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#ショートショート
ショートショート「真夏の夜の匂いがした」
あの日、彼女から花火大会に誘われた夜、最寄駅から自宅まで歩いているとき、はっきりと真夏の夜の匂いを感じた。
懐かしいなにかの匂いに似ているけれどそれがなにか思い出せなかった。
いま、開けた窓からは同じく真夏の夜の匂いがする。そしてさっきまで抱いていた彼女の首筋からは甘酸っぱい汗の匂いがする。同じシャンプーで洗ったから髪の毛は俺と同じ匂いがする。赤の椿。
「二宮さん、ほんとは彼氏いるんでしょ?
帰ってきた支配者【ショートショート】【#16】
「おい!聞いたか!?」
バタンと大きな音を立てながらドアが開き、勢いよく酒場に男が入ってきた。ジェフリーだ。何があったか知らないが、やたらと慌てていることは間違いないようだ。
「落ち着けよ。何があった?てめえの女房が浮気でもしちまったのか?」
ひねた笑いを浮かべながら俺は聞き返した。まだまだ寒さの続く二月の始め。寒空の下、どこへ行くでもなく、酒場に集まるのが真っ当な男というものだ。
「バカ
つながる関係。つながらない関係。【ショートショート】【#7】
私はあなたのために生きている。
あなたは私がいないと生きていけない。
いわゆる「共依存」。そんな関係性だとずっと信じてきた。世の中の人がなんと言おうと私もあなたも気にしてなどいなかった。そこには確かなつながりがあったし、それをお互いにわかっていたのだから。
最初は何の感情もない決められた出会いから始まった。
でも家同士が決めたことでも、それを大事に思うようになることは良くある。あなたとの関