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#015食文化関係の書籍、いろいろ(3)

 前回までで20冊紹介しましたが、まだ書棚にあるので続きます。

 ジュニア新書なので非常に平易な表現で書かれており、全くイタリア史は不案内ながら、楽しく読めた一冊。この一冊でイタリア史が判るかと言われれば難しいけれども、イタリア史の流れの中でのパスタの発展については非常よくわかりました。イタリア人にとってパスタは母親の味であること、とともに、そのイメージは中世のカトリシズムの中での女性を社会進出させずに家に縛り付けておくということや、それを発展的に継承して、ムッソリーニの時代に国を支える良妻賢母として国の宣伝によってより広められた、という作られた伝統であった、という点が特に興味深く、戦前の日本の、武士道や大和魂、大和撫子といった作られた伝統と同じ仕組みであったことが非常に勉強になりました。

 このフードエッセイが以前テレビアニメで放送しており、放送中には視聴していたのですが、原作が気になったので読んでみました。少し分かりにくい英国的笑いがあったりしますが、なかなか面白いフードエッセイ、日本体験記でした。アニメでは一般的にするために家族の珍道中という感じにアレンジされているけれども、原作エッセイではもう少し日本での食事体験について詳しく書かれていたり、他国の料理との比較分析した感想なども含まれていて、なかなか面白かったです。続編があるので、是非読んでみたいと思いました。

 現在では家庭でも手軽に食べることが出来る洋食の代表格であるとんかつを題材に、どのようにして洋食が日本に根付いていったのかを判りやすく書いています。現在では驚きの、明治時代のとんかつの食べ方のマナーや、現在では当たり前のとんかつ定食の誕生についてなどが記されています。ソースの製造が関西を中心に発祥したことが、現在の大阪粉モン文化につながっていることなど、有意義な示唆に富む書籍です。

 今では当たり前のように家庭で食卓に上がるカレーライス。このみんなが知っているカレーライスが現在のスタイルになるまでの紆余曲折を、具材としてのジャガイモ、にんじん、玉ねぎが定着するまで、カレールーがいつ誕生するのか、それが出来るまではどのように作っていたか、など、なかなか興味深い内容が盛りだくさんです。

戦時下での食生活がどのようなものだったのか、婦人雑誌の料理記事からレシピと共に掲載されています。配給食材でどのように創意工夫を凝らしていたか、携帯保存食としてどのようなものを作っていたか、などを再現料理をカラー写真で掲載したりと、非常に興味深い内容になっています。

 桜田門外の変の直後に参勤交代で江戸へ到着した、無名の紀州藩士・酒井伴四郎。彼の江戸での単身赴任生活は、幕末期のきな臭い政情も何のその、普段の食生活、倹約に熱心で、はまぐりが安いと思って購入したら身が小さかった、など当時の一般庶民や熱心に政治活動に参加しない武士の日常生活を彼の日記は活写します。当時の江戸の食、名物を知るにはうってつけの本です。

 当初は食の後進国だったフランスが、イタリア料理などを導入することで洗練されていき、様々な菓子を作り上げて行きます。修道院で生まれ、宮廷の厨房で育み、磨かれてきた、精髄としてのフランスの菓子について、『パスタでたどるイタリア史』の著者による非常に判りやすい、食の面からのフランス史として描かれています。

 綿、茶にならぶ世界商品の砂糖。大航海時代以降、砂糖が植民地、プランテーション、奴隷制度など、相互につながった中で、世界史上でどのような役割を果たしてきたのかを描いた、川北稔の名著です。ジュニア新書とは思えない、ダイナミック且つ判りやすい内容です。

 チョコレートがそもそも原産国ではどのような形で利用されていたのか、どのようにしてヨーロッパにもたらされたのか、から、大英博物館に所蔵されている「キットカット」を開発した会社の資料に基づいて、どのようにイギリスでチョコレートが普及していったのか、キットカットがどのように開発されていったのか、といったマクロとミクロの視点から、チョコレートの歴史を描いた、面白い本です。

 紅茶はいつから飲まれ出したのか?、どのようにして飲んでいたのか?など、イギリスでの紅茶の普及と、それにかかわる喫茶の習慣や茶道具など、幅広い紅茶にまつわる歴史と文化を記した本です。特にお茶を巡る道具について、ウェッジウッドの発展などにも触れており、幅広い知識を博捜した著者の筆致が冴える1冊です。

 大体、ざっと今書棚を見たところでは、こんな感じでしょうか。まだまだ読むに至っていない食関係の本もありますので、その辺はまたの機会にご紹介できればと思います。





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Nobuyasu Shigeoka
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