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投げ方改革。トルク効率が高い投手の特徴

📖 文献情報 と 抄録和訳

大学およびプロ野球の投手におけるバイオメカニクス的効率の決定因子

📕Crotin, Ryan L., et al. "Determinants of Biomechanical Efficiency in Collegiate and Professional Baseball Pitchers." The American Journal of Sports Medicine (2022): 3635465221119194-3635465221119194. https://doi.org/10.1177/03635465221119194
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✅ 前提知識:バイオメカニカル効率とは?
・≒ 肘関節内反トルク効率であり、投球速度を1m/s増すのに必要な肘関節内反トルク
・同様のトルク効率を用いた研究↓
📕Kaizu et al.  Journal of Physical Therapy Science 32.12 (2020): 816-822. >>> doi.
📕Davis, J. T., et al. The American journal of sports medicine 37.8 (2009): 1484-1491. >>> doi.

[背景・目的] バイオメカニカル効率は、規格化された肘関節内反トルク単位あたりの速球速度として定義され、野球投手のパフォーマンスと健康状態を改善するために適用される比較的新しい指標である。本研究の目的は、プロおよび大学の投手において、バイオメカニクス的効率に影響を与える運動学的パラメータを評価することであった。バイオメカニクス的効率の高い投手と低い投手の間で運動学的な差異を比較した結果、バイオメカニクス的効率の高い投手と低い投手の間で、運動学的な差異を比較した。我々は、プロの投手は大学の投手よりもバイオメカニクス的効率が高いという仮説を立てた。

[方法] 記述的実験室研究。545人の投手(プロ447人,大学98人)の非同定バイオメカニカルデータベースを分析した.多変量線形回帰モデルを用いて、α=0.05で有意な所見を先験的に評価した。さらに、Mann-Whitney U検定(α = .05)を用いて、競技レベル間およびバイオメカニカル効率の高いグループと低いグループ間のバイオメカニクスの差異を確認した。

[結果] 競技レベルおよび11(21のうち)の運動学的変数で、バイオメカニクス的効率の分散の27%が説明され、予測因子のほとんどは投球腕の運動学(stride foot contact, (SFC)における肘の屈曲:β,-1.47;SE,0. 26;SFCでの肩外転:β,-1.78;SE,0.39;SFCでの肩外旋:β,0.60;SE,0.22;最大外旋[MER]角:β,1.82;SE,0.42;MERでの肩水平内転:β,-3.42;SE,0.71)(すべて P≦.05 )が、そのほとんどを占めた.プロの投手は,大学の投手よりもバイオメカニカル効率が高かった(それぞれ 711.0 ± 101.0 対 657.0 ± 99.3;P < 0.001;d = 0.53).低効率群に比べ、高効率群は体重と身長が大きくなるほど、正規化肘関節内反トルクが有意に低くなった(高:0.047 ± 0.004 %wt*ht 対 低:0.063 ± 0.006 %wt*ht, P <.001; d = 3.20).

[結論] SFCの瞬間、高能率群では肩の外旋が大きく、肘の屈曲、肩の外転、骨盤の回転が小さくなっていることがわかった。また、高効率投手群では、MERが大きく、MER時の肩水平内転、ボールリリース時の体幹側傾、フットコンタクトからボールリリースまでの膝関節伸展が小さかった。プロの投手は、大学の投手よりもバイオメカニクス的効率が高かった。バイオメカニカル効率は、本研究で同定された11の運動学的変数にも影響された。効率性の高い投手は,腕の位置,体幹の側方への傾き,送球時のリード膝の伸展域に明確な違いがあった.したがって、投手と野球組織は、球速に対する正規化肘関内反トルクを下げるために、これらの要因に注目する必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

まず、効率とは何か?
日常の仕事に置き換えて考えてみる。
・Aさんはとある仕事Zをするのに3時間かかった。
・Bさんは同じ仕事Zをするのに10分で終わった。
この場合、仕事の効率性はBさんの方が圧倒的に大きいということになる。
効率とは、「ある仕事」に対してかかる時間や労力のことと解釈する。

さて、この研究で置き換えると以下のようである。
・「ある仕事」→「投球速度を1m/s上げること」
・「時間や労力」→「肘関節内反トルク」
すなわち、投球速度を1km/h増すのに必要な肘関節内反トルクと考えられる。

投球動作におけるトルク効率はとても大切だ。
なぜなら、「投球速度が上がるほど、肩関節 & 肘関節への負荷(トルク)が大きくなる」から。

言い換えれば、パフォーマンスレベルが上がるほど、その効率が大切になってくる。
その点で、プロ野球選手が大学野球選手よりトルク効率が高い、ということは至極納得のゆく話で、そうでなければ道半ばで投球障害を引き起こすリスクが高いのだろう。 #自然淘汰的に近い

そのトルク効率を上げる要因のいくつかが明らかになった。
特に目を引いたのは、「フットコンタクトからボールリリースまでの膝関節伸展が小さい」ということ。
SFC後の膝伸展は運動連鎖にとって非常に重要と捉えていたし、明らかにもなっていた。

適度な膝関節伸展角度変化がある、ということか。
確かにSFC後過剰に膝伸展が起これば、骨盤回旋が急激となり、その結果、運動連鎖全体が急激となるのかもしれない。
そうなれば、効率性は落ちる。
何はともあれ、仕事においては「働き方改革」、投球動作においては「投げ方改革」。
効率性が求められる世の中である。

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