PJ Novelとは「小説」を 軸に活動する “クリエイターズ コミュニティーです。 このマガジンにはメンバーの自由投稿作品を集めています。
2020年からIYO夢みらい館で開催している「てのひら小説講座」受講生作品のマガジンです。
愛媛の作家によるてのひらサイズの短い小説。 500文字以下の小物に印刷したら映えるサイズ。 それが「てのひら小説」です。 1000文字超えてても2000文字以上でも「いや、これが私のてのひらサイズなんじゃい」と言い張る気持ちがあればそれでOK。 広がれてのひら小説の輪。
たてヨコ愛媛クリエイターグループ「PJ Novel」メンバーのチャレンジ作品や素材を集めたマガジンです。
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今時、川で洗濯、なんてないでしょ。家の洗濯機が壊れたって、この町にはコインランドリーはないのか。そう思いながら川で洗濯をしていると、はるか上流からピンクのプラスチックの洗面器が流れてきました。 ピンクの洗面器が近づいてくると、おや?なんとそこには一匹の子猫が乗っかっているではありませんか。可哀想に、心ない人間により、子猫が川に流されていたのでした。 洗面器と子猫を拾い上げ、その子猫を飼うことにしました。ピンクの洗面器にちなんで、名前は桃太郎と名付けました。桃太郎は周囲の
北海道の冬は厳しい。除雪された雪をよけながら、陽平は久しぶりになじみの居酒屋を訪れていた。 ‘あれ、陽ちゃん?陽ちゃんだよね?久しぶり!」 店の大将が、笑顔で迎えてくれた。あの頃と同じように。 「えー、本日をもって僕たちのバンドは解散します。みんな、今までありがとう。」 学生バンドの僕たちは、学年最終年を迎えて岐路に立たされていた。ある者は就職、ある者は家業を継ぎ、ある者は幸せな永久就職と、それぞれの道を歩む。そして、自分はといえば、一人プロを目指して上京する。 「
小学生の頃、担任の先生に「素直さがない」と言われたことがある。きっと子供らしくない子供だったのだろう。大人になっても物事を斜めにみる性格は変わってないように思える。 私は夏目漱石の坊ちゃん。明治時代以来、久しぶりに松山に来て驚いた。坊ちゃん列車に坊っちゃん団子、坊ちゃん球場に坊ちゃん劇場、文学賞は坊ちゃん文学賞。やたらと私の名前が氾濫している。プロ野球の球団が身売りして、愛媛に球団ができたら、松山坊ちゃんなんとか、とでも名づけそうだ。道後温泉には私の衣装を真似たコスプレイ
「あれ、なぜだ?」 牛乳パックを再利用して作った金魚鉢の中の金魚が、いつのまにか水に浮いている。 瑛二は小学生六年生ながら、新進気鋭の発明家である。牛乳パックを再利用して家事に活用。お皿やスプーンの代用品として、特許を取得した。昨今のSDGsブームの中、牛乳パックメーカーと提携し、マスコミにも取り上げられ、小学生にして巨万の富を築くこととなった。 さらなる活用をということで、瑛二は金魚鉢にすることを考案。実際に牛乳パック製の金魚鉢を試作し、その耐用試験の途中の出来事だ
生まれて初めてのスーツ。親から依頼を受けた背広の仕立て屋さんが、自分のアパートにやってきた。採寸の途中で、男の一物をズボンの右側に置くか、左側に置くかによって、スーツの寸法が変わることを知った。そして、青地に縦縞の、若者にしては渋いスーツが出来上がった。 そのスーツを着ての大学の入学式だ。電車に乗る。運賃は90円。病院前の駅停でおりる。大学はすぐそこ。多くの新入生で歩道は埋め尽くされている。大学の入り口付近では、看板を掲げたり、ユニフォーム姿の在校生たちが待ち構えている。
「来月からうちの町のタクシー、午後10時までだってさ」 「え〜、じゃあゆっくり飲んでもいられねえな」 「わざわざ隣の町のタクシー呼ぶやつもいるくらいだからなあ」 田舎のタクシーは台数も少ない。夜間だと1〜2台くらい。電車はというと午後10時台で終電である。そもそも田舎では、電車に乗って飲みに行くという感覚がない。 遠い昔、私は深夜、彼女にふられ、タクシーで帰路についたことがある。手持ちが少なかったため、運転手さんにそのことを告げ、途中で降ろしてもらうよう頼んだ。気を
私は8歳のバーニーズとニューファンドランドのミックス犬である。体重も40kgほどある。ご主人様のペットとして、一人気ままに暮らしていたが、3年前、新入りがやってきた。生後1ヶ月の保護猫である。とってもちっちゃくて、ご主人様の手のひらに乗るほどの大きさだった。なので、私はてっきり私のおやつなのかと、思いっきりおすわりして待っていたくらいだ。 ところがこの新入り、なかなかに図々しい。もうすっかり大人になったが、私の20分の1くらいの大きさにもかかわらず、平気で私の部屋に入って
私の母は宝くじマニアだ。若い頃は1回に5万円ほど使っていたらしい。定期的に5万円購入するのが、最も効率の良い買い方だと聞いたことがあるが、母も10万円の当たりくじを当てたことはあるらしい。 今は年老いて、往年の勢いはないが、それでも宝くじのシーズンになると、「宝くじを買いたい」と言い出す。そして宝くじが当たったら、あの人にいくら、この人にいくらあげる、などと算段を始める。 宝くじを当てる人より車に当たる人の方が多いんだからね。宝くじなんかに当たったら、お母さん死んじゃう
バーボンはロックに限る。やや太めのグラスに氷を入れ、コトコトと手で揺らす。しばらくなじませた後、しばし口の中に含み、そのまま息を吸い込む。気化したアルコール分が肺の中に入り、続いてバーボン特有の苦味を感じながら、アルコールが体の中に染み渡る。キラキラと輝くグラスを眺めながら、だんだんと自分が壊れていくのが、心地良かった。 あれから40年、今ではロックはおろか、水で十分だ。
四国愛媛から一路湯布院を目指す。1時間のフェリー乗船の後、一般道路から高速道路に乗る。しかし、あいにくの雪模様の中、高速道路は通行止めに。仕方なく高速道路を降り、車のナビを頼りに別ルートを行くこととなった。 道は山道、山越えである。当然の如く、雪は深い。しかし、私の車は四輪駆動でスタッドレスタイヤをはき、南国愛媛にもかかわらず、寒冷地仕様の車だ。かつてタイヤチェーンを装着するのに2時間かけた上に断念した自分は、車を買うなら四駆と固く心に誓っていた。このような天候の1日のた
「佐藤正一君、6票」 クラス委員長選挙の結果、私は選ばれなかった。ほっとしたと同時に自分の得票数が気になる。誰も気づいていないようだ。 授業で、自分の名前の由来を親に尋ねてくるように言われた時の、親の答えに愕然とした。正月一月一日に生まれたから、正一にしたんだよ。そんな理由で正一に、、、、。キラキラネームの友人が、自分の名前の由来を滔々と語る中で、自分は進んで語る気にはなれなかった。 「正一君」 不意に彼女が声をかけてきた。 「名前と同じ投票数だったね」 いたずらっぽい目
ミスターパウェルは悩んでいた。クリスマスシーズンが近づいていたからだ。 日本では、クリスマスは楽しい行事だと思われているが、欧米ではそれだけではない。妻や夫、恋人に限らず、家族、親族、友人にまでプレゼントを贈らなければならない。デパートやスーパー、通販業者にとって、クリスマスは一大商戦であり、家のクリスマスツリーの下には、届けられたプレゼントが、すずなりに置かれる。 しかし、アメリカの片田舎の安月給の英語教師の彼にとっては、大変な負担である。まるで自分の体が、ツバメやカ
私は、羽田空港から島根出雲空港に向かっていた。取引先の工場に、あいさつがてら営業活動をするためだ。私の旅の楽しみといえば、旅先の温泉宿に泊まること。レンタカーを借り、営業活動を終えた後、その日の宿泊先を決めるため、車を止めた。 しかし、止めた場所が悪かった。小学校のすぐ近くである。小学生の女の子が、何人かで連れ立って下校中だった。停車中の大きなダンプカーの横を通り過ぎ、その先に車を止めて、あらかじめ買っておいたガイドブックを眺めていると、コンコンと運転席の窓ガラスを叩く音
芋煮会のことを、わが故郷、愛媛では芋炊きという。私が芋煮会という言葉を知ったのは、東京で会社勤めをしていた頃である。私は人事部に配属され、会社の福利厚生全般を担当していた。その会社には、社員旅行の代わりに各部署単位で親睦会を開いており、一定の割合で会社から補助が出る。その手続きを私が取り仕切っていた。 そして、補助のために申請される、様々な活動計画書の中に、芋煮会という言葉があった。芋煮会?芋炊きのことだろうか? 「そうだよ」 山形県出身の先輩女性が、こちらに顔を向けずに
二本の線香花火が火花を散らしている。 あっと思った瞬間、ジュッと音をたてて、線香花火の玉が落ちた。 「あ〜あ、まだ途中なのに。」 「俺のを少しやるよ。」 彼が自分の線香花火を突き出し、くっつける。一つの玉が二つになり、また二本の線香花火になった。
ゾンビレンズ これはリアルなのか、バーチャルなのか。 時は20xx年、地球上ではゾンビウイルスが猛威をふるっていた。ワクチンはまもなく開発されたが、ウイルスの変異も早く、なかなか収束のめどが立たない。そんな中、日本のベンチャー企業、オプティカルテックジャパンが、画期的な商品を開発した。 ゾンビレンズ、コンタクトレンズにバーチャルリアリティを用いた特殊な加工を施し、そのレンズを通すとゾンビウイルス患者は顔が青白く光るのである。同社はすぐに特許を取得。大々的に売り出した