なぜダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)に取り組むのか
多様性推進、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)などなど…。
多様な人々が生き生きと働ける環境づくりが多くの場で進められています。
私自身が多様性の重要性を痛感したのは、環境が変わったタイミングです。ベンチャーから大企業へ。
組織規模は200倍以上、平均年齢も20歳近く異なります。
自分の存在がマジョリティからマイノリティになった瞬間でした。
この経験は自分にとってはとても素晴らしいものでした。経験、スキル、考え方。そういったものが「異質」なので重宝される。感謝される。自分の気が付いていなかった価値を見出すことができました。
一方で、マイノリティだからこそみえる「マジョリティという見えない存在」を感じることもできました。
それ自体に良いも悪いもありません。
ただ、「暗黙の前提」と、その上にのる「考え方の枠」、そしてそこから生まれる「一定の行動様式」がマジョリティを形作っているということが理解できました。
マジョリティの存在が過度に偏ってくると「同質性の課題」が生まれてきます。
同質性が高まるほど、その組織のルールが固定化していきます。自分の立場を確立するための動き方もパターン化してきて、そこに最適化する能力が高いほど、組織のヒエラルキーの上にいくことになります。
自分の成功体験をもとにルールを強化していくので、固定化はさらに進んでいきます。
悪い言い方をすれば、既得権益と呼ばれてしまうケースもあるでしょう。
こうなってくると変化そのものが自分の存在を脅かしてしまうので、根本的に変化を拒む姿勢を強化し続けてしまいます。
「暗黙の前提」や「考え方の枠」は集団の属性により変わります。
同質性を打ち破るためには、そもそもの属性構成を変えにかからなければなりません。
同質性の影響が最もでるのが意思決定の瞬間です。「同質性の課題」を打破するために、意思決定の瞬間に携わる属性を変える。母数が少なければ変化も大きい。
よって役員から順番に意思決定層の変化を仕掛けなければなりません。
また同質性の中での見え方も固定化され、強いバイアスが掛かるようになるので、異質なものを取り込む能力自体が弱まっていきます。
ルース・ベネディクト「菊と刀」の中でカルチャーはレンズと表現されていて、「そのレンズを通して与えられた世界はあまりにも自然なため、意識することは難しい」とあります。
無意識ゆえに同質性の中で「多様性」はあまりにも自然に視界から外れます。
だからこそ「アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)」に立ち向かっていかなければならないのだと思っています。
人事の役割とは何かを問われれば、経営が掲げるパーパスや経営戦略を実行せしめる組織ケイパビリティを実装することだと捉えています。
「企業文化は戦略に勝る(Culture eats strategy for breakfast)」
これはピーター・ドラッカーの言葉ですが、戦略を実行せしめるカルチャーがなければ始まらない。これは自分自身のこれまでの経験からも強く共感するところです。
カルチャーとは言行一致です。
言っていることと行動していることが一致している部分がカルチャーと認知されていくということです。
よってカルチャーを変化させるためには行動を変化させなければならない。行動を変化させるためには「考え方の枠」と「暗黙の前提」を変えなければならない。
そのキードライバーがDEIなのだと捉えています。
1人ひとりの持ち味や経験を生かし、より多くの知を活かせれば、イノベーションも生まれ、文化進化していきやすくなる。
すなわち変化適応していくことができる。
組織が大きければ大きい企業ほど、組織の生存戦略としてのDEIの意味合いが大きくなっていくのだと思います。