短編小説 「夢見鳥」
いつも見かける蝶がいる。紅色の水玉模様の羽をひらひらと動かし僕の前を通りすぎる。
あの蝶はどこへ行くのだろうか、狭い電車の中を漂い何度も僕の前を通りすぎる。
電車が駅に着いてドアが開くと蝶も降りてしまい、蝶を目で追ってたが見失ってしまった。ドアが閉まり電車が動いた。
しばらくあの蝶はどこへ行くのかと考えていたら、もうすでに僕が降りる駅に着いていた。「ドアが閉まります。」アナウンスでハッとして慌てて降りる。蝶の事を考えていて降りる事を忘れていた。
今日は彼女とデート「お待たせ待った?」彼女はすでに来ていた。「待ってないよ今来たとこ」久しぶりの彼女とデートを蝶のおかげで危うく遅刻するところだった。
僕達は少し歩き小洒落たレストランに入った。店員に席を案内されて席に着いたらテーブルの角にあの蝶がいた。
なんでこんな所に蝶がいるんだと疑問に思ったが店員も彼女も蝶に気づいてない。蝶がいたけど追い払いはしなかった。なんかおしゃれに感じて絵になっていたから。
「この蝶、綺麗だよね。」僕が彼女に言うと「蝶?どこにいるの?」彼女には見えてないのか疑問に思った。角を見ると蝶はいなくなっていた。
あたりを見回しても蝶はいなかった。「ねぇ、大丈夫?」彼女が心配そうに言ってきた。「ごめん。何かと見間違えたみたい。」僕は誤魔化した。
一時間半ほど彼女と食事を楽しみ、会計を済まし外に出たら、あの蝶が目の前を横切った。「見て、ほら蝶々だ」彼女に言った。
「えっ、どこにいるの?」彼女がそう言う。僕が指をさした方向に蝶はいなかった。あたりを見回しても蝶はいなかった。
「ねぇ、なんか変だよさっきも蝶がいるって言って。」彼女は言った。
「ごめん。最近電車に乗ると蝶を見るんだ。その蝶が店のテーブルと今ここにいたから。」僕が彼女言うと彼女は「疲れてるんじゃないの休んだ方がいいよ。」僕に心配そうに言った。
「ごめん。今日は帰るよ。」僕が言う。「気お付けてね。ゆっくり休んで。」彼女の見送られ僕は駅に向かう。
せっかくのデートが彼女に気を遣われて終わってしまった。電車を待っている間またあの蝶の事を考えていた。あの蝶は厄病神なのかそう思っていたら電車がきた。
電車に乗り込みイスに座るとあの蝶が目の前を横切った。蝶の事は見ないように下を向いた嫌な事があったから。しばらくして電車が駅に着いた。
すると蝶は下を向いた僕の前を通りすぎて外に向かった。思わず目で追ってしまった。
何を思ったのか僕は蝶を追って電車を降りてしまった。降りるはずの駅じゃないのに。
降りて駅名を見ると夢見鳥と書いてある。僕は夢でも見てるのかとそう思って頬を叩いた。けど痛みはある夢じゃないのかと思った。
とりあえず駅から出てみようと階段を降りて出口に向かった。人は誰もいない、蝶もいない。階段を降りたら改札があったからそっちに向かった。改札は機能してないみたいだ。スイカをタッチしても反応がない。
改札を出たら蝶が飛んでいた。蝶がいる方向に歩いた蝶はゆっくり進んで行く。改札からどんどん離れて行くどこに向かっているのだろう。
そう思いながら五分くらい歩いたら光が見えてきたそして景色が見えてきたその景色はどこか懐かしい見覚えのある場所だ、どこか思い出せない。
蝶が木の下のベンチに止まっていた見覚えのあるベンチ思い出せない。ベンチに座り周りを見ても思い出せない。ここはどこか思い出そうとするが全く思い出せない。
すると蝶がまたどこかへ飛んで行った。蝶は少し先にある看板に止まった。その看板には「お帰りやっと帰ってきたね」と書いてあった。
思い出した僕、死んでたんだ。電車に轢かれて気づいたら、どこかわからない場所にいて蝶の後を追いかけたらいつもの日常に戻っていたから。
きっと蝶はこの世に未練ができないようにいつもの日常を体験させてくれたんだろう。僕がいつまでも未練を捨てずにいるから迎えに来たんだろう。
蝶が飛んでどこかへ行く僕後を追いかけた。蝶が向かった先にはたくさんの蝶が止まっていた。黒い蝶に黄色蝶、それに青い蝶もいる。
綺麗だなずっとこのままでもいいやと思ったら。突然蝶が一斉に空高く飛び出した。空に蝶が舞ってもの凄く綺麗だ色んな色の蝶がいて空がとても綺麗に色づいた。
終わり。