が1.4倍増加した。
打者数30人以上の投手は、打者数15人未満の投手と比較して、12週間後にインターナル・インピンジメントを発症する可能性が1.8倍増加した。
対照群と比較した場合、各被害暴露群では先発投手の数が有意に多かった(すべてについてP<0.001)。しかし、インターナル・インピンジメントと診断された投手の急性期とベースラインの仕事量を比較すると、投球イニング数、対戦打者数、休養日数に有意差はなかった。
[結論] この分析により、健常対照と比較して、インターナル・インピンジメントと診断されたプロ野球選手では、投手の仕事量と先発投手の割合が有意に多いことが明らかになった。しかし、この傷害は急性的な仕事量の増加とは関連していないようであった。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
いきなりだが、戦車の大砲における「駐退機」というシステムがある。
ここから僕らが学べることは、「何かを発射する際には、必ず相応の反動が発生している」ということ。
そして、投球動作。
プロ野球の投手ともなれば、それが同じ人体から放たれたものかとは、にわかには信じがたいほどの威力、球速の球が放たれる。
そして当然のことだが、人間には「駐退機」はないのである。
その1球、1球が確実に、人体の何かを損なわせている。
その量と、投球障害肩の発生が関連していても、何ら不思議はない。
今回の抄読研究はまさにその部分を明らかにしていた。
どうやら、やはり肩は消耗品、として捉えられるみたいだ。
そこにどんなケア、どんな投球フォームの改良があったとしても、現実の反動は1球、1球、確実に生じている、それが地球上で起こっている現象である限りにおいて。
理学療法士、トレーナーという立場上、「どんな問題も解決しうる神の手腕」に憧れる熱いパッションも尊い。
だが、それと同じだけ、冷徹な頭で現実を眺める「リアリスト」としての側面を持たなければ、その治療や治療哲学は、ときに暴力となりうる。
冷たい頭と、熱い心。
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