生徒主導で自由な発想を深ぼる!?探究のグループワーク声かけ2ステップ<意見の選択編>
探究学習では、グループワークを通じて生徒同士で議論する機会も多いと思います。教科とは違う時間だからこそ、自由にたくさんの発想が出て、生徒同士で意見を出し合いながら、より良いアイディアが出る!そんな教室の中が見てみたいですよね?しかし、実際は、生徒から意見が出てこなかったり、多数決で意見をひとつに絞っていたりする様子に悩んでいる先生も多いのではないでしょうか?
今回は、2つの記事にわたって、私たちリディラバが年間8,000人以上の生徒さんとワークショップをする中で心掛けている「誘導しない!生徒主導で意見をまとめる2ステップ」についてご紹介していきたいと思います。
意見をまとめるために必要な2つのステップ
「意見をまとめる」ためには、「意見出し」と「意見の選択」の2つのステップがあります。
私たちの経験上、前者の「意見出し」よりも、後者の「意見の選択」で苦労する生徒が多い印象を持っています。時間内にうまく意見をまとめられず仕方なくじゃんけんで決めたり、多数決をとって決めているシーンを先生方もよく見るのではないでしょうか。
本来、グループの中で「意見の選択」を行う目的は選択した意見が何かではなく、生徒が意見を選択するための適切な思考プロセスを学ぶことにあると考えています。その意味では、形式的に意見を選択することに満足してしまってはむしろ逆効果になってしまいます。
一方で、限られた教員数で全てのグループの議論に関与し、意見の選択のプロセスを修正していくことは現実的と言わざるを得ません。そこで、今回の<意見の選択編>の記事では、意見をまとめるために最低限生徒に意識させたいノウハウとその声かけの方法をご紹介します。
<意見出し編>の記事はこちら
意見の選択①役割分担を決める
グループワークの中で必要な役割は、タイムキーパーと司会です。
タイムキーパー
意見の選択は難易度が高いので、時間を意識しないと何も決まらないまま時間が過ぎてしまいます。タイムキーパーを決めて、時間を意識しながら進めましょう。
慣れないうちは、グループワークが始まるとき、まずは時間内でどのように進めるかを全員で決めます。そこで決めた時間の◯分前と決めた時間にグループにアナウンスをするよう、タイムキーパーにお願いしましょう。
生徒の経験値に応じて、下記に続く②③④にのように細かいステップで、先生が全体進行の時間を区切るようにしてあげると、進行しやすくなります。
司会
「司会」と聞くと、議論の方向性をまとめたり、グループの様子を見ながら疑問点をすくいあげたりなど、一見難しそうですよね?
生徒が経験を積む中で、そのようなことができるようになると望ましいですが、最低限の司会の役割は、みんなの意見が聞けるように「次、〇〇さんお願いします。」と場を回していくこと、次のステップに入る時に「時間になったので、次に行こう」と議論を進めること、の2つです。
先生は、時間内に終わらせるために、司会主導で意見を選択してしまうことがないように、グループの様子を見ておきます。
役割分担のポイントは、役割をこなすことが目的にならないようにすることです。生徒の経験値と議題の難易度に応じて、先生がタイムキーパーを担ったり、時間配分を細分化して伝えることで各役割をわかりやすくしたりしましょう。
意見の選択②似ている意見はグルーピング
普段からグルーピングを導入している先生方は多いのではないでしょうか?
まずは、なぜグルーピングをするのかに立ち返ってみたいと思います。
意見を選択する段階でのポイントは、「選択肢の数」と「選択の基準」です。
例えば、旅行先を決める時、AかBで2択になっていると議論がしやすいと思います。さらに、「せっかくの長期休暇だから遠くへ行こう!」という基準があると決めやすいですよね?
グルーピングの目的は、この「選択肢の数」を適正にすることです。
まず、グルーピングを始める下準備として、「議論の目的からズレている意見」を省きます。たくさん意見が出すぎて手の付け方がわからなくなってしまうグループは、この方法でまず選択肢の数を減らしていきます。
「議論の目的からズレている意見」を省くためには、議論の目的が重要です。議論の目的を確認しながら、下記のように意見を省くための軸を示してみてください。
選択肢の数をうまく減らすことができたら、意見の根拠を共有しながら、似ている意見のグルーピングをしていきましょう!
意見の選択③選択する基準と照らし合わせる
意見をまとめる時の最難関が、「選択の基準決め」です。
②でグルーピングされた意見を見渡して共通点を見つけたり相違点を探したりしながら、グループのメンバーで基準を探ります。
その次に、対立する意見の根拠をそれぞれの提案者が説明して、グループ内で目線をすり合わせていきます。
例えば、次のようなグルーピングをしたグループがあったとします。
簡単に言い換えると、全員が「再生可能エネルギーがもっと普及していること」をあるべき姿に掲げていますが、微妙に意見が違うところがあります。
まず「達成の基準」に沿って意見を見てみます。
AさんとBさんの意見は、再生可能エネルギーが「消費者にとって」使いやすいレベルで普及することを目標としています。
一方で、Cさんは、100%を目標としています。
Dさんは、今よりも普及している状況を目指すとしていますが、具体的な目標値はわかりません。
この場合、達成度の基準をどこに設定するのか、グループで話し合い決めていく必要があります。
また、Aさん・Bさん・Cさんは、再生可能エネルギーを生成していくためのシステムについて言及していますが、Dさんは生成された後の広報的な視点に着目しています。
この場合、着眼点の基準をどこに設定するのか、グループで話し合います。
基準の話し合いがうまくできないと、
「再生可能エネルギーが100%になるように、気候に左右されずに安価な仕組みがあり、再生可能エネルギーの認知が広がっている姿」
と全ての意見を繋げてしまうことが多々あります。
一見皆が納得できる意見に仕上がったように見えますが、たくさんの要素が詰まった抽象的な意見は、全てのことを解決しようと思った結果、1つとして解決しないという状況に陥りがちで、実は問題解決型の議論には適していないことが多いのです。
何にもっとも着目するのか、何を達成度の基準とするのか、この2つの基準を元に具体的な議論ができたら、1つのの意見にまとまります!
意見の選択④定型文の形を指定する
最後に、もう一踏ん張りしましょう!
意見をまとめたけれど、議論しているうちにズレていってしまうことがあると思います。そんな時に有効なのは、最終的にまとめる文を定型化して、意見をまとめた後に立ち返るポイントをまとめておくことです。
例えば、<2030年の再生可能エネルギーのあるべき姿>が議題の場合、
「2030年に、再生可能エネルギーが〜〜な姿を目指す」というまとめるための定型文をつくっておきましょう。
そうすることで、最後に意見を清書しながら、自然と不足している点に気づくことができます。
忘れてはいけない!正解なき議論の場づくり
ここまで4点、意見を選択するためのポイントをご紹介しました。
「意見出し」の時間では、正解を意識しない場づくりが比較的しやすいと思います。一方で、「意見の選択」での時間では、どうしても選ばれた意見が”正解”という雰囲気になってしまうのではないでしょうか?
リディラバでは、「意見に辿り着く過程には、多くの意見があってこそより納得感ある意見を作ることができる」というメッセージを繰り返し伝えるように心がけています。
冒頭でも触れたように、「生徒が意見を選択するための適切な思考プロセスを学ぶこと」を意識しながら、声かけをしていきましょう。
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