「すずめの戸締り」新海誠ディザスター(災害)3部作完結! 感想レビュー
イントロダクション
新海誠監督のアニメ映画「すずめの戸締まり」を見てきたので感想を書き流す。 感想が散らかってますが、感じたことを素直に今の時点でのオモイをこめて備忘録として残します。
※時間が経てば、また変化すると思うので現時点とさせて下さい。
私は新海誠の映画が好きである。
新海誠監督作品は全てアニメである。「言の葉」「秒速5センチメートル」「君の名は。」で一躍時代を背負うポスト宮崎駿監督の座に鎮座した監督です。
彼の特徴は写真ベースの写実的描画とアニメ(絵)の中間、CG合成の隙間を埋めるような美しい表現と男女、ボーイ・ミーツ・ガールで思春期のこじらせとSFチックが定評がある監督さん。能天気おっさんの私はコレが純粋に好き。
サウンドトラックも絵(画)に均等に組み合わせる手法が上手いので半ば強制的に感情に訴えかけ、彼の特徴はこの上手さの味付けが日本人に向けて丁度いいチューニングがされてる。
私は「君のは。」から度肝を抜かれたのは3つある。
色彩豊かな背景画
3DCGを駆使した立体的カットとぐるぐる回るパースアングル撮影
レンズフレア、色収差、ボケなどの撮影技術と光学的効果がたっぷり。
以上が私流の彼の作品が好きな理由です。
現代のアニメでディズニー映画も引けをとらないのは、謎技術テクニック。
3DCGによるパーティクル(粒子)エフェクトが織りなす絵のような、写真のような何ともいえない3DCG映像にアニメなのか、写実フィルムなのかと映画館内で現実にトリップできる感覚が楽しめると私は思ってます。
新海誠監督のダイアトニックコード
国民的監督になって以降の新海誠作品にはある意味お約束のダイアトニックコードがあると思っている。
神様や神社仏閣が出てくる
神秘の力で不思議な事が起こる
主人公とヒロイン(ヒーロー)がイベントを共有する
主人公とヒロイン(ヒーロー)が大きな使命を背負う
主人公が選択・決断を迫られる
謎の力=神様のパワーで奇跡と超常現象が発生する
2人は協力して使命を果たす、または、片方が望む運命を上書きする。
本作をの3部作として捉えると
私はすずめの戸締まりは予告や事前告知、映画館の張り紙に注意喚起の通り東震災を配慮してある作りである事を知っていた。したがって、災害パニック映画として身構えた。
頭によぎったのはディザスター(災害)3部作ではないか?
このように君の名は。以降全て自然災害を連続性を持ち合わせて、彼の心情影響下に東日本大震災をモチーフとしてる事が監督の内情に深く刻まれてると推察してます。
ー<ここからは超薄口ネタバレあり感想>ー
お決まりの少し控え目なボーイ・ミーツ・ガールで始まる。そして、テンポよく新海誠流のダイアトニックコードになる。
今回は冒頭や重要ポイントの転調に「幼少期の主人公」が夢を挟んでくる。マジックの仕掛けはどうやらこの深層心理ですよとわかり易くと観客に刷り込ませてくれた。
その後は、冒険アドベンチャーからのロードムービーに移行して物語がご都合的ではあるけどドタバタ冒険に破綻なく流れていく。
淡白だがわかりやすいミッション。
廃墟を探してそこにある要石を探して災いを防ぐ。
宮崎→四国→神戸→東京→ロードムービー→震災の地東北になる。
現実とのクロスオーバー
舞台が東京に移り、一気にこれは架空ではなく現実の時間軸にあるフィクションである事を丁寧に”気を使いながら”徐々に明らかになってくる。そして、東日本震災の地域、東北へと向かっていく。私たち観客はわかっていても試される事になる。
夢の中の人物の正体は❓
ロードムービーアドベンチャーに半ば強引に放り出されなければならない理由は、一旦、日常から離れ、自分自身と向き合う時間と場所を必要としたのではないでしょうか。道中合流する育ての親である叔母とのやりとりを通して、過去と自分に向き合いトラウマからの脱却が図られるシーンは、親であれば胸を抉ってくる。私は離婚経験者なので切迫した十字架が重く押しつぶされそうな罪悪感すら感じた。
単純な成長物語にならずにエモーショナルにクライマックスを迎え、どこかで会った事のある彼の正体は”同時に扉をくぐる”というタイムパラドックスで解決され、椅子を手渡した人は「夢の中の誰かの正体」は自分自身でしたと、種明かしがされる。
受容の段階
受け入れ難い事実を、過去の自分を受け入れてフィナーレになる。
もう、ここで震災の当時折々の観客自身が体験した情景とクロスオーバーして、多くが涙腺が緩む。
私も涙腺が危うく緩んだ。
物語の中核は男女の恋愛深度ではなく、主人公の好意に留まり、あくまでも主人公自身の内面の深層心理、深く傷ついてる心=トラウマにフォーカスされてるので物語の邪魔にならないようにチューニング調整されてる。天気の子で”頭ぽかーん”なキッズが出てきたので改善を図ったのだろうか。
まとめ
いったん、纏めます。
フィンクの危機管理モデル
この受容に至るプロセスどこかで習った事があるぞ、いや、知ってる。
心理学や医療や看護、人事業務に携われば知ってなければいけない知識だ。
フィンクの危機管理モデルではないかと!自宅に帰って特典解説本のパンフレットを読みつつ思い出した。著者の類似心理モデルの記事もあるので参考までに。
物語にやたら看護師がキーワードになってるのでGoogle先生に聞いてら、直ぐに彼が伝えたい意図も答えたくれた。フィンクの危機モデルの受容の物語だと察した。
解説本までくれるのはちょっと・・・
誠 新海(Makoto Shinkai)彼は何をこの映画で訴えたいか、考察やら謎解とかされたら堪らんという気概も感じる。曲解して変に受け取ってもらいたくないオモイが詰まってる。そのために冊子を来場者に配布される。作品評価以前に誤った受け取り方を防ぐ意味あいが伺える。元ネタから企画段階の資料まで配布してくれてる。
でも、これって映画観覧者を信頼してないのかもしれない。
映画の受け取り方は人それぞれでいいし、
伝わらないかーって予防線を貼ってるようなバカにしてるような気にもなる。
震災というデリケートな題材を綺麗にかつエンタメとしても成立させている。考察の余地などどこにもない。裏表なく素直でシンプルな良質なストーリーでありカタルシスを与えてくれる。震災を経験したものなら素直に受け取れると思っています。
総括レビュー
災いという事情を扉として抽象化して、現実とフィクションである虚像の世界を見事に表現してくれた。忘れたい記憶をフィクションとノンフィクションの中間曖昧を映像として物語に落とし込めてる。
しかと、私には伝わった。
とっくに“声すらもう思い出せない”震災で亡くなった同僚達。この映画を見たことで正確に声まで思い出せないが確かに心の中にいたことを思い返せる。彼らを風化させたのは私自身だ。家庭や仕事のゴタゴタで埋没して厄災の死を感じないように生きてる。私自身は知らず知らずに危機モデルの適応に至ったのだと認識させられた。
ありがとう、新海誠監督。
まごうなき、ディザスター(災害)3部作堂々完結!3つセットで見れば傑作と言って言っても良いでしょう。
私達も震災の傷後を背負って生きてるのでそのままでいいのである。
受け入れ難い心の傷を癒すのは容易ではない。主人公ではないが私も今も苦しんでる。各人の思いのまま受け入れ浄化させてこそ再生し再構築されるのである。
素晴らしいセラピー映画でした。
そして、カタルシスをありがとう。
新海誠監督はセラピストなのかもしれない。
◆終わりに◆
最後までお読み頂きまして
ありがとうございます。
映画は十人十色の感想が
あって良いと思ってます。
受け止め方は人それぞれです、
あくまでも私の個人の感想です。
コメントやスキ頂けたら励みになります。
◆ぼやき◆
個人的には新海誠作品では最高傑作更新かもしれない。。現時点でね。