卒業後にも生きて働く力、それは自己理解である
皆さんは、自立活動という特別の教科をご存じでしょうか?自立活動とは、特別支援学校や特別支援学級、通級指導教室だけに特別に設けられた指導領域で、特別支援学校学習指導要領に以下のように示されています。
自立活動は特別の教育課程を編成することができます。つまり、個々の課題や実態に応じて一人ひとり目標や指導内容が違うということです。
そこで、特別支援教育学習指導要領解説に記載されている「流れ図」をもとに自立活動の目標や指導内容を6区分27項目から設定していきます。
自立活動は、自立と社会参加を目指すものです。卒業後にも生きて働く力を養うことが重要です。では、具体的にどのような力を養えばよいのでしょうか?
正直なところ、調和的発達の基盤を培うという非常に大きな目標がありますので、1つに絞ることはできません。その中でも、「これだけは!」というものを選ぶとするならば、私は自己理解を選びます。
なぜ、自己理解が卒業後にも生きて働く力となるのでしょうか?
自分の得意なことや、不得意なこと、自分の行動の特徴等、自己理解ができていることが大切です。
対人関係、社会性、コミュニケーションについて自己理解が進んでいると、必要に応じて援助を求めたり、対処方法を身に付けたりすることができます。
障害のある子どもにとって、その障害による特性は跡形もなく消え去ってしまうことはまずありません。ずっと付き合っていかなければならないのです。
だからこそ、自分の得意、不得意をきちんと理解し、言語化できることは大切です。得意なことは仕事や趣味に思う存分生かせばよいですし、不得意なことは必要に応じて援助を求めたり、対処方法を身に付けたりすることで他者の助けを受けながらも社会で調和的に生きていくことができます。
特に、不得意なことに対して援助を求めるのは、非常に大切なスキルです。
このように、自分の状態を把握し、必要な支援を要請する力をセルフアドボカシー・スキルと呼びます。
これは、すぐにできるものではありません。自分の弱さ、弱点を受け入れ、しかもそれを他者へ援助を求めるのですから。プライドが邪魔をして受け入れられない人も多く出てくるでしょう。
かく言う私も、セルフ・アドボカシースキルは大の苦手です💦
私は内向的で、柔軟に物事を対処しきれずに上から押しつけてしまう傾向があり、正直学級担任は苦手なのです。いるだけでその場の雰囲気を明るく変えるような先生は、教室の雰囲気もいつも明るく楽しそうに子供たちが過ごしています。私は、常に「ちゃんとやる」を押し付けて子ども達から反発を受けた苦い経験もしています。そんな時に、セルフ・アドボカシースキルで同僚の先生に様々な援助を受けながら指導や支援ができていればと思うことが何度もあります。
つまり、自己理解が進むことで、得意を生かすことができるのです。特別支援教育における個別指導、少人数指導が私には合っていると気づきました。
その得意を存分に生かすために、現在通級指導教室担当として働いています。不得意な面は、あらかじめ周囲へ伝えています。担任がうまくできないことや、忘れっぽい性格であること、ものをどこかへ置いてしまい失くしやすいこと、冗談が通じないことなど(笑)
自己理解は重要なスキルの1つです。分かっているようで、分かっていない子供は多いです。
小学校6年生の子で、よく教室で癇癪を起こしたり、家庭で言い合いをしながら登校してきてそのまま苛立ちをぶつけている子がいます。
自立活動のSSTで性格や特性に関する内容で授業をしていた際、その子が、
「私って、どんな性格や特性なんでしょうかね?」
と聞いてきたことがあります。私は、順序立てて話ができたり、様々なことに気づいたりする力がある一方で、カッとなってしまう特性があると伝えました。だから、自分の特性を踏まえ、コントロールすることが大切だということも伝えました。
小学校6年生になっても、意外と自分のことってよく分かっていないのだなと痛感した出来事でした。もしかしたら何となくは分かっているけど、うまく言語化できないのかもしれないとも考えました。
ー言葉は、思考の上澄みに過ぎないー
子ども自身が自己理解を進め、様々な視点から思考する活動を積み重ね、書いたり話したりすることで、普段の生活でも言葉として表出できるようになるのではないでしょうか。
自分自身の言葉として言えるようにするために、思考させることが自立活動であり、我々特別支援教育に携わるものの役目であると再認識しました。
卒業後にも生きて働く力、自己理解を大切にして、これからの支援を行っていきたいと思います。皆さんの参考になれば幸いです。
今日の記事は以上になります。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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