〈ランチ〉
冷たい灰色の空の下を
青衣の女たちの葬列が
すすむ
アヴィニョンからミラノまで
香ばしいピッツァの香りが
空腹な男たちの
鼻腔をくすぐる
世界の穀倉
ウクライナの小麦に
地中海から届けられた
輝くオリーブオイルを
振りかけ
明日の太陽の釜で焼くのだ
世界の台所のシェフの
注目する目が
みるみる鋭くなる
見よ
ランチタイムが
迫っているのに
硬直し干からびた
全体主義的な理念が
20世紀的な東の信仰の
迷妄が
合理的な仮面を被り
子供たちの
罪なき胃袋を
委縮させる
君たちの同胞を
犯すのはやめて
殺すのはせめて
自分だけにして
冷たい灰色の空の下を
青衣の女たちの葬列が
すすむ
おお
北京から香港まで
東京からロンドンまで
あるいは
ニューヨークからパリまで
世界を悼む
白薔薇の香りが漂い
滔々と流れる
ドナウの
緑と黒土の此岸から
われらと同根の
母系の神の
声が聴こえる
おい
いい加減にしろ
そろそろ
世界の
ランチタイムだ