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Gutsヒロのスイーツ・ストーリー:本の中の先生は、最高のパティシエだった

Gutsヒロです。今回は、「#ハマった沼を語らせて」のテーマでnoteを書きたいと思います。私のストーリーで、美味しく幸せな共有をできてもらえれば幸いです。


「沼」って聞くと最近の言葉なのかなぁ、自分にはあまり馴染みない言葉なので意味を調べてみると・・・
「沼る」とは、何かに夢中になって抜け出せなくなる状態を指す言葉です。
【意味】

  • 熱中する、夢中になる、ハマる、のめり込む、没頭する

  • 趣味の分野において、その世界の奥深さに引き込まれていく

  • 恋愛において、相手の魅力に夢中になり、簡単に心が離れなくなる

そんな言葉だそうです。

そうだなぁ、そう言われると、私にも夢中になった人がいます。その方は、

パティシエの巨匠・弓田亨さんです。

代官山にイルプルーシュルラセーヌというお菓子屋さんと、お菓子教室をやっていたお菓子業界では超有名人です。

弓田亨さんは、日本に洋菓子を広めるために沢山の本を出版したり、日本では手に入らない材料の提供、そしてお菓子教室をやって全国に沢山のお弟子さんを育てたすごい人なのです。

私は、弓田亨さんに出会ったことはありませんが、弓田亨さんの本のレシピのおかげで成長することができました。

弓田亨さんの本はすごいのです。例えばスポンジ生地(ジェノワーズ)の作り方では、ハンドミキサーの〇〇の強さで〇〇分泡立てて・・・と、とにかく内容が濃いのです。

お菓子作りを上達したい人にとってこの上ない最高のレシピ本だったと思います。

私が、弓田亨さんの本に出会ったのは、当時フランス料理店でお菓子作りを任された時のことです。オーナーシェフから様々なお菓子の要望をされる中で、ある日、「ロールケーキ」を頼まれたのです。
しかし、未熟な私は、ロールケーキの生地の作り方がわかりませんでした。当時は、ネットや動画などで勉強する時代ではなく、主に本で学ぶしかありませんでした。それでも作れなければ手探りで作るしかありません。

オーナーシェフに聞いても「そのぐらい自分で調べてやれ!」と言われてしまい、仕事の休憩時間はお昼を食べずに試作して、仕事が終わって明け方まで試作した日もありました。でも、納得のいくロールケーキは作れませんでした。

そして、地元でロールケーキが有名な洋菓子店があったので、そこのお店と自分の作るロールケーキの違いを探るのに、作っては買って、作っては買って、小麦粉や卵を10gずつ減らしたり足したりして比べながらどうやったら近づけるか試作し続けました。

そんな日々を2ヶ月ぐらい続けていたところ、いつものようにロールケーキを買おうと注文すると、裏から店主らしき人が出てきて、私に言いました。

「なんで毎週何度もうちの店でロールケーキを買うんですか?」

私は、聞かれて戸惑いましたが、正直に言いました。
「フランス料理店で働いていて、ロールケーキを出したいけども作れなくて、そちらのお店のロールケーキを参考にして練習して作っているのですが、でも全くできなくて今でも練習の参考に買わせていただいているのです。」

真剣に聞いてくれた店主は、私に「ちょっと待っていなさい」と言い、裏口に行ってしまいました。

そして、戻ってきた店主の両手には大量のお菓子の本が。

「この本を全部あなたに貸します。返すのはいつでもいいですよ。頑張ってください。」


それらの本は、1000円そこらでは買えない、最高の参考書の数々でした。

この時、貸していただいた本の数冊が「弓田亨さん」の本だったのです!


私は、お金が尽きていたので全て手書きでコピーするように写し書きしました。本当にありがたい気持ちで勉強させてもらいました。
そして、間も無くしてロールケーキが作れるようになれました。

それから、お金を貯めて少しずつ本を集めていくのですが、特に弓田亨さんの本は参考になる本が沢山あったので、最終的には全部揃えることができました。

ジェノワーズを作るとか、ロールケーキの生地を作るとかも確かに技術的なものや分量的なものもありますが、それらを使ったケーキや、その他のお菓子の弓田亨さんのレシピのお菓子はどれもとても美味しいのです。

修行時代の私は素人といってもいいぐらいでしたが、不思議と弓田亨さんのレシピでお菓子を作るとプロ級の美味しいお菓子が作れるのです。

ただし、普通のレシピ本に比べて、弓田亨さんの本はかなり細かい指示が求められています。でも、その美味しさを追求した弓田亨さんのお菓子の世界は私だけではなく多くの人を魅了したと思います。

そんな、本の中の先生として、弓田亨さんのお菓子は数えきれないほど作りました。
そして、本の内容が濃いおかげでどのお菓子も指示通りに作れて、とても美味しくて、すっかり私は弓田亨さんのファンになりました。

そんな日々であることが芽生えました。


弓田亨さんのお店のお菓子を食べてみたい!


少ない給料でも貯金して、なんとか行き帰りのお金と、弓田亨さんのお店で使うお金だけ貯めることができて、憧れの代官山のイルプルーシュルラセーヌに行く日を迎えます!

代官山って高級住宅街として知られています。上品な街並みと緑豊かな環境が特徴で、おしゃれな街というイメージ。
当時のことよく覚えているのですが、田舎の街から来た、安い服を着ていた私は、代官山の街の世界では、とても浮いていたような存在でした。きっと、駅周りを散歩しているワンちゃんの方が高い服着ていたと思います(笑)

でも、恥ずかしいなんて言ってられません。もうすぐ近くまで弓田亨さんのお店があるのですから!

そして、辿り着いた「イルプルーシュルラセーヌ」!!


本にあった写真の建物やお店、教室など全てがリアルに見れた時は喜びでいっぱいでした。

お店に入って特に嬉しかったのが、弓田亨さんのレシピ本にあるお菓子がお店にいっぱい並んでいたことです!


弓田亨さんのお店で直々に作られたレシピ本にあったお菓子は、ファンにとって全部食べてみたい思いにかられるのではないでしょうか。でも、それ以外のお菓子もいっぱいあって、私はどのお菓子を買おうかとても悩みました。(予算をもっと持ってくればよかったー!ってすごく思いました笑)

でも、次いつ来れるかわからないこともあったので、店員さんに聞いたのです。
「特におすすめで食べておくべきお菓子ありますか?」と。そうすると、快く店員さんは答えてくれました。それは、

「ブランマンジェ」


フランス語で「白い食べ物」と言われるお菓子、ブランマンジェ。弓田亨さんのブランマンジェといえば有名で、数々の料理業界の人達が参考にして作られている究極のお菓子です。

私は、イートインで早速、ブランマンジェを注文しました。すると店員さんはある説明をします。それは、

「提供するのにお時間が15分から30分かかります。大丈夫でしょうか?」

私は、時間は大丈夫でしたが、なんで1つのお菓子を提供するのにそんなに時間がかかるのか理由を聞きました。すると店員さんは、

「弓田のこだわりで口溶けが良くなる温度にするまで時間がかかるのです。」


ゼラチンを使うお菓子でただ冷やして固めるのではなく、口に入れた瞬間、口の中の温度で溶ける温度に調整して味わいを最大限に引き出す、そのこだわりに私は驚きました!

そして、ようやく待ちかねたブランマンジェが目の前に!

一口目を食べた時は、この世にこんなに美味しいものがあるのか!と、感動で少し涙が出ました。

私にとっての本の中の先生は、

現実の世界では想像以上の最高のパティシエでした!


私の代官山までの旅は、私の人生にとって最高の時間になりました。お土産に買った弓田亨さんの焼き菓子は母と一緒に食べて、その「本物の味」を一緒に楽しんで幸せになれました。

その後も、代官山のお店に何度か行くことができました。
また、その後の仕事では、時々レシピが書けないときには、弓田亨さんのレシピを今でも参考にさせて頂いてなんとか乗り越えることができております。

弓田亨さんのお菓子の素晴らしさを知った私。パティシエになる夢と共に、弓田亨さんのお菓子のような、お菓子から生まれる幸せに満ちたお菓子作りをしたい。お菓子を通してたくさんの人を喜ばせたい。その気持ちを持ってこんにちまでたどり着くことができました。弓田亨さんは、私にとってファンであり、先生であり、憧れの人です。

あとがき


私が弓田亨さんの本に出会ってなかったら、「パティシエになる」という情熱が燃えることはなかったといっても過言ではありません。ここまで成長することができたのは紛れもなく弓田亨さんのおかげです。本当にありがとうございました!

話は変わり、私が調理師専門学校に入学して、あるパティシエの先生の授業で「あなたが食べたこれまでのお菓子で最高のお菓子は?」という、ちょっとお楽しみの発表会がありました。皆、地元のお店の有名なお菓子を言いました。中にはコンビニの〇〇が好きっていう人もいました(笑)
私の順番が来て、私は「イルプルーシュルラセーヌのブランマンジェです!」って言いました。そうしたらパティシエの先生が、「君、食べたことあるの!?」と言われたので「はい!」と答えました。先生は、「弓田亨さんのブランマンジェの味を今の時点で知っているのはお菓子作りが本当に好きなんだね!」と言って頂けて嬉しい反面少し照れました。
みんなの発表が終わって、先生が最後に言いました、

「この中で俺が食べたいのは〜。。。ブランマンジェだな!」



今ではTVや動画で有名パティシエが出演することが多い時代になりました。流行りや新しいものもありますが、お菓子好きな方はぜひ「弓田亨さん」に注目してみてはいかがでしょうか。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

Gutsヒロ

私の宝物。たまたま古本で買った弓田亨さんの本に本人のサインが偶然にありました。
このペンのインクの向こうに弓田亨さんが触れていたんだなぁと思うと嬉しくて涙が出ます。


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最後まで読んで頂きましてありがとうございました!とても嬉しいです♪ これから更新して頑張って参りたいと思いますので今後とも宜しくお願い致します!

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