探究学習のグループワークで目指したい姿。3年間の学習計画がグループ→個人になっている理由
こんにちは!リディラバ教育旅行チームです。
2022年度から高校で導入され始めた総合的な探究の時間。以下のような3年間の学習計画に見覚えはありませんか?
リディラバで行っている探究プログラム「SDGs/社会問題スタディツアー」を取り入れている学校に、日頃の探究学習の取り組み状況や3年間(中高一貫の場合は6年間)の計画を伺うと、徐々にグループから個人に移行する流れを取っている学校が非常に多いと感じます。
今回は、このような学習計画が多くの学校で採用されている意図と、生徒が早い段階でグループワークを経験することによってどのようなスキルが必要なのかについてご紹介します。
探究の目標、実はとても難易度が高い
高等学校学習指導要領では、総合的な探究の時間の目標を以下のように定めています。
つまり最終的には、生徒自身が解決したい課題や明らかにしたい疑問を、実社会や実生活の中から見つけ、課題や疑問の原因を明らかにして解決していくことが求められています。
しかしながら、現場の先生方からは「生徒が解決したいと思える課題を見つけられない」「立てた問いに当事者意識を持てない」などの声をよく聞きます。
実社会や実生活の中から、生徒自身が探究したいと思えるようなテーマを見つけるということは、実は非常に難易度が高いことなのかもしれません。
グループワークの2つの意義
多くの学校で1年次など導入時に重きが置かれることが多い「グループ探究」。これには大きく2つの意義があると考えます。
1.課題を解決するためのスキルを身につける
課題の発見と解決には知識や技能が必要です。
そして探究の見方・考え方を働かせるためのステップについては、学習指導要領でも触れられています。
これらは個人ではできないことではありませんが、全て他人の力を借りることで磨かれていくスキルです。グループワークでは、グループのメンバー同士が互いに教えあったり、それぞれが実践する姿を見たりすることで、自然と探究の見方、考え方を働かせることができるように訓練していきます。
💡課題の設定
より深い課題を設定する際には、幅広い視点が必要です。
例えば「睡眠」というテーマから課題を設定するシーンについて考えてみましょう。
ここから個人で課題を設定していくと、「学校行事と睡眠をどう両立するか」に止まってしまいそうです。しかし、グループで議論することでこんな意見が出てくるかもしれません。
この結果、グループとしてのテーマが「授業中眠くなっても絶対に目が覚める方法とは」となるかもしれませんし、「授業中眠くなってしまう人に共通点はあるのか」になるかもしれません。
それぞれの事情や、聞いたことがある情報、興味のある分野について持ち寄ることで、1人1人の考えの幅が広がり、最初に思いついたキーワードから一歩深めた課題を設定しやすくなります。
💡情報収集
情報収集にはさまざな方法があります。
手軽なのはインターネットや文献調査ですが、どんなキーワードで検索するか、どの本を読むかなど、仮説を立てて調べる必要があります。
仮説を立てる際に、他者と会話をしながら
「こんなワードで調べてみるのもいいかも」「これもありそうじゃない?」と当たることができる情報の幅を広くすることが大切です。
また、分担して情報を調べることで、他者がどのように情報を集めているかの様子を見てお互い学び合うこともできます。
先生から教えられるのではなく、日頃から本を読むのが好きでインプットが豊富な生徒や、インターネットの使い方に長けている生徒など、同じ生徒同士での学び合いは良い刺激になります。
💡整理分析
整理分析は、収集した情報を他者にわかりやすく伝える「まとめ表現」につながるように意識する必要があります。
個人のフィーリングだけでなんとなく情報を整理するのではなく、グループ全員が納得できるような客観的な指標を持って情報を整理できているか、グループ内で確認しながら整理していくことは非常に重要です。
💡まとめ表現
まとめ表現の段階では、グループのメンバー以外にわかりやすく内容を説明したり、時に行動変容を促すように働きかけをする必要があります。
そのため、発表(表現)の内容をブラッシュアップしたり、グループのメンバーで協働して必要な資料を作成したりすることが必須となります。
2.「実社会」「実生活」の範囲を広げて、本当に探究したいテーマと出会える確率をあげる
もう1つのグループワークのメリットは、「実社会」「実生活」の範囲を広げることができる点です。
冒頭でもご紹介した通り、「生徒が解決したいと思える課題を見つけられない」「立てた問いに当事者意識を持てない」などの声は非常によく聞かれます。
それは、生徒が十数年過ごしてきた「実社会」「実生活」つまりは「自分の家」「友人関係」「学校」「習い事など」だけでは、自分が向き合いたいと思える問いに出会えていなかったり、あるいは問いに気づきにくい場合があるからです。
グループワークを通じ、他者との経験の違いや背景にある考え方の違いを自覚する(越境体験する)ことで、課題に気づきやすくなり、結果として探究したいテーマに出会える確率が上がります。
例えば、先程の例で出た「睡眠」をテーマにした場合。
「授業中に眠くなったことはない」というDさんにとっては、「授業中眠くなっても絶対に目が覚める方法とは」は自分が経験したことがなく必要のない情報のため、1人ではなかなか思いつきづらいテーマです。
しかし、4人中3人が授業中眠くなった経験があるということを聞いて他者と経験を比較したり、「授業中眠くなっても絶対に目が覚める方法」を調べて考えていくうちに、「自分が無意識にやっていたライフスタイルが、授業中眠くなって困っている多くの人の役に立つかもしれない!」と気づいてテーマに当事者意識を持つようになるかもしれません。
グループワークを通じて自分の世界が広がり、探究のテーマ設定の幅が広がります。
まとめ.スキルとテーマへの当事者意識の習得を目指そう
多くの学校で総合的な探究の時間がグループ→個人に移行するように設計されているのは、上記2つのポイントをグループワークを通じて体得させることにより、学年が上がった際に個人で課題を深く探究するためのスキルと、テーマへの当事者意識を育むことができるからです。
改めてまとめますが、探究のスタートラインとしてグループワークを実施するときは以下の2つのゴールを意識しながら生徒に関わってみましょう。
1.グループの中で学び合い、探究の見方・考え方を身につけられているか2.生徒がグループワークを通じて視野を広げ、これから本当に探究したいと思えるテーマに出会えそうか
生涯探究ができる生徒を育てよう
学習指導要領に盛り込まれたこともあり注目を浴びている探究学習。
その背景として、
・急速に変わりゆく社会で子供たちが様々な変化に積極的に向き合い,他者と協働して課題を解決していくこと
・様々な情報を見極め,知識の概念的な理解を実現し,情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと
・複雑な状況変化の中で目的を再構築すること
ができる人材育成が求められているためです。
探究は学校教育の中だけで完結するわけではありません。
むしろ学校を卒業した後、生涯を通じて探究していくことこそが必要です。
学校でのグループワークはその大事な一歩目ですが、まだまだ探究の関わり方に自信を持っている先生は少ないと思います。
私たちリディラバも、探究プログラムの実践を通して得た学びを今後もこのnoteを通じて発信していきますので、生涯探究できる生徒を育てるために共に学び合えたら嬉しいです!
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