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うつ病は脳の病気、これ重要です…「うつ病九段」(先崎学著)

わりと闘病記に興味があります。

そう言うと、なんとなく「人の不幸で楽しむ」的な品のない感じがして微妙ですが。

優れた闘病記というものは、本当に読む価値があると思っています。最近では山本文緒さんの『無人島のふたり』。2020年、まだコロナ禍のしんとした空気の中で読み、その後も手に取るたびに、あの空気感がよみがえります。

樋口直美さんの『私の脳で起こったこと「レビー小体型認知症」の記録』も、とても印象深い。樋口さんの冷静で知的な筆によって、筆者の辛さが胸に迫りつつも、人間の脳の不思議さに引き込まれます。

将棋が分からないのに、将棋が何となく好きでして

そして先崎学さんの『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』(先崎学著・文春文庫)。これ、軽いエッセイ風でもあり、できるだけみんな、読んだ方がいいです!なんなら学校の必読図書とかで。

私、羽海野チカさんの漫画「三月のライオン」ファンなので、その将棋シーンの監修をされ、コミックスの中でエッセイも書いている先崎先生のことは少し知っておりました。

また将棋は全然分からないくせに、コロナ禍中の日曜の朝、NHK教育の「将棋フォーカス」をぼーっと見るのがいやしだったこともあり…つい手にとった「うつ病九段」。私の持っている文庫本は2020年に出ていますが、先崎先生がうつ病に倒れたのは2017年。まさに藤井ブーム到来のその時でした。

すごーくリアルに発症から棋戦復帰直前までのことが書いてあり、読み始めたら止まらない。ご本人からしたら「ホントの辛さは、こんなもんじゃない。面白いとは何事か」とおっしゃるかもしれません。

あ、なぜこの本を学校の必読図書にと思うかと言いますと。

「うつ病」は心の病ではなく、脳の病気だ、ということが、ものすごい説得力で腑に落ちるからです。

先崎先生は、元々ものすごくエネルギー総量の多い人だと思うのです。そうでなければ、プロ棋士になり、長年の戦いに勝ち残って九段に到達…とか到底無理でしょう。

しかし将棋以外の難事で半年以上にわたり過労となり、かつ年齢はちょうどエネルギー量が下がってくるころ。ある日朝起きたら、突然「うつ病」となってしまう。

うつ病が「心」ではなく「脳」の病なのは、ただ気分が落ち込んだり暗くなったりするだけでなく、思考力や記憶力や…いわゆる脳機能がダダ下がるから。プロ九段という、一般人からしたら神的な頭脳を持つ棋士が、将棋が突然弱くなり、小学生でもできるはずの詰将棋がまったく解けなくなり…ということで、これはもう証明されている、と。これは脳の病と考えないと説明がつかない、と。

そう、この本を読めばうつ病は…
・もともと心の弱い人がなるのではない
・心が強くても要はバランスで過労などでなることもある
・心の病でなく脳の病気
・しかし時間を稼ぎ、とにかく自死を回避できれば、必ず治る

ということが、よーく分かる。それもとても読みやすく面白く…。

心の病気ではないと強調するのは、かえって変なのかもですが、でも少なくとも「心が弱いせいでなる」のではないと、納得できます。

この時代、だれもが「うつ病」を知っておいた方がいいですよね

この時代、一生の間に一人もうつ病の人は回りにいませんでした…という人は少ないと思います。そんなによくある病でも、この本にもあるように、まだまだ偏見はなくならい。

知らないことについ構えてしまい、大人気ない反応をしてしまうことは誰にもあるけど、でもできれば、そういう風にならずにいたい。もし自分が罹患するなら、できるだけ適切に専門家に頼りたいし、他者のことなら小さいことでもできることで役に立ちたい。

あ、でも読んでいる間はそんなことは考えません。「いや~この人どうなるの…プロ棋士復帰できるの?」というドキドキのストーリー。で、読み終わってから考えるんです、ふと。そういう本です。

余談雑談


・今、「棋戦」(っていうんですかね?)をテレビなどで見ていると(たまにですが)、AIでどっちが有利か…と言うパラメータが出るんですよ。それが一手でググ…と動いたりする。見ていると、まったく将棋は分からない私もドキドキハラハラします。でも解説者(これもプロの棋士の人)は、やりにくいんじゃないかなーと、すこしニヤニヤしちゃう。

・「3月のライオン」面白いですよね。特にジジイとオヤジたちがいい。リアルなのに漫画の主人公みたいな藤井聡太さんの登場でストーリーが難しくなっていると思いますが、ぜひ今後も読み続けたいです。

・おばあちゃんになって、将棋教室に通うのが憧れです。ただ障害は…脳の中で画像を一時記憶したりがとても苦手、いわゆるワーキングメモリーが足りないんですよ。将来私が通う将棋教室の先生方、申し訳ありません!お手間をかけます。今から謝っておきます。




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