人生に映えは不要 大学山岳部/高井野乃子さん_18days to 彼女たちの山
【18days to 彼女たちの山】
2023年3月14日に出版した『彼女たちの山 平成の時代、女性はどう山を登ったか』(柏澄子著、山と溪谷社刊)を紹介するシリーズです。
出版前に20日間かけてSNSなどで書籍や拙著に登場する女性たちを紹介したものを、ここに再録します。
「大学山岳部」の項では、アンケートから幾つかエピソードや言葉を紹介したほか、5人にインタビューしています。3人目(順不同)は、平成の終わりに信州大学山岳会で活動した、高井野乃子さんです。
高井さんのことは、数年前の冬に森光さんと富士山に登った時、避難小屋の中で聞きました。森さんは山の業界きっての敏腕で、いまはザ・ノース・フェイス/ゴールドウインの役員ですが、信州大学山岳会のOBです。
下山後さっそく、同じくOBである友人のシオ(塩谷晃司さん)に相談したら、「後輩です」と紹介してくれました。
高井さんのインタビューが実現したのは、彼女が大学を卒業し岡山で働くようになって少し経ってから。麻衣ちゃんと佳苗ちゃんが平成前半(の少し後ろの方)の山岳部員、もうひとりが平成中盤、高井さんは終盤。それぞれの時代に合わせた話が出てくるかな、と思ったのですが、高井さんはとことん平成でした、なんなら昭和(これは、平成の時代の女性たちの登山の本です😅)。
スマホというバックアップはあるけれど、電源は切っている。
ザックはガッシャのまま。
冬靴がベガでした……私だって履いていたよ、ベガ。初代プラブーツはコフラックだけれどね。まだ製造販売していたのかという驚き。ただその選択理由は想像の通りで、納得しました。
このエピソードはモノによることですが、モノだけでなく魂や感性の部分でも、平成も昭和も令和も、ひょっとしたら大正や明治も変わらないんじゃないかなと思うことが、この本の取材を通してありました。
高井さんとは初対面だし、親子ほどの年が離れていますが、普通に「わかりますよね、この感覚」「わかりますよね、このときのこと」という感じで、大学山岳部のシーンを話してくれ、私も手に取るようにわかったので、ある意味、大学山岳部は、ひいては登山というのは普遍的なのかもしれません。
高井さんは5年かけて大学を卒業しますが、その理由が潔いです。
4年の時にはリーダーを務めます。
また、とても聡明で美しい人ですが、送られてくる写真がどれも……傷だらけや虫刺されの顔や、むくんだ顔ばかりで。またまたシオに助けを求めたところ、「映える写真はありませんねー」と送ってくれました。
人生に映えは不要。
『彼女たちの山 平成の時代、女性はどう山を登ったか』(柏澄子著、山と溪谷社刊)
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